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なぜか、ふわふわもふもふが、みんな私に使役する  作者: まくのゆうき


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羊飼いとの顔合わせ

休演日。

セルビアの両親は再びテントを訪ねてきた。

今日はテントの見張りを残して皆が自由に過ごせる日となっている。

団長はセルビアの両親を入口で迎えてから、そこにセルビアを呼ぶと、四人で外出するとマダムに伝えて街に出た。

もちろんセルビアの傍らにはグレイがくっついていて、珍しくというべきか、グレイの背中にはハリィとラビィがおとなしく乗っかっている。

彼らが気に入るかどうかも気になるところなので、セルビアとしては同行歓迎なのだが、果たしておとなしく言うことを聞いてくれるかどうかは未知数だ。

自分たちが説明を聞いている間にどこかに行ってしまっても、帰るまでに戻ってきてくれれば何とかなると思うので、とりあえずそのままにしておくことにした。

両親はともかく、団長もグレイの上にいる存在に気付いていながら何も言わないでくれているので、大丈夫だと思ってくれているに違いない。

セルビアは時々グレイの方を気にしながら、先頭を歩く団長や両親の後に続いた。



そのうち、団長は一件の食堂で足を止めた。

外にあるテーブルにはすでに先客がいて、相手から先に団長に声がかかる。


「よぉ!」


その声に笑顔で団長が応える。


「待たせたな」


彼は団長に目を向けた後、その後ろに続くセルビアの両親とセルビア、そしてグレイたちを見て言った。


「いいや。やっぱりこいつも来たな。とりあえず埋まる前に外の席を確保しておいた方がいいと思って早めに来ておいたんだ。それで、そちらがお嬢ちゃんのご両親であってるか?」


彼が早く来ていたのはこの席を取るためだったらしい。

彼のいた席は、室内ではなく路面に面しているところで、テラスに近い形となっている。

セルビアがグレイを連れてくるなら、室内の席では中に入りにくいだろうと配慮して、先んじてこの席を抑えてくれていたようだ。

ちなみに今日、両親が同伴して顔合わせをすることは決まっていた。

だから両親のことは念のための確認に過ぎない。


「はい」


セルビアが返事をすると、彼が注文を促した。


「わかった。とりあえず先に腹ごしらえをしながら話をした方がいいだろう。俺は頼んであるから、カウンターで先に注文を出すといい」


席を使うなら当然注文をしなければならない。

そしてこの店のシステムは注文は店内で行い、できたら席に持ってきてくれる形式のようだ。

その証拠に、彼の座る席には飲み物も食べ物もない。


「そうするよ。グレイたちはここで席を取っておいてくれるか?」

「がぅがぅ!」


団長がグレイに言うとグレイは任せとけと返事をする。

それに続いて団長はセルビアと両親に声をかけた。


「じゃあ、行きましょうか。頼んで戻ってくるだけですが」

「ご一緒します」


団長の言葉に家族を代表して母親が返事をしたので、とりあえず四人、中に入って注文し、席に着いた。



「改めまして、彼が今回の牧場との仲介役をしてくれます。羊飼いをしているので長くは家を離れられないのですが、紹介者とも一度くらいは顔を合わせておいた方が、ご両親も安心かと思いまして……」


団長がさっそく羊飼いを両親に紹介し、両親は二人に感謝を伝える。


「お気遣いありがとうございます」


二人が恐縮しているので羊飼いは困惑しながら団長に言った。


「いや、俺は仲介しかしないぞ?教えるのは今の持ち主がやってくれるって言うからな。できるのは値段や条件の交渉だけで……」


あくまで顔つなぎはできるし相場は理解しているからアドバイスはできるが、できるのはそこまでだ。

それにこの顔合わせをさせることで自分に全くメリットがないわけではない。

これが成功すれば少額の支払いで自分のヒツジを手放さなくて済むことが確定するのだ。

だからそのために本気で交渉するつもりでいるだけで、感謝されるようなことではない。

ただそれを口にするのははばかられ、言葉にできずにいると、団長がそれを察して口をはさんだ。


「でも相手を知っているのはお前だけだろう?」

「ああ、確かに顔つなぎは大事な役目だな。こんなのが出てきてご両親は心配かもしれないですが、あちらの牧場主は穏やかな気性の老夫婦ですから、心配しなくてもいいですよ。仕事の仕方なんかはちゃんと彼らが指導してくれるはずですし、どうしても困ったら、この街に越してくるつもりでいるので、頼ってもいいと思います。動物たちをそのままもらい受けることになるでしょうし、話がまとまったからといって、彼らもすぐに引っ越すわけではないので、仕事を引き継ぎながらしばらく同居することにはなると思います。動物相手ですから、夜だからといって何もないわけではありませんので、人の目が必要ですし」


その言葉に両親は少し安堵したらしい。

まだ対面していないので、相手の人柄については聞いただけではあるけれど、いきなりセルビアが牧場を経営するとか、一人で暮らすという話にはならないらしい。

きちんと引継ぎをしてくれるし、少なくともセルビアと自分たちが仕事を覚えて手伝えるようになるまで、面倒を見てもらえるようだ。

グレイたちがいるのでセルビアが牧場を購入することになって、引継ぎがあるにしても、集落から通うのは難しいだろう。

集落に戻ったら何を言われるかわからない。

なので、仕事を教えてもらいながら一緒に住まわせてもらえるなら助かるのだ。


「確かにそうですね。とりあえず、しばらく大人が付いていてくださるなら、それだけで安心です」


いくらグレイがいたとしても、セルビア一人をいきなり知らない土地に住まわせるのは正直気が向かなかった。

治安の良し悪しも不明のままだし、宿のようにおかみさんが見てくれるなど、安全が担保されるわけではないと考えていたからだ。

けれど今の話が本当なら、いきなり入れ替わるわけではなく、元の持ち主と一緒にセルビアは同居できるし、もともと住んでいたところに人が増えるくらいなら特に危険が増す心配はないだろう。

両親はそう判断して互いの意見を確認すべく顔を見合わせた。



「それで、少々話が先に進んでしまっておりますが、まずは順を追って話をしても?」


団長が会話を打ち切ってそう切り出すと両親はうなずいた。


「もちろんです」


そのためにここに来ているのだから当然だ。

この段階でセルビアにはできることがないため、黙って話を聞いているだけだ。


「先に手紙を出させていただいたのですが、そちらは?」


団長が今回のことについて考える時間を作れるよう、前もって両親に手紙を出してくれていたことはセルビアも知っていた。

けれどまだ両親の答えは知らない。

ここまで話が持ち上がっていても、まだこれは決定事項ではないのだ。

セルビアがじっと両親を見ていると、父親が団長の質問に答えた。


「はい。読ませていただきました。連絡をいただいていたから今日、こちらに足を運ぶことができましたので……」

「それでしたら話は早いかもしれません。先ほどの話も含め、牧場の件はどうお考えになりましたでしょうか」


単刀直入に聞いた団長に、父親はすでにどうするかは決めてあるという。


「まずは本人の意思を尊重したいと思っています。本人が希望しているのなら、同行しますし、この段階で希望しないなら断るつもりでいました。持ち主はセルビアになりますので、実際に見て、それから考えてもいいだろうと私たちも話し合ってきたのです」


牧場を購入しセルビアがそこに住むようになれば、これからいくらでも会いに行けるようになる。

少し遠いといっても歩いていける距離なのだ。

旅回りで居場所がつかみにくいとか、向かったらすれ違ったとか、そもそも遠すぎていくのが大変ということにはならない。

それにいつでも行けるということは、困った時に助けられるということでもある。

これまで親としてできなかった分、少しでもセルビアの力になりたいという気持ちが大きい。

けれどセルビアが希望しないのに自分たちの希望を押し付けてしまったら、またセルビアに苦労をさせることになってしまう。

だから本人が実際に見て、やっていけそう、ここに住みたいと考えるのなら、購入を決めようと、そう決めたのだ。

両親の言葉に自分の意思を尊重してくれるのかとセルビアが安堵していると、そのタイミングで料理を持った人が近づいてきた。


「ああ、注文した食事がきましたね。食べたら牧場に行きましょう。見学だけならいつでも来てくださいと言われてますので」

「はい、お願いします」


そうして出てきた料理を温かいうちに平らげると、次は見学だと退店し、今度は羊飼いを先頭にして、皆が付いていく形で牧場に向かうことになった。

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