表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
安全圏では何も起きない俺が、最悪の状況でだけ最強になる  作者: 能力者管理委員会


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/16

第1章11 【 保護という名の檻 】

 静かな車内で、エンジン音だけが、一定のリズムを続けている。

 

 未だに能力が解けない少年は、後部座席から窓の外を眺めていた。


 「……あの、どこに向かっているんですか?」


 前の席に座る女性――

 さっきまで現場にいた女性が、バックミラー越しに少年を見る。


 「仮施設です」


 「施設……ですか?

  僕、何かしたんですか?」


 少年は、困惑した顔で女性を見る。

 

 が、無視された。


 車は、人気のないエリアに入っていく。

 街灯も少なく、景色が急に無機質になる。


 「……逃げようとか、考えてないよな」


 運転席の男が、強い口調で言う。


 「……考えて、ないです」


 少年は、少し怯えた表情をして言った。


 数分後。

 車は、コンクリートの建物の前で止まった。


 外見は、ただの古い倉庫。

 でも、近づくと分かる。


 ――ここは、普通の場所じゃない。


 「能力者(アノマリー)対策局・第七管理区」


 彼女が、淡々と言った。


 「あなたは、今日からここで管理される」


 「……管理」


 その言葉が、胸に落ちる。


 「もう、お家に帰れないってことですか?」


 彼女は、少しだけ黙った。


 「……ええ。帰れないと思った方がいいでしょう」


――――――


 建物の中は、やけに清潔だった。

 白い廊下。

 無機質な証明。


 「能力者は、三種類に分類される」


 歩きながら、彼女が説明する。


 「制御型。暴走型。条件型。

  あなたは、その中でも――最も扱いづらいタイプ”条件型”なの」


 「……条件型」


 「そう」


 彼女は、振り返らない。


 「条件が揃わない限り、能力は発動しない。

  でも、揃った瞬間――制御不能となる」


 廊下の先に、部屋が見えた。


 「そして、発動中の記憶は欠落する」


 ドアが、開く。


 簡素な部屋だった。

 ベッドと、机と、椅子。


 「ここが、あなたの部屋よ」


 「……本当にお家に帰れないんですね」


 彼女は、初めてこちらを見た。

 とても悲しそうな表情をしていた。


 「……ええ、そうよ」


 正直な答えだった。


 「ただ、あなたの能力が”安全”だと判断されたら、帰れるかもしれない」


 「安全……ですか」


 「ええ、そうよ。安全が認められれば、あなたはお家に帰れるの。

  ただ一つ、約束してほしいことがあるの」


 彼女は、人差し指を立てる。


 「約束……?」


 「そう、約束。

  自ら、条件を作らないでほしいの」


 「条件……を作らない」


 「そう、自分から危険な状況を作らないでほしい。

  それだけ守ってほしいの」


 「……もし、わざと危険なことをしたら?」


 「それこそ、お家に帰れなくなるわ」


 つまり。


 もう、自由はない。


 「……分かった」


 少年は、頷いた。

 

 反抗する素振りも見せず、素直に承諾した。


 彼女が、部屋を出るとき。


 「それともう一つ」


 少年に声をかけた。


 「――――――」


 少年の顔は、さっきよりも柔らかい表情になった。


 静かにドアが閉まる。


 一人になった部屋で、少年は天井を見上げた。


 安全って認められたら、帰れる。

 危険なことをしなければ。


 でも。


 胸の奥に、

 小さな違和感が、まだ残っている。


 あの線。

 割れる世界。

 

 忘れろ、と言われた記憶。


 「……本当に、忘れていいのかな」


 誰にでもなく、呟いた。


 この時、誰もが知る由も無かった。


 条件は、作らなくても――


 ”向こうから、やってくる”ということを

 


 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ