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世界よ、なぜ僕に失格者の烙印を押したのですか?  作者: 燐華織
第二章

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事前準備⑤ ―ロマンが集結した新防具―

村長は、ナイフの入っていた箱をしゃがみ見つめていた。

――時々、僕の耳に入らない程度の声でボソボソと何かを呟いてた。

そんな村長を見つめながら、出血した血の痕を、軽く服で拭った。

――村長は武具を一切身に着けてなく、寝てくる前と変わらない服だった。


「武器も防具もないですけど、どうしたんですか?」


そう問いかけると、背中がビクっと動き、まるで怯えている子犬のような感じの反応だった。

そして震えながら、途切れ途切れ言った。


「武具は…上にまとめて…ある」


「そうなんですか、じゃああとは僕の準備だけですね」

(さっさと準備しないと)


途切れ途切れの村長とは裏腹に颯爽と返事をし、ナイフ片手に梯子の方へと歩いて行った。

――何故か、何かを達成したときの高揚感の足取りに似ており、脳が指令を出す前に動いていた。


スタッスタッスタッ


僕が梯子のところまで着き、後ろを振り返ると、村長はさっきと同じその場に呆然とナイフの入っていた箱を見つめていた。


「何してるんですか?ナイフの入ってた箱を見つめて…さっさと娘さんのところ行きますよ」

(村長、そんなに受け入れられないのか?このナイフ)


僕が少しイラついた口調で言うと、村長は急に我に返ったように、立ち上がり、僕の方へと急ぎ足で近づいてきた。


「すまないな、救いに行こうか」


さっきの姿が嘘みたいに、僕の目を真っすぐ見つめ、言った。

――その見つめる目に迷いも狂いもなく、自信に満ちて溢れていた。


「はい、行きましょう…救いに」


僕がそういうと、村長はニコッっとした後、軽快に片手で梯子を登った。


「玄関で待っているから、さっさと登ってきておくれよ」


梯子の上からそう告げると、玄関の方へ行ってしまった。


(僕も登らないとな)


右手の手掌しゅしょうに深くナイフを握り、それと同時に梯子を掴んだ。


「ごめんね、友よ――今仕舞うことができないだ、我慢してくれ」


そうナイフに囁いたあと、梯子を一段また一段…慎重に掴み登った。



(はぁ…やっぱり梯子は嫌だ…疲れる、、、)


梯子を登り切り、その場に座り込みそんなことを思っていた。

僕はまたナイフに囁いた。


「あとでちゃんと手入れするから許してくれ」


そして、僕は立ちあがり、服を軽く手で払い、大きく体を伸ばした。


(今から戦闘だもんな、、、体よ、動いてくれよぉ)


内心そんなことを祈りながら、ナイフ片手に村長が待っていると言った玄関まで急いで向かった。



玄関に待ち受けていたのは、杖を持った100人中100人が『魔法使い』と答えるほどのTHE魔法使いという格好をした村長が仁王立ちしていた。

そして僕の方を見て、言った。


「シライ君、バックはもう運んであるよ」


「あ、ありがとうございます」

(めっちゃ魔法使いじゃん)


僕は村長の足元に置いてあるバックを持ち上げ、ずっしりとした感触と共に背負った。

そんな僕のバックを背負う姿を村長は見つめていた。

――村長の目からは涙を浮かべていた。


「どうして涙、浮かべてるんですか?」


そんなことを聞くと、急いで腕で目を拭い言った。


「涙なんて…浮かべてないさ」


「そうですか、、、」


適当に相槌を打ち、村長は玄関のドアを勢いよく開けた。

――そう、この玄関の扉は戦闘へ扉だ。



空は薄暗く、雲は星を隠していた。村長は玄関を出た後、鍵を閉め、僕に言った。


「防具を取りに行こうか、防具があるのはあそこだ」


指していたのは家?のような見た目では鍛冶屋とは思えない建物だった。

――村長の家から大体400mと言ったところにあった。

そして続いて村長は言った。


「あの鍛冶屋少し入り口が特殊でな、だから私についてきてくれ」


「わ、わかりました」

(なんだよ、入り口が特殊って)


そう言うと同時に、村長は少し急ぎ足で向かった。



さっき言っていた建物の前に来ると、遠くで見た時よりも随分としっかりとした建物だった。

――だが普通の家とは違うのは、窓や扉が一切ないことだった。


(ここが鍛冶屋か、、、お父さんと行った鍛冶屋よりだいぶちゃんとしてるな)


そう立ち止まり建物を見上げていると村長が小声で言った。


「シライ君、入り口はこっちだ」


そう言った後、手で『こっちに来い』とジェスチャーしてきた。


(そういえば、入り口が特殊だって言ってたな)


村長はこの建物の裏へと行ってしまった。

僕も急ぎ足で後を追った。



建物の裏を見ると、村長が外壁を手で触りながら、耳をつけていた。


「何してるんですか、そんなに外壁をべたべた触って、傍から見たら変質者ですよ」


そう言っても、村長は声が聞こえいないかのように外壁を触り続けていた。


「だから何して…」


村長のフル無視に少し腹を立て、少し大きい声でまた言おうとすると、、、


「、、、ここだ」


そう冒険家が歴史的貴重な宝物を見つけたかのような声で言った。

――だがそこには何の変哲もない外壁だった。


「え…?」

(村長、、、狂っちゃった)


そんな情けない声が咄嗟に出ると、村長は言った。


「シライ君、入り口が特殊って言っただろう?外壁の中にドア開閉用のボタンがあるんだ」


「え…なんでそんな無駄な仕組みを?」

(この技術を家に仕込んでくれって頼んだ鋳物師いもじ、信用できないんだけど、だって馬鹿じゃん)


「私にもわからない、だが多分ロマンかなんかだろう、あいつはそんなロマンに関しては目がない奴なんだ」


「はぁ、、、」

(マジか、ロマンでこんな入るのに弊害のあるボタンを設置するのか…やっぱ馬鹿じゃん)


そんなドン引きをしている僕を横目に村長はそのボタンを押した。


ドンッ


そんな大きな音を立てながら、ボタンは強く押し込まれた。

そうすると、、、


バンッ


そんな何かが作動するような音と共に、外壁が少しづつ横にズレ始め、そこからは下につながる階段があった。

僕は村長の顔を見つめ言った。


「こんなに技術かける必要ありますかね?たった一枚のドアだけに」


僕がそんなことを真顔で言うと、村長は肩を震わせながら僕の顔を見ないように下を向いて笑いながら言った。


「この鋳物師いもじはそんな馬鹿げた奴なんだ、あんまり深く問わないでくれ、笑ってしまう」


そして村長は少し深呼吸をした後、「下りようか」と一言だけ言ってスタスタと階段を下りて行った。

僕もそれに続いて下りて行った。



階段を下りた先には、想像以上にロマンの塊だった。

――近未来的というのだろうか、銀色の鉄だと思われる壁が四方八方囲われており、天井には電気、まるでロマンを形にしたような空間で作られた武具を置くためのテーブルには沢山の剣、弓、槍そして重そうな防具、そしてカウンターのような仕切り、仕切りの先には鉄を打つための石の台と椅子に座る屈強なおっちゃん、大きな鉱物を入れる棚が四つ、そして壁に埋め込まれたかまどのようなモノ、その横には沢山の薪が三角形に詰めあがっていた。


(すげぇ、これはロマンの極みだ)


そんなことを思いながら眺めていると、カウンターに村長は行き言った。


「なあ、おっちゃん」


そう呼びかけると、おっちゃんは飛んでくる勢いでカウンターの方に近づいてきた。


「おう、村長さんよ――あぁ頼んでた防具か」


そういって、おっちゃん石の台の方へ一度行き、布に包まれた大きいものを大事に担ぎ、カウンターまで持ってきた。

おっちゃんはゆっくりとカウンターに置き言った。


「サイズは一応合うと思う、まあ多少大きく作られているから大丈夫だと思うが、、、」


そういうと、おっちゃんは布を勢いよく取った。

そこには、電気の光を反射するほど綺麗な汚れのない輝く防具たちが並べてあった。


「シライ君、着てみたらどうだ?」


「はい!」


僕はそんな活気に溢れた返事をして、一つ一つ身につけて行った。



「おぉ!」


僕は鏡を見てそんな喉から、心からはそんな言葉にもなっていない声が出た。

――心臓を中心とし、白い○は心臓の左右にあり、ちゃんと中には黒い点のようなものある、その〇に右なら右半身の線たちが、左なら左半身の線たちが集まる。

その格好は僕のデザインそのものだった。


「どうだ?小さき英雄さん」


そう鋳物師いもじのおっちゃんは僕に言ってきた。

僕は即答した。


「すっごく良いです!自分好みのデザインで」


「喜んでもらえてるならよかったよ、頑張って作った甲斐かいがあるよ」


そんなことをおっちゃんは言ったあと、続けて言った。


「そういえば、勝手にやってしまったが胸のパーツの首のところにカルセドニーが埋め込まれているんだ、小さいがな」


僕は胸のパーツをよく見ると、窪みに小さいきれいな水色に近い宝石が埋め込まれていた。


「どうだ?気に入らないか?」


そう不安そうなおっちゃんの声に僕はまたも即答した。


「ううん!すっごく気に入りました」


「それはよかったよ、あとはその〇の中の黒いまあ厳密には紫だが、クンツァイトって宝石なんだ」


「そうなんですか、すっごく近くで見ると確かに紫ですけど、これはこれでだって自分しか知らない美しさですもん!なんか自分だけが知っている特別感というか…なんというか!」


「そうか、君は俺が思ってた以上に面白い、ロマンのある少年かもしれないな」


「そうですか、まあどうでしょうかね」


そんな話が終わると、村長は少し覚悟を決めた様子を醸し出しながら、財布を取り出し言った。


「なあ、いくらだ?一応沢山持ってきたが」


そうちょっと低い声で覚悟が決まっているような雰囲気があったが、鋳物師いもじのおっちゃんは即答した。


「お代はなしでいいですよ」


「そんな冗談は今はいい、っでいくらだ?」


「冗談じゃなくて、本当にお代なしでいいですよ」


「はぁ、、、でもな…」


そう続けて言おうとすると、おっちゃんは人差し指を立て、『チッチッ』と舌打ちみたいな音を出し言った。


「俺は身内から稼ぐためにこんな仕事してんじゃあないよ、創造が楽しいからこの仕事をしているだけだ。創造っつうのは頭で考えたことを、現実にすることなんだ。

それがいろんな人々の知識や道具、生きる希望になってくれることが、途轍とてつもなく嬉しいんだ。それがどんなくず野郎だとしてもな。だから俺は今回のお代はなしでいいって言ってんだ。

こんな小さい創造で未来ある小さい子供の命を長引かせることが出来るならよ」


そんなことを言うおっちゃんの目には迷いも戸惑いもない。

本当の本当の本心からの言葉だということがすぐに汲み取れた。


「だが…」


「いいっつってんだろ、てかこんなことで時間を食ってんじゃねぇよ、さっさと行きな」


そういうと、村長は顔を縦に少し振り言った。


「、、、そうか、ならその思いとこの防具、受け取ろう」


「村長さんなら長い付き合いだ、わかってくれるよな、あとその子のことよろしくな、帰ってきたら俺のところに顔見せに来てくれよ」


「あぁ、任せてくれ――絶対に死なせはしないよ」


バチンッ


そんな強い音と共に、二人は力強く握手をしていた。

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