第4話
まったく考えが浮かばない。
授業中休み時間問わず一日中考えたけど、いまだに新作の案はまとまらない。
気分転換しようと思って通学路にあるカフェに立ち寄った。慣れないことをすることでインスピレーションを湧き出させる算段だ。
もくろみは上手くいかなかった。カフェオレの甘苦さに舌をひたしても駄目だった。
次の物語なんて、そう簡単に浮かぶわけないんだ。あの小説だって何か月もかけて書き上げた。数日で次の案が浮かべば苦労しない。
空も暗くなってきた。店内の人口密度が上がってきたし、そろそろ帰ろう。
会計をすませてカフェを後にした。帰宅ラッシュの流れに乗って自宅を目指す。
「ねえ、これからお兄さんたちとお茶しなーい?」
くねっとした声が聞こえてきた。
振り向いた先には二人の男性。ズボンのポケットに手を突っ込んでかっこつけている。
そういえば田中さんのグループにも手を突っ込んでる男子いたなぁ。
そんなことを考えて立ち止まる。
大きな背中の向こう側にきれいな人影があった。
大和撫子。そんな言葉がふと浮かんだ。本来の意味とは違うけどそうとしか言いようがない。さらっとした艶のある黒髪が品の良さをさらに際立てている。
そんなきれいな女の子にたかるチャラついた男性。これはもうアレだ。ナンパに違いない。
「困ります」
「困りますだって。チョーかわいい」
「ねえ、連絡先教えてよ。毎日コールしちゃう」
気持ち悪い。
一方的に自らの欲望をたたきつけてくる連中も、人柄の良さにつけこんで好き勝手するやつらもいらっとくる。
「おい」
思った以上に声が張り上がった。