表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きだった女子に小説を盗まれたけど、もっと可愛い女の子と仲良くなれたからまあよしとする  作者: 磯野カジキマグロ
2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/71

第21話


 午後の授業を経て放課後をむかえた。


 一般科の生徒は部活にしゃれこむ時間だけど、クリエイター科の俺たちは違う。


 他の生徒にならって教室に足を運んだ。細長いテーブルとすれ違ってチェアに腰を下ろす。


 クリエイター科の選択科目は大学の講義に近い。


 講義と違うのは、授業に出ても単位を取得できない点だ。


 必要と思うなら科目を取る必要はない。それで才能が伸びるならよし、伸び悩めば自己責任で一般科へ移るしかない。


 文字通り自分のための授業だ。自然と気が引きしまる。


「ねえ」


 乱暴な呼びかけを受けて振り向く。


 茶髪の少女が立っていた。やや不機嫌そうに、まゆで逆ハの字を描いている。


 俺は内心で身構える。


「あんたが浅原?」

「そうだけど、君は?」

「二組の御子柴実子みこしばみこよ。あんた、天ノ宮さんとどういう関係なの?」

「友だちかな? 少し交流があったんだ」

「ここにいるってことは小説家でいいのよね?」


 そう問うってことは、この女子も小説家なんだろうか。


「ああ。まだ一巻しか出してないけどな」

「何それ、運よく面識があるだけなのね」


 微かにむっとする。


 間違ってはないけど、面と向かって堂々と言われると思うところがある。


「運がよかったのは認めるよ。この年で書籍出せるなんて環境に恵まれてないと無理だからな」

「自覚があるなら自重しなさいよ。天ノ宮さんと言葉を交わすなんて、普通は取り巻きに取り次いでもらわないと無理なんだから」

「詳しいんだな。じゃあ天ノ宮さんが人気な理由も知ってるのか?」


 御子柴さんが目をぱちくりさせた。


「知らないで天ノ宮さんとお近づきになってたの?」

「ああ」


 周りにとっての天ノ宮さんが天上人てんじょうびとでも、俺にとっては偶然会ったきれいな女の子でしかない。


 御子柴さんが得意げに語り始めた。


 天ノ宮さんは小さな頃から声優として活動しているらしい。高校入学前に化粧品ブランドSana(サナ) Cosmetics(コスメティックス)を立ち上げて、一年生ながらにシュプリームファイブの末席に名を連ねたそうだ。


 何というか、もってる人はもってるんだなぁ。


 女子高生にして人気声優にして社長。俺とは別世界の住人みたいで現実味に欠ける。小説で天ノ宮さんみたいなキャラを出したらボツにされそうだ。


 最年少八冠(はちかん)の棋士や寝るのが大好きな野球選手よろしく、現実は小説よりも奇なりってやつか。


「とにかく、以降は天ノ宮さんとの距離感に気をつけなさい。でないと余計なやっかみを買うことになるわよ」


 じゃ。御子柴さんが言い残して別のテーブルに向かう。


 正直拍子抜けだ。もっとめっためたに言われると思っていた。もしかして昼休みの様子を見て警告しに来てくれたんだろうか。


 優しいなぁ。わざわざ初対面の俺を気にかけてくれた辺り、御子柴さんはツンツンしてるだけでお人好しなのかもしれない。


 だめだな、いつの間にか田中さんの件で疑り深くなってた。


 そもそも田中さんとは数回言葉を交わしただけだった。そんな浅い関係でユーザーホームを見せたのは俺の落ち度だ。


 たった数回の触れ合いで人を理解した気になるな。自分に言い聞かせて特別授業にのぞんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ