明かりは見ている。
ショートショートを意識しました。
K氏は外に出掛けていた。家での仕事に嫌気がさしたのだ。
自動ドアが開く。
「そうかそうか…。こんなに素晴らしい街の夜は、私の悩みさえも、ちっぽけに思えさせてくれるな。」
辺りは暗かった。深夜2時くらいのことだ。
そこを、蛍光灯が仕事をし、辺りを光で照らしている。
K氏は、「人工物に照らされる世の中なんて…」とは微塵も思わなかった。
むしろK氏は嬉しく思っていた。K氏は自分の仕事が、街を照らしている事に、何よりの誇りを持っていたのだった。
「おい…お前。この村…何かが変だとは思わないか……?」
そこに2人の男が現れた。
2人の男は泥だらけで、獣の皮を身に付けていた。
「お前知らないのか。ここは近づいちゃいけない…。なんせ悪魔と契約をしただとかなんだとか……。」
男2人が蛍光灯に照らされていても、K氏は気にもしなかった。街の綺麗さに魅了されていたから。
しかし数日後、K氏のいた村は取り壊される事が決まった。なんせ、K氏の事をとても怖がっている民が多かったのだ。
誰もが懸命な判断だと考えたし、誰も反対しなかった。
K氏を除いて。
「皆分からないのか!これがどんなに世の中を照らすものか!!」
火はまた、暗さを照らした。
しかし、K氏の村は中々燃えなかった。だから、K氏の村にあった、先っぽにスコップのようなものが付いた道具に男は乗り、取り壊し始めた。
「忌々しいがこれは便利だな。」
それからが長かった。この道具の操作はとてもじゃないが簡単ではなかったのだ。しかしそれでも、無鉄砲に幾度もなく同じ操作を繰り返し、繰り返し、日が昇った頃、K氏の村はさっぱりなくなった。その様子をずっと縛られて見ていたK氏は、もうすでに生きる気力を失ってしまっていた。
K氏の死後、地球上では、電気というものを発明するものは中々生まれなかった。その様子を、何千年と地球では無いどこからか見つめていたもの達がいた。
「地球への贈り物として、彼には未来の知識を与えたというのに、人間っていうのは、怖いね。」
そのもの達はまた、蛍光灯とも、火とも違う、生命を感じるようなあかりを、体から灯していたのだった。