第31話
色妃先輩と解散して自宅に戻った。
手洗いうがいをすませてチェアに腰を下ろした。パソコンを起動してユーザーホームを開き、サイコホラーの案を簡単に書きまとめた。
入浴と食事をすませた後はネット小説の執筆に取りかかった。
色妃先輩とのデートもどきを糧にして次の話を書き、ベッドの上で眠りについた。
月曜日の朝をむかえて登校する。
教室のドアを開けるとクラスメイトが寄ってきた。
俺と色妃先輩が歩くところを見た生徒がいたらしい。色妃先輩との関係性について前のめりに問われた。
俺と色妃先輩の間にあったのはSNSのつながりのみ。
田中さんも絡むから正直には言えない。適当に曲げた真実を告げて事なきを得た。
授業が始まって人が散り、休み時間になってまた人が集まる。
教室内だけじゃない。廊下を介して別教室からも同学年が集まった。
さながら檻の中にいる動物を観察するような視線だ。休み時間のたびに見られて居心地が悪いったらなかった。
貴重な休み時間を弁解に捧げて迎えた放課後。選択科目の教室に足を運ぼうとしたら小坂さんに止められた。
友人いわく、期末試験の一か月前には選択授業がなくなるそうだ。
代わりに、クリエイター科の生徒にはコミケに作品を出す課題が与えられる。
期末試験も待っている。気持ち早めに試験勉強を始めないと、課題作成に時間を取られて悲惨な点数を取ることになる。
小坂さんと御子柴さんを交えて図書室に足を運んだ。
奥のチェアに座ってテーブルの上に勉強道具を広げる。
「浅原って色妃先輩とデートしたの?」
「御子柴さん、君もか」
「ブルータスはいいからどうなのよ?」
「デートなんかしてないよ。みんな誤解してるんだ、俺と色妃先輩の間には何もない」
「何もないってことはないでしょ」
「どうしてそう思うんだ?」
「色妃先輩って誰を相手にしてもそっけないって有名なのよ。そんな人が教室に来て声をかけるってことがもう異常なの」
「ひどい言われようだな」
確かに、色妃先輩が教室を訪れた際にはクラスメイトも驚いていた。それだけ稀なことだったのは俺でも想像がつく。
「それで、本当は何があったの?」
「だから何もないって。そんなに気になるなら色妃先輩に直接聞けばいいだろ」
「それができたらとっくにやってるわよ」
「おい、どけよお前ら」
乱暴な声色を耳にして振り向く。
知らない男子三人が俺たちを見下ろしていた。




