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安全圏では何も起きない俺が、最悪の状況でだけ最強になる  作者: 能力者管理委員会


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第1章14 【 俺は選ばない 】

 部屋時は、前よりも静かだった。

 

 壁が厚くなったのか。

 それとも――

 俺の感覚が、変わったのか。


 「当面、単独行動は禁止です」


 モニター越しに、対策局の人が言う。


 「訓練も中止。

  もちろん、外部との接触も制限します」


 「……隔離ってことですか」


 「”仮”ですが」


 仮と言ったって、どうせ隔離されているのと変わらない。


 「あなたの能力は、

  発動していない状態でも影響を及ぼし始めている」


 画面の向こう側で、資料が切り替わる。


 線で埋め尽くされた、

 訓練室の解析画像。


 「これ以上、他の能力者(アノマリー)と接触すれば、

  予測不能な連鎖が起きる可能性があります」


 つまり


 俺は、危険人物ってわけだ。


 「……わかりました」


 抵抗はしなかった。

 むしろ、抵抗する理由が無かった。


 通信が切れ、モニターが消える。


 部屋に、また静寂が戻る。


 その直後


 「――納得してない顔してるねぇ」


 聞き覚えのある声。


 振り向くと、

 ドアの横に七瀬が立っていた。


 「どうやって――」


 「細かいことはいいでしょ」


 彼女は、軽く手を振る。


 でも、表情は笑っていなかった。


 「……君、自分で思ってるよりヤバいよ」


 「知ってる」


 即答すると、七瀬は少し驚いた顔をした。


 「へぇ」


 「世界が、勝手に反応するんだ」


 俺は、床を見る。


 「選んだだけで、線が濃くなる」


 七瀬は、黙って聞いていた。


 「だから俺は――」


 言葉を選ぶ。


 「もう、選ばない」


 七瀬の眉が、ピクリと動く。


 「どういう意味?」


 「助けるか、助けないか。

  行くか、行かないか」


 全部、


 「決めなければ、条件は揃わない」


 沈黙。


 「それってさ、逃げてるだけじゃん」


 「違う」


 俺は、首を横に振る。


 「でも、」


 「違う!!」


 俺は、叫んだ。


 七瀬は、しばらく何も言わなかった。


 やがて、小さく息を吐く。


 「それ、一番キツイやつだよ」


 「わかってる」


 「選ばないって、

  何もしないのと一緒だよ?」


 「それでも」


 俺は、彼女を見る。


 「壊すより、マシだ」


 七瀬は、苦笑した。


 「ほんと、条件型って最悪」


 七瀬は、俺に背を向ける。


 「でもさ」


 真剣な声で話す。


 「世界は、君が選ばなくても、

  君に選択肢を押し付けてくるよ」


 胸が、少し痛んだ。


 それは、

 俺が一番わかっていたことだ。


 「そのとき、どうするの?」


 七瀬の問いに、

 すぐ答えは出なかった。


 しばらくして、俺は言う。


 「……そのときは」


 言葉が、静かに落ちる。


 「壊れる前に、

  誰かに止めてもらうことを信じるよ」


 「他人任せなんだ」


 「信頼だよ」


 少しだけ笑う。


 七瀬もつられて、笑う。


 「俺が選ばない代わりに、

  誰かが選んでくれるって」


 七瀬は、肩をすくめた。


 「重たい信頼だね」


 でも、


 去り際に、彼女は言った。


 「私は、見てるから」


 短く、それだけ。


 ドアが閉まる。


 一人になった空間で、

 俺は、目を閉じた。


 選ばない。

 決めない。


 動かない。


 それが、俺なりの抵抗だ。


 だが、


 胸の奥底で、

 断絶者(スキル・ブレイカー)が、

 静かに、息を整えているのを感じる。


 まるで、


 次に来る”選択”を、待っているみたいに。

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