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なぜか、ふわふわもふもふが、みんな私に使役する  作者: まくのゆうき


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テントの夜

そうしてニコルと話をしていると、すぐに夕食の時間がやってきた。

マダムから声がかかると、昼食の時とは違ってニコルがセルビアに参加を促す。

「セルビアちゃん。とりあえずやってみようか」

「うん」

二人は立ち上がると早速食器などを運び始めた。

重たい鍋などは大人が数人で慎重に運んでいるので、邪魔にならないよう動く。

その間のグレイは変わらず体を丸めて動かない。

動かない方が邪魔にならない事を知っているかのようだ。



そして準備が整ったところで、セルビアはグレイに声をかけた。

「グレイ、どのくらいご飯食べたいか教えてくれる?」

「わぅわぅ!」

自分のご飯が用意されると分かると、グレイは立ち上がってセルビアの横にくっついた。

そしてセルビアはグレイを連れて餌の保管場所に行ってしまった。

「グレイは本当に賢いよねぇ。っていうか、セルビアちゃん、自分のご飯忘れてる……」

ニコルはそうつぶやいて自分の食事を受け取って席に置くと、セルビアの分をもらいたいとマダムに伝えて並び直した。

せっかく手伝いをしたのにいなければ食事にありつけなくなるかもしれない。

皆で食べると言っても、その時間に揃った人で食べ始めてしまうなんて普通の事だ。

それが単に席を立っただけと分かっているのならなおさらだ。

しかしいつ戻ってくるか分からないと、その間に食事がなくなってしまうかもしれない。

さすがにグレイのご飯を取りに言っただけだから、おかわりでなくなる前には戻るだろうけど、それでも少なくなってしまったら残念だろう。



セルビアが戻ったら、自分のご飯はキープしてからの方がいいよとアドバイスしよう。

まだ来て数時間しか経っていないし、食事も二回目だから慣れていないだけだろうし、伝えれば次からは気をつけるだろう。

ニコルはセルビアの席に自分と同じ食事を置いて、そう決めたのだった。



「あれ、ご飯……」


セルビアが自分の席の横にグレイのご飯を置くために戻ってくると、すでにそこに自分の分が置かれている事に気が付いてそうつぶやいた。


「おかえり。もらう前に行っちゃったから、先にもらっておいたよ」

「ごめん。ありがとう」


ニコルに言われて、セルビアが思わず謝ると、ニコルは気にすることはないと笑った。


「これからは先にもらってから席に置いてグレイのご飯を取ってきた方がいいよ。グレイのご飯は無くならないけど、人間のご飯は足りなくなっちゃうかもしれないんだよね。せっかく準備に参加したのに、もらい忘れて少なくなっちゃったらちょっと残念だからさ」


全部なくなってしまう事はないけれど、思う量を食べられない事はあるから、お腹いっぱい食べるためには先に取っておく方がいい。

残っていればおかわりはできるけど、食べたいものが残っているとは限らない。

せっかく最初からいて、手伝いまでしたのに、わざわざ残り物を食べる必要はないんだとニコルに言われて、セルビアは申し訳なさそうに言った。


「そうなんだね。明日から、そうすることにする」

「くぅ~ん」


グレイがご飯に手をつけずにじっとセルビアを見上げた。

自分のせいで注意をされた事を気にしているか、ご飯が少なくなるんじゃないかと心配しているようだ。


「グレイは悪くないよ。明日から私がご飯もらってからになるけど、そのくらいなら待っててくれるよね」

「わぅわぅ!」


グレイが元気に返事をする。

待たされる側のはずなのに、心なしか満足そうにしている。

おそらくそのくらいのことで役に立てるのが嬉しいのだろう。


「とりあえずご飯を食べたら片付けもあるから、片付け始まる前に食べちゃおうか」


ニコルに言われてセルビアはうなずいた。

そんな話をしているうちに、遅れた人も含めて皆が集まっていたらしい。

そこで揃って挨拶をすると、グレイも一鳴きして、ご飯を食べ始めた。



夕食の片づけを終えると、セルビアとニコルは、最初に荷物を置く時に案内した場所に戻っていった。

寝る場所を整えると、グレイは入口側の隅っこに場所を決めたのか、そこで体を丸めた。


「私、こうやって友達と一緒に夜を過ごすの初めてだよ」


並んで体を横たえたところでセルビアがそういうと、ニコルが聞き返した。


「そうなの?」

「うん。集落ではそういう事をする相手がいなかったから」


特に仲が悪くなかった時でも、お互いの家に泊まりに行くようなことはしていなかった。

そこまで仲が良かったわけでもないし、狭い集落という地域においては互いの家が近すぎて、その必要性がなかったからだ。


「そっか。実は私も友達と一緒っていうのは初めてかな。ここに来る前は一緒に過ごすっていうより、狭い所に一か所に集められてたって感じだったし」


ニコルの言葉に驚いたセルビアが思わず聞き返す。


「集められる?」


状況がよくわからないため、思わずそのままの言葉を口にすると、ニコルはそうだとうなずいた。


「うん。私、孤児院の出身だから」


その言葉を聞いて、セルビアは団長が個人の過去のことを詮索しないようにと言っていたことを、思い出して慌てた。


「そうなんだ……。聞いてよかったの?」


それは話したくない過去のことなのではないかとセルビアが心配して尋ねると、ニコルは明るく答えた。


「気にしてないから大丈夫だよ」

「ありがとう……」


セルビアが心配そうにニコルのほうに目をやると、ニコルもセルビアのほうに体を向けていた。

そして笑いながら言う。


「そろそろ寝ようか。明日はここを片付けて移動だから、結構体力が必要になるんだ。お話はその時でも、明日以降でもたくさんできるからその時に少しずつしよう。私のことはその時に話すよ。セルビアちゃんには知っておいてほしいし」


「わかった。時間はたくさんあるもんね。少しずつ聞かせてくれればいいよ。おやすみなさい」

セルビアはそういうとすぐに寝る態勢に入った。

そして環境の変化や疲れもあったのかすぐに寝てしまうのだった。

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