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なぜか、ふわふわもふもふが、みんな私に使役する  作者: まくのゆうき


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頭隠して尻隠さず

「団長、そう言えばセルビアちゃんは?」


先ほどから話に出ているセルビア本人がいない。

普段ならこういう時、すぐにニコルの側に寄ってくるはずだが、そういう気配もない。

気が動転していたし、グレイがいるのでセルビアは近くにいるはずだと勝手に思っていたが、どうやらそうではないらしい。


「クレイがいるからてっきり、セルビアちゃんも一緒だと思ってたんだけど……」


普段セルビアから離れないグレイがここにいるので、セルビアは近くにいると勝手に思っていたが見回しても姿はない。


「ニコルは一緒じゃなかったのか?」


団長が尋ねるがニコルもわからないと困惑しながら別の団員に所在を確認している。


「ねぇ、セルビアちゃんが見てないよね?」

「いや、見てないね」

「さすがに勝手に出ていったりはしないと思うから、どこかに隠れてるんじゃないかな?」

「外に出るならここを通るから気付くだろうし」


皆で見まわしながらそんな話をしていると、グレイがニコルの側にやってきて足を鼻でつついた。


「グレイ、何か知ってるの?」


ニコルがグレイを見下ろして聞くとグレイはそうだと返事をする。


「がぅがぅ」


もちろんと言わんばかりのグレイの頭をなでながら、ニコルは言った。


「案内してもらっていいかな。もう安全だし、もし一人で隠れてるんだったら、皆と一緒の方が安全だし、もう悪者は連れていかれていなくなったからさ」

「わぉーん」


ニコルが言うと、グレイは一鳴きして歩き出した。


「わかった、ついていくよ」


案内すると言っているのだと察したニコルは、グレイの後に続く。

テント内だしグレイがいるとはいえ、先ほど騒動があったばかりだ。

ニコルだけで歩かせるのは不安だと団長は後ろをついていくことにした。



グレイが向かっているのは動物たちのスペースだった。

ニコルはグレイが立ち止まって顔を向けている方を見る。


「トラの檻……、あっ」


ニコルがトラの檻の中を見ると、そこでセルビアがトラと身を寄せ合って眠っている。

トラの方は警戒して起きているようだが、セルビアは安心したのか熟睡しているようだ。


「グレイがここに避難させたの?」

「がうがう」


グレイはとっさの判断でセルビアをトラに預けたらしい。

確かにあのような人間がわざわざトラに近づくことはしないだろうし、そこにいる女の子だけを狙うなど考えないだろう。

何よりトラがセルビアを恩人と認めているからかとても懐いている。

もしセルビアに何かしようとしたら真っ先に攻撃態勢に入るだろう。


「そっか。グレイ、お手柄だよ!」


ニコルがグレイを褒めて体をわさわさと撫でると、檻を開けて中に入った。

その音にトラは目を細めて相手を確認する様子を見せたが、ニコルだとわかると何もせず目を閉じた。

ニコルは警戒することもなくセルビアのところに向かう。


「セルビアちゃん、セルビアちゃん、起きて」


寝ているくらいだから大丈夫なのだろうが、とりあえず話を聞きたいし、できれば皆のところに顔を出して安心させてほしい。

そうするためにはセルビアを起こす必要がある。

声をかけても起きる様子がないので、仕方なくニコルはセルビアの体をゆすりながら何度か声をかける。

そしてようやくこちらに意識を戻したセルビアが目を開け、ニコルが目の前にいることに気が付いて、寝ぼけた様子で言った。


「ニコルちゃん、どうしたの?」


いつもなら寝ているところを起こすなんてない。

珍しいなあとセルビアはそんなことを思っていたが、ニコルは安堵の息を吐いている。


「どうしたって……、そっか。何かあったから逃げ込んだんじゃなくて、最初からここに避難してたんだね」


グレイが侵入者に気付いて、彼らに攻撃を仕掛ける前に、グレイはセルビアをその場所から遠ざけたらしい。

巻き込まれたら嫌だと思っていたのか、相手が最初からセルビアが狙いだと気が付いていたからかはわからないが、グレイの行動が結果的に良い方向に働いたのは間違いない。

ニコルが無事でよかったとセルビアに抱き着くと、さすがのセルビアも異変に気付く。


「何かあったの?」


ここまで侵入者が入り込むことはなかったし、セルビアの睡眠は深い。

だから騒ぎが耳に入っていなかったようだ。

とりあえず一連の捕り物劇についてニコルが説明すると、セルビアは自分だけ呑気に寝てたことに落ち込んだ。


「そっか。それでグレイの様子がおかしかったんだね」


自分が寝ようとしてるのに急にここに引っ張ってこられた。

よくわからないけどそうしろとうるさいのでとりあえず檻の中に入ったら、トラにも引き留められた。

だからまあいいやとそこで寝ることにしたのだ。


「そうなの?」


セルビアの話を聞いたニコルが確認するとセルビアはうなずいた。


「うん。なんか急にグレイが唸りだして、トラさんの檻に引っ張ってこられちゃったんだよ」

「じゃあ、グレイはセルビアちゃんが部屋にいたら危ないってわかったんだね」


ニコルが言うとグレイが代わりに返事をする。


「がぅがぅ」


それを聞いたセルビアは体を起こすとグレイに抱き着いた。


「そうだったんだね。いつもありがと」


そしてグレイをわしゃわしゃと撫でていると、いつの間にかグレイの横にやってきたハリィが鳴いた。


「ぴぴぃー」

「ハリィも協力してくれたんだね。ありがとう」

「ぴぴっ」


グレイだけじゃなくハリィも頑張ったと自己申告しているので、セルビアはハリィのことも撫でてあげる。

そこでセルビアは足りないメンバーがいることに気が付いた。


「そういえばラビィは?」


セルビアが言うとニコルも辺りを見回した。

そして先に気が付いたのはニコルだった。


「ラビィちゃん……。あ、そこだね」


ニコルが苦笑いをしてセルビアの方を見ていると、そこにハリィが近づいてきた。


「ぴぴっ」


ハリィが立ち止まって鳴いたのでそこを見ると、セルビアは目が点になった。


「え……」


ニコルとハリィが見ている先、セルビアの近くにラビィはいた。

そこにいたラビィはセルビアが寄りかかっていたトラのおなかに、おしりを残して頭を突っ込んでいる状態だった。

トラに体半分がつぶされたように見えなくもなく、ラビィは自分からその格好になったのかと、目の前の光景に、あっけにとられたセルビアだった。

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