表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なぜか、ふわふわもふもふが、みんな私に使役する  作者: まくのゆうき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/98

鶏小屋

とりあえず団長がセルビアをヒツジたちから救出し、鶏小屋に向かう途中のところで待機している大人たちのところに向かうと、ヒツジたちは何事もなかったかのように柵の中に戻って草を食み始めた。

とりあえずセルビアは彼らに歓迎されたらしい。

とりあえずそう思うことにしたセルビアは彼らに背を向け、大人たちの後に続いた。

もちろんグレイもくっついてきていて、彼らから離れたところまでくると頭をぶるぶると振った。

身体は動かさないようにしているからか、乗っかっているハリィとラビィのくつろいだ様子は変わらない。

あの状態で一番慌てなかったのは彼らかもしれないとセルビアはグレイの上の二匹を見たが、彼らの様子は変わらなかった。


「そういえば、ヤギは鶏小屋で飼ってたのか?」


繋いでいたのがいなくなったと言っていたので、ヒツジのように柵の中に放って食事をさせたり、一緒の小屋で生活させていたわけではなさそうだと察した羊飼いが質問すると、老人はうなずいた。


「そうですね。日中は小屋の前にロープを付けた状態で出しておいて、夜とか雨の日は中に入れてました。ニワトリを減らしたんで、道具を置いていたところが空いて、そこにちょうど一頭収まるんですよ。ヤギがそこにいてくれたら卵とミルクが一度に持ち帰れますからね。家からも近いですし」


羊小屋より鶏小屋の方が建物一つ分、家との距離が近い。

これがバケツ一杯でも毎日のことになるなら、ミルクを採取して家に運ぶのにより近い方が楽だろう。

雨の日ならより、そう感じるだろうし、複数回往復するならなおさらだ。


「ヤギもいたとはな。あいつも草が必要だ。ニワトリだって卵は産んでくれるが、面倒を見なくていいってわけじゃねぇしなぁ。で、こいつら全部引き取るってなったら、お嬢さんはヒツジとヤギとニワトリと、本人の連れてるオオカミにウサギにハリネズミって、もうこれだけでサーカスできるんじゃないか?」


種類と数だけは豊富だと羊飼いが笑いながら言うと、団長はため息をついた。


「どいつも芸はしないから無理だろう」

「それはそうか。残念だ」


サーカスにくっついている三匹もやらないのかと、羊飼いがグレイの方を見るが、グレイの上の二匹はグレイの背中に乗っているだけだし、グレイは彼の方をちらっと見ただけですぐに正面に視線を戻した。

本人たちにやる気がないのが察せられたのか、団長と羊飼いはそんなグレイたちを見て顔を見合わせるとまた小さく笑った。



そんな話を聞きながらセルビアたちは鶏小屋へと案内された。

小屋の前に簡易的な柵があって、そこについている簡易的な扉を開けて中に入っていくので、皆がそれに続いて中に足を踏み入れる。

ここに来た時点で扉が半分開いた状態だったので、先ほどのヤギがここから脱走したのは間違いなさそうだ。

とりあえず他に脱走する者がいるかはわからないが、最後に入った団長が念のため扉を閉め、それを確認して後に続いた。

全員が入ると家主の老人から説明が入る。


「こちらが鶏小屋です。残しているのはここにいる数羽だけで、残りは処分しました。新しく買ってきても、繁殖させても、この数までなら入れられます。ちなみにさっきのヤギの寝床はあそこです」


言われて皆が指された方を見ると、入口近くニワトリの檻の脇がちょうど空いている。

藁が敷いてある場所を寝床にして、ロープは小屋の柱に縛っているという。

建物にもドアが付いているし、夜には中に入れてドアの鍵も閉めているので、建物を壊して侵入されない限り肉食獣の被害は起こらないのだという。

ヒツジも同じで、夜には中に入れて建物の鍵をかけておかないと、ヒツジが狙われることがあると説明された。



ちなみにニワトリは特にここから脱走することもなく、運動させる必要もない。

餌や水は、檻の中にいる状態のまま、鍵を開けなくても与えられるようになっているし、卵も産んだら檻の外に転がってくる仕様になっているので、ヒツジたちのように外に出したり小屋に戻したりという作業は特別必要ないという。

もちろん、外に出した方がニワトリは元気になるだろうが、それをしなくてもきちんと管理すれば卵は産んでくれるし、鍵を開けたりするのは掃除の時くらいということだ。



人間たちが説明意を受けている間、ニワトリは檻の中からじっとそれらを見ていた。

自分たちが見学に来たはずなのに、彼らに品定めをされているように感じるから不思議だ。

ちなみに時々首をカクカク動かしているけれど、それはニワトリの特性らしく特に意味はないと説明を受けたので、彼らは見ているようで見ていないか、集団が珍しかったのかもしれないと思うことにした。



グレイはヒツジがいたという藁の場所をちらっと見た後、退屈だからか小屋の中を一周回ってニワトリたちを見上げている。

どうやらグレイは彼らを品定めしていたようだ。

ただ吠えることはなかったので、お眼鏡にかなったらしい。

セルビアたちが小屋を出るという話になると、グレイは静かに立ち上がって、何食わぬ顔でセルビアの横にくっついた。

とりあえずヒツジにもみくしゃになるほど歓迎され、数羽しかいないニワトリに観察される、そんな見学を終えたセルビア達は、最初の小屋に戻って一息つくことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ