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なぜか、ふわふわもふもふが、みんな私に使役する  作者: まくのゆうき


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街歩き

そうして迎えた翌日。

朝食を終えると、二人は待ちきれないといった様子でマダムの許可をもらって早速テントを出た。

ニコルが先導してくれるので、セルビアとグレイがくっついていくような形だ。


「ニコルちゃん、この街に来たことあるの?」


少し前を歩くニコルが迷うことなく足を進めているため、道を知っているのかとセルビアが尋ねると、ニコルは首を傾げた。

正直、どの街に来たのか、すべてを覚えているわけではないし、歩いたら思い出すこともある程度で、すべてに思い入れがあるわけではない。

来たことのある街だと、歩いているうちに思い出す程度だ。


「どうだったかな。どうして?」


セルビアの疑問の意味が分からずニコルが聞くと、セルビアがそれに答える。


「歩き慣れてるみたいだったから……」


足取りに迷いがないし、セルビアみたいにあたりを物珍しそうに見る様子もない。

行ったことがなければ場所が分からないから、誰かに聞かなければと思ったが、ニコルはその必要はないという。


「ああ、それは、たくさんの街に行ってるから、何となく中心はあの辺、みたいなのが、勘でわかっちゃうんだよね。パターンはあるけど、どこも似たような感じだから」

「そうなんだ」


ニコルは何という名前の街に行ったのか細かくは覚えていないが、どんな街があったかは覚えていて、安全に買い物のできそうな場所は中心街であると判断している。

そしてその位置は、その街の中心部や、関所付近に多い。

先ほど通った関所周辺に何もなかったのだから、向かうのは街の中心だ。

そして昼前までの時間は街の中心に向かって人は増えていくものだから、迷わぬよう、それなりに大きな道を人の多い方に向かって歩いているのだ。



ニコルの説明を聞きながら歩いていると、目の前にお店のたくさん並んだ広場が現れた。


「ほら見えてきた。あの辺が中心街じゃないかな。人も多いし、お店もたくさんあるし」

「本当についた。すごい!」


思わず感嘆の声を上げたセルビアにニコルが言った。


「そうだ、セルビアちゃんに二つだけ注意しておくね」

「なに?」


セルビアは自分が何か良くないことをしてしまったのかと不安そうにニコルを見ると、ニコルは先輩風を吹かせて言う。


「辺りを見回すのはいいけど、堂々と歩くこと。それから、中心街から脇道には入らないこと。そうすればトラブルに巻き込まれる確率がかなり下がるから」

「うん、わかった……」


ニコルの説明を聞いて、セルビアのテンションが下がった。

どうやって行動したらいいのかを教えてくれるということは、ここからは別行動なのかもしれない。

確かに中心街の中にいれば安全だろうし、帰り道も一応覚えているけれど、一緒に買い物ができると期待していた分、気持ちが下がる。


「どうしたの?」


セルビアの急な変化に驚いてニコルが声をかけると、セルビアがそれに答えた。


「とりあえず何も知らないから、今日一日ニコルちゃんについていこうって思ってたんだけど……」


セルビアが言いにくそうに切り出すと、ニコルが不思議そうな顔をする。


「私もそのつもりだけど」

「もしかしたら別行動したかったのかなって」


さっきのは別行動をするための諸注意だし、ここまでくれば安全だと判断したのだろうとセルビアが言うと、ニコルは慌ててそれを否定した。


「あー、そんなことないよ。本当にそうだったらそもそも一緒になんて誘わないし、この街にはしばらく滞在するんだから、もし一人で行きたいところがあるなら一人の時に行くし、これからはセルビアちゃんだって、一人で街に来ないといけないこともあるかなって思ったから説明しただけで、これから別行動しようって意味じゃないから!」

「よかった」


とりあえず今日はニコルと一日一緒にいられるらしい。

そしてお店も一緒に回れるようだ。

それが分かってセルビアは安堵する。


「とりあえずどうしようか。お昼もここで食べちゃえば、その分、長くいられるけど」


お昼をテントに戻って食べるのなら、早めに買い物を済ませて戻る必要がある。

せっかく戻っても昼食が残っていなかったら意味がないからだ。

でもせっかくの外出で、そんな慌ただしい買い物をしたくはない。

それに早く戻ったところで、テントの中で待つだけになるのだ。

ただ外食をすればお金がかかる。

だから自分の一存では決められない。

できれば外で食事をしてゆっくりしたいと言いにくそうにニコルが口にすると、セルビアは喜んで賛成した。


「せっかくだから街で食事をしてみたい。どんなものがあるのか気になるし」


初めてテントで食事をした時、珍しい食べ物を出していた。

今回は自分のいた街の名物を提供することになるけれど、次の行き先ではここの名物をだすことになるはずだ。

でもその全てが提供されるわけではないし、次にいつ来られるかわかないのなら、なおさら気になるものがあったら食べておきたい。

おいしいかおいしくないかは二の次だ。


「じゃあ、とりあえずウロウロして、面白いものがないか見て回ろうか。まだ朝だからお腹空いてないでしょう?」

「うん」


確かに朝ご飯を食べてからあまり間を空けずに出てきたこともあって、お腹が空いているわけではない。

おいしそうな匂いがどこからともなくしてくるので、食欲をそそるけれど、今食べたらすぐにお腹いっぱいになってしまう。

どうせなら、気になるものはたくさん食べたいから、もう少しお腹が空いた方がいい。

セルビアはそう考えながら、足元のグレイを見た。


「グレイもいい?」

「わぅわぅ!」


セルビアが聞けば、グレイが賛成する。

ニコルもグレイの返事が同意だと理解したのか、さっそく店を回ろうとセルビアを誘った。


「じゃあ、近くから行こうか」

「うん!」


そう言うと二人は歩きだした。

そしてセルビアに合わせてグレイも寄り添うように歩く。

少し時間が経っただけなのに、どんどん人が増えていく。

おそらく昼食目当ての人たちが街に繰り出してきているのだろう。


「すごく人が増えてきたね」

「そうだね。はぐれないようにしなきゃ」


二人がそう言って、より距離を寄せると、グレイもセルビアの足元にくっつく。

その状態で混雑した街を歩きながら、目についた店に立ち寄って買い物をする。

一緒に商品を見て選ぶのも、選んでもらうのも、セルビアにとっては初めての体験だ。

それが楽しかったこともあり、気が付けばセルビアは、両手に抱えなければ持っていられないほどの、たくさんの買い物をしていたのだった。


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