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安全圏では何も起きない俺が、最悪の状況でだけ最強になる  作者: 能力者管理委員会


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第1章12 【 にゅーふぇいす 】

 目覚めの悪い、朝が来た。


 昨日の出来事を思い出す。

 なんだろう、死にたくなってきた。


 俺は、少しの間、子供の姿に戻っていたようだ。

 もちろんその間の記憶はある。


 あの倉庫での記憶も、ちゃんと残っている。


 まあ、とりあえず部屋を出よう。

 この部屋、トイレが無いから不便なんだよな。


 部屋を出る。


 「おはよう、お寝坊君」


 廊下に出ると、すでに数人いた。


 年齢も、性別もバラバラ。

 ただ、共通しているのは――


 彼らが、能力者(アノマリー)だということだ。


 「君が、新人君だね。

  聞いてた話だと、10歳くらいの男の子だって話だったんだけど……」


 一番前にいた少女が、俺の容姿をまじまじと見る。


 短めの髪に、やけに眠そうな目。

 歳は……俺と同じくらいだろうか。


 「えっと……まあ、はい」


 「そっか。じゃ、今日から私たちの仲間だね」


 そう言って、体をくっつけてくる。

 距離感が、妙に近い。


 「私は七瀬杏花(ななせきょうか)

  みんなから『きょうちゃん』って呼ばれてるよー」


 彼女がふわっと笑う。

 

 「因みに能力は――」


 彼女は、指を立てる。

 その指を壁に突き立て――


 その瞬間。


 七瀬の指が、壁をすり抜けた。


 「……っ!?」


 「へへっ。驚いてるねぇ。

  そう、私の能力は位相跳躍(フェイズシフト)って言うんだ」


 位相跳躍フェイズシフト


 つまり、触れた対象の”位相”をずらす能力。


 「どんなものでもいけるよ。壁でも、床でも。

  もちろん、人だってね。

  でも、長くは持たないんだよね」


 そう言いながら、壁から指を抜く。


 すごい。

 そう思ったのに――


 胸の奥がざわついた。


 違う。


 能力そのものじゃない。


 七瀬の能力が発動した”瞬間”、

 俺の視界に、微かな線が走った。


 一瞬。

 ほんの一瞬だ。


 「……今、何か」


 「ん?どしたの?」


 七瀬が首を傾げる。


 「いや……なんでもない」


 誤魔化す。


 でも、確信があった。


 ――俺は今、

 能力の”境界”を見た。


 「そういえば、君の名前まだ聞いてないね」


 「そうだった。俺の名前は――」


 名前を言おうとして、一瞬だけ。

 一瞬だけ、自分の名前が出てこなかった。


 「俺は――新宮俊(にいみやしゅん)

  よろしくな」


 「うん、よろしく」

 

――――――


 食堂では、他の能力者たちが静かに朝食をとっていた。


 炎を操る能力者。

 音を操る能力者。

 電気を操る能力者。


 どれも危険で、どれも厄介。


 なのに、


 俺の中では、

 全部が”消せる対象”として認識されている。


 嫌な感覚だ。


 「ねぇ」


 七瀬が、小声で聞いてくる。


 「あなた、能力使わないの?」


 「……使えない」


 「?」


 七瀬が首を傾げる。


 「俺のは条件型なんだ」


 「条件型……ねぇ。ふぅーん」


 七瀬は、俺の目を見ながらそう言った。


 「じゃあさ、なんで“目”青いの?」

 

 その一言で、周りの目が俺に集中する。


 「それってさ、今、条件が揃ってるってことだよね。

  それに――」


 彼女が、俺の横に座る。


 「君、もう”ズレてる”よ」


 「……ズレてる?」


 「安全な場所なのに、

  危険なものを見る目をしてる」


 コップを持った手が、少し止まった。


 そんな目、してたか?


 「これ、忠告だから」


 七瀬は、笑いながら言った。


 「ここは安全だけど、

  安全すぎるから。

  だから、条件型は壊れる」


 その言葉が、胸に残る。


 「だからさ、その目、どうにかした方がいいよ」


 七瀬は、食器を片付け、食堂から出ていく。


 俺も食器を片付け、食堂を後にする。


――――――


 部屋に戻ったあと、

 入口の手前にある、姿見鏡を見る。


 やはり、目は青かった。


 「なんでだぁ?」


 能力は発動していないはず。

 だとしたら――


 「なんて、考えても無駄か」


 俺は、考えることを放棄し、ベッドに寝転ぶ。


 そのまま俺は、壁に手を伸ばした。


 もちろん、すり抜けない。


 壊れもしない。


 でも、


 触れた瞬間、

 世界に、うっすらと線が浮かんだ。


 「……見えてる」


 発動していない。

 条件も、揃っていない。


 なのに。


 断絶者(スキル・ブレイカー)は、

 眠ったまま、目を開け始めている。


 それが何を意味するのか。


 この時の俺は、

 まだ、理解していなかった。


 

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