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なぜか、ふわふわもふもふが、みんな私に使役する  作者: まくのゆうき


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牧場研修

昼食後、改めて牧場の中を案内してもらったものの、特に仕事はなかった。

説明を受けて分かったことだが、基本的に仕事は夜明け前後から昼食前までに大半が終わってしまうのだという。

今日残されていた仕事は、放牧していたヒツジを小屋の中に戻すことだったので、セルビアとグレイはそれだけを率先して行った。

ヒツジたちは声をかけるとメーメー鳴きながらセルビアについてくるし、はぐれそうになったらグレイが追い立ててくれたので、それもさほど手間をかけることなく終えることができた。


「私たちだと結構時間がかかってたんだけど、セルビアさんとグレイちゃんが連携したらこんなに早く終わるのねぇ」


セルビアが先頭を歩きそれに続くヒツジの隊列を見た奥さんが感心してそういうと、母親はやはりセルビアは特異体質なのだなと思いながら、複雑な表情で黙ってうなずいた。



さして苦も無く作業を終えたことで、奥さんに感心されたが、仕事は明日からが本番だ。

仕事はこれまで起きたことのない時間から始めなければならない。

体が慣れるまで起きるのは辛いだろうが、奥さんが一緒にいる間は起こしに行くから心配しなくていいという。

セルビアはしばらくその言葉に甘えることになりそうだと思いながら、お願いしますとそう言った。

とりあえずこの日は母親も部屋を借りて泊っていくことになっているので、夕食をもらって早々に休むことになった。



牧場の朝は早い。

薄暗かろうとも時計代わりのニワトリの鳴き声が上がれば共に動き始める。

セルビアも朝に弱いわけではないが、これまでに比べたら一段と早起きが必要となる。


「おはよう。支度が出来たら降りてきてちょうだいね、朝食はできてるから」


奥さんに起こされ、セルビアは着替えて、グレイたちと一緒にダイニングに降りていく。

母親も奥さんに起こされて目を覚ましたようで、セルビアより少し後に準備を整えてやってきた。


「おはようございます」


母娘が奥さんにそう挨拶すると、奥さんは微笑みながらテーブルに朝食を出してくれた。


「お口に合うかわからないし、寝起きすぐに食事は辛いかもしれないけど、空腹じゃもたないから少しでも食べてちょうだい」


自信も経験したことがあるのか奥さんが言うと、その言葉にすでに食事を終えてテーブルから少し離れた椅子に座っている旦那さんもうなずいた。


「朝食のお手伝いもせずにすみません。お言葉に甘えていただきます」


母親がそう言って奥さんにお礼を伝えると、セルビアもいただきますと言って食事に手を付けた。

その間に奥さんはセルビアの横にいるグレイに声をかける。


「グレイだったかい。とりあえず水とパンでいいかい?」


奥さんが体をかがめてグレイに聞くと、グレイは背中に乗っている二匹を見る。

彼らは眠いのかグレイの体に顔をこすりつけた。


「がぅがぅ!」


彼らの反応から、もらっておこうと判断したらしいグレイは、とりあえず肯定の反応を示した。

その鳴き声にセルビアが反応して、お願いしますと代わりに言うと、奥さんはパンを二つ持ってきて、一つをそのまま、もう一つを半分に割っておくと、その隣に水を置いた。

するとグレイの体からズルズルと二匹は滑り降りてきて、半分にされたパンに口を付ける。

グレイはそれを見てから大きいパンを一口で平らげて水をなめていた。



そんな朝食を終えると、総出で作業開始だ。

まだ暗いのでヒツジを外に出すわけにはいかないこともあり、まずは鶏小屋に向かう。

そしてニワトリが産んだタマゴを回収する。

続いて近くにいるヤギからミルクをもらう。

いわゆる乳しぼりだ。

ヤギは慣れたもんと言わんばかりに器を持って近付くと立ったままおとなしくしている。

セルビアと母親は説明を受けながら、ヤギの乳しぼりを経験し、ミルクは奥さんが持ち、先に回収していたタマゴは、セルビアと母親が持って一旦家のキッチンへと置きに戻った。



そして再び鶏小屋に戻ると今度は小屋の中の掃除をする。

ニワトリはゲージの中に入っているが、網になっているので大半の汚れ物は下に落ちている。

だから掃除をするのはニワトリのいるゲージの下と、餌箱と水入れだけでいいらしい。

もちろん掃除の後、餌箱には餌を足して、水入れの水は新しいものを満水まで入れて戻す。

続いてヤギが体を休めている場所だが、ここには藁が敷いてある。

なので藁を交換しなければならない。

古い藁を一度外に出して、ヤギのために鶏小屋に積んである新しい藁を敷き直す。

そしてニワトリにしたように、餌を入れた餌箱と、別の容器に入れた新しい水を、壁側に寄せて、藁の端近く地面の上に置いた。

今度はここで回収された藁を、小屋の裏にある木製の巨大な蓋つきの入れ物の中に上から入れる。

ちなみに下にも扉が付いていたのでここは何に使うのかと尋ねると、下にあるものは、すでに発酵しているので、土に混ぜて畑の肥料にするのだという。

そしてこれのさらに大きいものが、羊小屋にあるので、交換の要領は同じであると教わった。



そこまでの作業を終えたところでふと空を見上げると、まぶしいくらいの太陽が低い位置から昇り始めていた。

赤い朝日がまだ動物のいない草原を照らしている。

けれどその赤の光景はすぐに終わり、気が付けば外は明るいさわやかな朝の形式へと変わっていった。


「日が昇って明るくなったから、今度はヒツジたちを外に出すよ」


鶏小屋の掃除を終えて羊小屋についたところで奥さんがそう言う。

そしてヒツジの前にある柵を開けた。


「とりあえず、昨日とは違うブロックに彼らを連れてってやってくれ」


ここまで無言で作業をしていた旦那さんがセルビアに指示をしてきたので、セルビアはすぐに了承する。

セルビアがヒツジに何となく声をかけると、グレイも横にくっついて何やら伝えている様子だ。

グレイが伝えてくれるなら大丈夫だろうと考えたセルビアは、いくよーと一度大きな声を出してから、開いた柵の前を通っていく。

ヒツジはセルビアに導かれるようにメーメーと鳴きながら昨日と同じ隊列のようになって小屋から外に出てきた。

グレイが前に後ろにと隊列を監視してくれたので、セルビアは先頭を歩いて、昨日と違うところを適当に見繕っただけだ。

そうしてとりあえずヒツジたちを昨日と違う区画に誘導してから、セルビアは羊小屋へと戻った。

そこですでに藁の交換を始めている三人に混ざってセルビアも藁の運び出しと交換を手伝った。

範囲も広く、量も多いけれど、確かにヤギのところで行った作業と変わらない。

ヒツジを誘導して戻っても手伝えることがあったため、セルビアも道具を借りて作業に加わって、羊小屋の掃除を終えた。

ちなみにグレイはサーカスの時と同じように中に入ることはせず、入口で待機しており、それに倣ってハリィとラビィもおとなしかった。

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