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なぜか、ふわふわもふもふが、みんな私に使役する  作者: まくのゆうき


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夜行性

大きく環境が変化したにもかかわらずぐっすりと眠って目を覚ました翌朝、セルビアは朝食の支度を終えて、食事を始めたところで、すぐにマダムに声をかけられた。


「セルビアちゃん、グレイはこれまでも、夜中、外に出て行ったりしていたかい?」

「夜中にですか?」

「ああ」


突然突拍子もない質問をされたセルビアは驚いて声を上げると、マダムはそれに動じることなく肯定した。


「わからないです。部屋の鍵をかけて寝て、起きた時も足元にいるんで、特に外に行ったりはしてないと思うんですけど、私が寝てる時のことまでは……」


セルビアは一度寝てしまうと基本的には朝まで目を覚まさない。

とても熟睡できるタイプだ。

それもあって、疲れていた昨夜はすぐに眠りにつけたので、朝までよく眠れてすっきりしている。

これまでも宿の部屋には鍵をかけていたし、特に物音を感じることはなかったので、気にしたことはなかったが、マダムには気になることがあったのだろう。

セルビアは思わずグレイを見たが、グレイは首を傾げるだけである。


「なるほどねぇ」


マダムが状況を理解したと自分の食事を始めると、ニコルが言った。


「それ、私も気になった」

「ニコルちゃんも?」


マダムが気になったというだけではなく、ニコルも同じだというのだから、マダムの勘違いというわけではなく、セルビアが気づいていないということだろう。

セルビアが動揺していると、ニコルが昨晩のグレイについて話した。


「グレイ、夜中に音を立てずに部屋を出てったんだよね。一時間もしないで戻ってきたけど、外で遊んできたのかなって」

「私は気づいたことがなかったけど、ずっとそうだったのかな」


セルビアがグレイを見ると、グレイは元気に返事をする。


「わぅわぅ!」


グレイの返事は肯定だ。

グレイはごく普通にお出かけしていたのだろう。


「……そうみたい。なんかごめんなさい」


集団行動なのにまさかグレイが夜中に別行動をしているとは思わなかった。

特に同室のニコルを起こしてしまったのなら申し訳ない。

セルビアが謝罪すると、マダムは笑いながら言った。


「いや、悪いことじゃないんだけどね。グレイは賢い子みたいだし、セルビアちゃんを起こさないで動くことを知ってるってことだろうし、ニコルが目を覚ましたのだって偶然だろう」


マダムは動きに敏感になる生活をしているから気が付いただけだし、別に他の人の睡眠も妨げていないから気にすることではないらしい。

ただ、そういう行動をとるのが普通なのかという確認をしたかっただけということだ。


「でも、グレイは夜中にどこに出かけてたんだろう?」


セルビアがそう疑問を口にすると、マダムが少し考えてから答えた。


「ここいらだと、森じゃあないかい?」

「森?」


町の近くにある森といえば、セルビアがグレイと出会った場所だ。

もしかしたら家族がいたのだろうか。

でもそれなら集落までついてきたりはしないだろうからおそらく違うだろう。

セルビアが真剣に考えていると、マダムが言った。


「そもそも、この子夜行性だろう。だから夜の方が目が冴えてるんだろうね。あと、多分、この子は夜中に狩りをして、自分で食糧を調達して食べてるんじゃないかね」


マダムに指摘を受けたセルビアがグレイに確認する。


「そうなの?」

「わぅわぅ!」

「ごめんね、私がちゃんと足りるくらいのご飯をあげてなかったからだよね」


これまであまりご飯を食べないのはグレイが少食だからだと思っていた。

だから無理には与えていなかったのだが、まさか夜中にお腹が空いて狩りに行かなければならないのは、食事が足りないからで、自分に気を使ったに違いないと、セルビアがグレイに謝っていると、マダムは気にすることじゃないという。


「まあ、そういうこともさせておかないと、運動不足になっちまうだろうからいいんじゃないかい。グレイ、外で人間に見つからないように気を付けるんだよ?」

「わぅわぅ」


マダムに注意を伝えられたグレイはそれにも素直に返事をした。



「たぶん、グレイは成長期なんだろうね。最近、急に体が大きくなってきたんじゃないかい」


マダムに言われて改めてグレイを見る。

最初にあった灰色の小さい毛玉からは大きくなってきたと思っていたけれど、よく考えたらそれよりさらに成長している気がする。

成長度合いからすると小型犬が番犬のできる大き目の犬になった感じだ。


「毎日一緒にいるから気にならなかったけど、言われてみれば、確かにかなり大きくなってるかも。体が大きくなったらご飯もたくさん必要だよね。ごめんね」

「くうーん」


グレイは気にすることはないといった様子でセルビアに頭を擦り付ける。


「それに、グレイが夜行性だなんて思わなかったよ。確かにお昼はおとなしくしてるなって思ってたけど、退屈だから寝てるんだと思ってたし」


仕事中、近くでじっと体を丸めて眠っていることが多い。

邪魔をしないようにおとなしくしてくれているけれど退屈なのだろうとちょっと申し訳なく思っていたけれど、実は単に睡眠をとっていただけらしい。

グレイも意外とマイペースなのだろう。


「夜起きてるから昼眠いってことみたいだね。両方かもしれないけど」


ニコルが笑いながらそう言ってグレイの背中をなでる。


「うん。なんか私、ずっと一緒にいるのに、グレイのこと何も知らないんだね」

「くぅーん」


グレイはちょっと落ち込んだ様子のセルビアの足に再び頭を擦り付けた。


「とりあえずグレイは夜行性で、夜中に出かけるってことが今日はわかったんだし、わからないことはこれから知っていけばいいんじゃないかな」


ニコルがセルビアを励ます。


「ニコルちゃんありがとう。マダムも、これから色々教えてください。私じゃ気が付かないことも多いので」


ずっと一緒に生活していながら、グレイが毎晩部屋を抜け出していたことすら知らなかった。

それが習性なら、集落にいる時からだろうに、セルビアは今日指摘されるまで知らなかったし、自分では気が付けなかったのだ。

でもそれではいけない。

本当はセルビアがグレイの飼い主なのだから、一番グレイのことを知っておかなければならないのだ。

ニコルから話を聞いた感じでは、グレイは自分が寝てからしか行動しないようだけど、ちゃんと自分で確認したほうがいいかもしれないなと、ひそかに思うセルビアだった。

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