表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
安全圏では何も起きない俺が、最悪の状況でだけ最強になる  作者: 能力者管理委員会


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/16

第1章10 【 のっと りめんばー 】

 倉庫に入った瞬間、

 胸の奥が、ひどく嫌な音を立てた。


 「……やはり…ですか」


 私は、足を止める。


 空間が、変だ。


 壊れていない。

 焦げてもいない。

 血の匂いもしない。


 なのに――

 ここは一度、世界が”断たれた”場所だ。


 何度も能力者(アノマリー)の現場を見てきたが、こんな感覚は初めてだ。


 「人質は無事。犯人は……消失」


 後ろで、部下が報告する。


 「消失ですか?」


 「はい。存在そのものが、記録上から――」


 「もう、いいわ」


 私は、少年の方を見た。


 床に座り込み、頭を押さえている。


 「……大丈夫ですか?」


 声をかけると、少年はゆっくりと顔を上げた。


 「……えっと」


 目が、合う。

 

 その瞬間、背筋が凍る。


 目が、まるでサファイアのように蒼く輝いていた。

 この目は”発動中”の目だ。


 でも、”そんなのはあり得ない”。


 彼はもう、能力を使っていないはずだ。


 「……一ノ瀬……さん?俺、何してました?」


 声が震えている。


 「気がついたら……頭の中に、変な映像が……」


 私は、息を止めた。


 「映像……ですか?」


 「……なんか」


 彼は、言葉を探す。


 「線?みたいなのが……世界にいっぱい走ってて」


 ――あり得ない。


 断絶者(スキル・ブレイカー)は、発動中の記憶は残らないはずだ。

 それが、彼の”条件”で、代償のはず……


 この間に、独自で進化でもしたというのか?


 「……それ以上、思い出さなくてもいい」


 私は、少し言葉を強くした。


 「え?」


 「今のことは、忘れなさい」


 少年は、きょとんとする。


 「でも……」


 「いいから」


 私の声は、思ったより固かった。


 「それは、覚えなくていいもの……”覚えてはいけないもの”だから」


 少年は黙り込む。


 数秒後、小さく笑った。


 「……ですよね」


 その笑い方が、何故かひどく胸に刺さった。


 「どうせ()なんて、役に立ってないですよね」


 違う。

 

 そんなことを言わせたいんじゃない。

 私は、思わず拳を握る。


 「あなたは――」


 言いかけて、止めた。


 今、事実をそのまま伝えるのは危険だ。


 彼は……

 自分が”何”なのかを知らない。

 自分に”何”が起きたのかも知らない。


 「今日は、保護対象として動いてもらう」


 私は、立ち上がる。


 「詳しい話は、またあとで」


 「……はい」


 少年は素直に頷いた。


 でも、


 歩き出す直前、

 彼は小さく呟いた。


 「……あの人」


 「犯人ですか?」


 「……はい。なんか、ちょっとだけ」


 少年は、困った顔で言った。


 「……可哀想だなって、思った気がしたんです」


 その言葉に、私は言葉を失った。


 断絶者は、感情を伴わない。


 ただ、条件を満たして、壊す。


 それだけなのに、


 彼は覚えている。


 壊したはずの”向こう側”を。


 「……なんて、気がしただけなんですけどね」

 

 小さく笑う少年。


 私は、少年に――


 ()()()()()()()()()()()()彼に、

 笑いかけることができなかった。


 この少年は――

 想定より、ずっと危険だ。


 そして同時に、


 誰よりも、壊れやすい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ