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なぜか、ふわふわもふもふが、みんな私に使役する  作者: まくのゆうき


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集落の評価

「ところで、ここはお嬢さんが運営していくんですか?」


動物を連れている若い女性が管理を希望しているとは聞いていたが、対面してみればまだ子供だ。

確かにサーカス団の一員として仕事をしているようだし、その証人になれるからと団長まで一緒に来ているのかもしれないが、さすがに牧場を預けるのは不安だ。

そもそも経営などに無縁だったはずだし、数日間の留守番を頼みたいわけではない。

子供だけしか残らないと知った上で売り渡し、後にトラブルに見舞われるようなことがあれば、任せたことそのものに罪悪感に苛まれることになる。

老夫婦もサーカスを見たことはあるし、彼らが動物とうまくやっていることは興行を見ればわかった。

話を聞けばこのお嬢さんはそんなサーカス団の一員として行動していたようだし、自身も動物を連れているのだから、牧場に動物がいることに抵抗は低いだろうが、ここはそもそも若い人が逃げた土地である。

それを考えるとこんな若いお嬢さんであるセルビアが率先してこの場所を選ぶとは考えにくい。

となると、この子はきっと大人たちに言われてきただけだろう。

そんなことを思いながら尋ねたのだが、真っ先に返答したのは本人であるセルビアだった。


「そのつもりです。一人でできる範囲になりますが……」


どこまでできるかわからないが、前向きに検討しているとセルビアが言うと、思わず老夫婦は顔を見合わせてから視線を両親に向ける。


「ご両親は……」


継承させるのが面倒だから最初から子供名義で牧場を買っておこうというのなら理解できる。

ただそれは家族での同居が前提の話になる。

しかしセルビアの口ぶりからも、彼らが一緒ではないことは確定している。

ここに来られるくらいだからそう遠くには住んでいないのだろうが、それなら余計に訳ありを疑わざるを得ない。

老夫婦が怪訝な顔をするのを見て、セルビアの父親は、気まずそうに口を開く。


「私は森の先で防衛の任についておりまして……」


その言葉で老夫婦は事情を察する。


「ああ、集落の方でしたか」

「はい」

「いつもありがとうございます」


集落にいるということは街の防衛の任を住み込みで担ってくれているということだ。

それではすぐに退職してこちらに移ってくることは難しいだろうし、そうされて、人手不足の結果、人間でも動物でも襲撃があって対処できないとなると、困るのはこちらだ。

細かい事情はともかく、とりあえず先に動物を連れた一度家を出た娘だけこちらに滞在させたいということに違いない。

まあ少なくとも何かあっても両親が頼れる範囲にいるなら、大人の手が必要な時や、母親が泊まるなり様子を見に来るなりということは可能と考えてよさそうなので、売った後で後味の悪いことにはならないだろう。

彼らはそう理解して、そこまでして街の防衛に尽力してくれる彼に感謝の言葉を伝えた。


「いえ、そんな。お礼を言われたのは久しぶりです」


街に来ても職業について話すことはないし、普段は集落の中にいるから、この仕事が大切なものだということが抜けがちになる。

最初は誇りを持って任に就くにもかかわらず、集落の生活に慣れてしまうと、初心は忘れていく。

集落の人間は基本的に同じ仕事をしているのだから、なおさらだ。

だからこうして改めてお礼を言われると、自分たちの努力を理解してくれている人がいるのだなと嬉しく思う。

父親が照れながら答えると、老夫婦は謙遜するなと真剣な顔つきで言った。


「あなた方が、害獣や外敵の盾になってくれているから、我々は安心して過ごせるのですよ。獣は自由なので、ここに入ってくることもありますが、人間の敵が少ないだけでも助かってますし、子供たちを街に安心しておいておけるのもあなた方のおかげですから」


街が安全と言えるのは集落の人たちのおかげだ。

誰も言わないのなら自分たちが言わないとねぇと二人は顔を見合わせて笑った。


「そう言っていただけると……」


褒められすぎて恥ずかしそうにしている父親を、珍しそうにセルビアは見て言った。


「お父さんの仕事は人に感謝される仕事だったんだね。あの狭い中にいると、皆が同じ仕事をしているってわかってるから、そんな話出ないもんね」


父親が感じていたことと同じことを思ったようで、セルビアがそれを口に出すと、母親がそれに答えた。


「そうね。だから今の話を皆に伝えたら喜んでもらえると思うわ」

「そうすればいいよ」


私が行くことはないけどね、と続けようとしたところで、羊飼いが割って入った。


「あー、盛り上がってるところ悪いんだが、そろそろ家の中を見せてもらっていいかい。もちろん牧場も」


このままでは雑談で終わってしまう。

自分が来たのは交渉のためなのに、そこまで話が進まなければ意味がない。

自分の牧場からは慣れてきているので早く帰りたいし、また呼ばれるのは勘弁してほしいので、購入するなら交渉まで、購入しないのならしっかりと破談を確認するところまでしなければならないのだ。


「それはそうだ。そのために来てくれたんだからね。じゃあ、先に牧場を案内しよう。外から戻って休憩がてら家の中を見ればいい。その方がゆっくりできるだろう。こちらも色々話してしまったが、まずはここを気に入ってもらわないとならんからな」


彼らは雑談をするためにここに来たのではない。

購入するかどうかを決めるために来たのだ。

つい、自分の子や孫に年齢の近い家族を見て、色々話をしたくなってしまったが、この牧場にすむことになる子供以外は皆仕事を持っている。

何度も見に来ることはできないし、当然契約を締結するのはここにいる大人たちだ。

彼らもここで逃したらしばらく売れる当てはなくなるし、見つからない期間が延びればまた募集を出さなければならない。

何より、長く残ってしまうことで、ここを離れる決意が揺らぐ可能性もある。

急いでいないとはいえ、のんびりもできない。


「じゃあ、行きましょうか」


その声をきっかけとして、皆が移動のための準備に動いた。

改めて用意をするものがあるわけではないが、飲み物を

そうして準備のできた人たちが立ち上がる。

その空気を察したのか、話に入ってくることもなく、おとなしく体を丸めていたグレイも、周囲が動き始めたのを察知して立ち上がった。

ちなみに背中に乗っていたハリィとラビィは、グレイの背中から降りずにいたため、そのまま乗った状態だ。

グレイはセルビアが移動すると、横にぴったりとくっついて歩く。

そうして牧場主の夫婦とセルビアたちは、皆で小屋の外に出たのだった。

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