表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なぜか、ふわふわもふもふが、みんな私に使役する  作者: まくのゆうき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/97

ラビィの暴走

トラのおなかに頭を突っ込んだラビィは、ハリィがつついても出てくる様子はない。

小さいしっぽがプルプルしているので状況がわからず怯えて震えているようだ。


「怖かったのかな。ここじゃあ穴掘って潜れないもんねぇ」


柔らかく掘りやすい土があれば、穴を掘ってそこに隠れたかもしれないが、テントのある場所は土が硬いところに設置しているため、それはできない。

ラビィはトラのおなかで耳が隠れているから話が聞こえていないのか、見えないようにして情報を遮って恐怖を抑えているのかわからないが、自分から這い出してくる様子はない。

トラは起きているし押しつぶすようなことはしないだろうけど、そうならないよう気を使っているに違いなかった。


「よっぽどおなかのお布団が気持ちいいのかなぁ。隠れ切れてなくてお尻出てるし、なんか見方によっては潰されてるように見えなくもないけど、トラさんは動いてなかったし、無理やり自分から隙間に体を突っ込んだんだと思うんだよねぇ」


全身で潜り切れなかったのかと推測してセルビアが言うと、ニコルもトラからはみ出てるラビィ一部をじっと見る。


「そうだね。もしかしたら、ウサギって穴の中で生活してるから、潜ってると暗くてあったかくて落ち着くのかも。穴に入っている気分って言うか、暗いところにいるのが落ち着くってことじゃない?」


飼い主に似て、寝たら起きないだけかもしれないとニコルが冗談半分で言うと、セルビアは納得した様子でうなずいた。


「確かに、布団も潜った方がいい時あるね。それと同じかな」

「……多分そうだよ」


ニコルは場を和ませるつもりでそう言ったのだがセルビアにあっさりと受け入れられてしまった。

なので今更否定はしにくいと、あいまいに返事をしてから付け加えた。


「ラビィの場合、体ごと入りたかったけど、入れなかっただけかもね」

「それもあるかも」


これだけ二人が近くで話しているのにラビィが出てくる様子はない。

ニコルは普通に話ができてるセルビアに言った。


「とりあえず、セルビアちゃんに何もなくてよかったよ」

「うん。ありがとう」


まだ状況を把握できているわけではないが、ニコルたちにものすごく心配をかけたらしいことは理解できたので、とりあえずセルビアはお礼を言う。

そして再び視線をラビィに戻した。


「でもこのままだとトラさんがゆっくり寝られないよねぇ」


目下の問題はこれだろう。

セルビアが言うとニコルは苦笑いを浮かべた。


「そうだね。引っ張り出してお布団にくるんであげたらいいんじゃないかな?」

「うん。そうするよ」


このままでは埒が明かない。

セルビアは小さくため息をつくとラビ委の体に手をかけた。


「ラピィ、引っ張るからね」


そう言ってラビィの体を引っ張って野菜の収穫でもするかのように、トラからラビィを引き出した。

そしてどうにか引っ張り出したラビィをそのまま持ち上げると、急に明るくなったことに驚いたのか別の要因かわからないが急に騒ぎ出した。


「キー!キー!」


これまで鳴いたことなどなかったラビィが、手足をバタバタと動かして警戒音のような声を出す。

とりあえずしっかり体を掴んでいるけれど、思った以上に抵抗されたセルビアは困惑する。


「ちょっと、暴れないでー」


がっしりと掴んで、トラをひっかいたりしないように距離を取りながらセルビアが言う。


「ぴぴーっ」


そこにハリィが心配そうに付いてきて、声をかけようとしているが、ラビィの動きは収まらない。

完全に想定外の事態だ。


「どうしよう」


セルビアがラビィを落とさないようにしながら、自分も引っ掛かれないよう腕を伸ばして距離を取ると、ニコルが言った。


「とりあえず抱っこだよ」

「わかった」


この状態で抱っこなど受け付けるのかと思ったが、確かにそうした方が落ち着くのかもしれない。

セルビアが覚悟を決めて伸ばしていた腕を自分の方に寄せる。

そして逃げられないよう首根っこを掴んで向きを変えると、そのまま胸に抑え込んだ。

セルビアの体にぴったりくっつくと、ラビィは途端に鳴くのをやめて動かなくなった。


「よかった。大人しくなったよ……」

「落ち着いたかな」


セルビアが胸にラビィを抱きかかえると、足元でハリィが鳴いた。


「ぴぴっ!」


ハリィが何を主張したいかはわからないが、とりあえずセルビアはハリィの頭を指で撫でて褒めてみた。


「ラビィを心配してくれてありがとね」


セルビアがそう言うと、ハリィは満足そうに体を伸ばして頭を指に押し付けた。



「今のうちに布団に入れてきたら?とりあえずみんないつものところにいるから、セルビアちゃんには戻ってきてほしいけど」


とりあえずいなくなったセルビアを皆が心配しているし、セルビアだって何があったのか、落ち着いた状態で説明を受けておいた方がいい。

少なくともラビィを気にしながら片手間に聞く話ではない。

ニコルが言うとセルビアはうなずいた。


「うん。ありがとう。とりあえずラビィたちを置いてくる」


セルビアはそう言うとラビィを片腕に乗せて、もう片方の手をラビィに差し出した。

ラビィがそこに乗っかると、セルビアは檻を出て彼らを自分の布団の上に置いた。

するとすぐ、ラビィにハリィが寄り添う用にくっつく。

ラビィは布団にもぐって安心したのか、布団を盛り上げた塊のまま動く様子はない。

それを見て、ここはハリィに任せれば大丈夫だと判断したセルビアは部屋を出た。

これから皆と話をするのならここにいた方がいいのかもしれないと思ったが、ニコルもグレイもいないので、彼らはセルビアが戻るのを檻の中で待っているに違いない。

そう考えたセルビアは皆に声をかけることなく、セルビアは集まっている様子を横目に見ながら檻に戻った。

そして檻に戻ってニコルに戻ったことを伝えてから、トラの側によっていきお礼を伝えて体を撫でる。


「トラさんありがとう。本当はゆっくり寝たかったよね。夜中にうるさくしてごめんね」

「ぐるぅ~」


トラはセルビアに撫でられたのが嬉しいのかそれが気持ちいいのか目を細めた。

一応ニコルに言われてここに戻ってきたけれど、セルビアは皆のところに行かなければならない。


「じゃあ行こうか」

「うん」


ニコルに声をかけられてセルビアはトラから手を離した。

そして檻をきちんと閉めると、グレイを連れてニコルと一緒に、皆の集まる空間へと向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ