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天性失格者
僕は急いで、お父さんのところに行った。
「お父さん!」
「なんだ?」
「僕ね!天性芽生えたんだ!」
「おぉぉ!なんていう能力だ?」
「えっとね…はんにゃ?」
「はんにゃ?」
「そう書いてあるの」
「そうか…」
「これってさ!どんな天性なの?」
「…」
お父さんは少し気まずそうに、下を向いた。
「ねぇねぇ!」
「シライ。それはな…」
「うん…」
「使い道がない天性だと思う…」
「え…でもそんな天性の話は聞いたことないよ」
「天性を持つ人にもな、使い道がないものもあるんだ」
「うん…」
「そういう人を、『天性失格者』って一般的にはいうんだ」
「失格者…僕が…」
僕は膝から崩れ落ちそうだった。
僕の中の、人生の砂時計がすべて落ちたような感じがした。
「だからと言ってな差別は受けないから大丈夫だ」
「…」
僕はずっと絶望に浸っていた。
深海に落ちていくように、どんどんと下に…
僕はお父さんに聞かれたことなんて、もう覚えていない。
僕は話が終わり次第、自分の部屋へ戻った。
(僕が…天性の失格者)
僕が夢見ていたことは、簡単に崩れ落ちてしまった。