夢
僕はただ夢を叶えたかった
あの日諦めた夢を
手を伸ばしても掴めない、実現出来ない夢を
ただただ追いかけていた
どうしようもなく絶望したこの現実から逃げ出すように
あの日の夢にすがっていた
「負ける訳にはいかないんだ!あの人がこの街から逃げ出すまで!」
手に握っていた剣に魔力を込めながら
無我夢中で走っていた
夢のためではなく、今はただ師匠のいるこの街を守るために
魔力で強化した足を動かしながら、標的へのルートを目で見て考えていた
「邪魔をするな!人風情がぁぁぁ!!!」
エルフはそう叫びながらドス黒い魔力の塊を複数飛ばしながら特異魔法を詠唱した
「エア・ナイトメアァァァ!!!」
その風はエルフを中心に勢いよく広がった
魔力の塊を避けることは出来ても風を避けることは出来なかった
その風に触れる昔のトラウマが脳内でフラッシュバックしながら頭痛と目眩が僕を襲った
「こんなもので、止まると思うなぁぁぁぁ!!!」
地面を蹴り、一気に空中に浮いているエルフまで距離を詰め
剣に貯め込んでいた魔力を解放した
「これで終わりにするんだぁぁ!!!」
剣は徐々に光を放ちながら光の柱へと形を変えた
その光を様々な思いを背負いなが力いっぱいにエルフへと振りかざした
その光はエルフの右腕に直撃し、右腕は原型をとどめることなくなくなっていった
「貴様ァァァァ!!!」
全ての力を使い切った僕は重力に身を任せながら落下していった
あぁ……僕はここまでか……
守れなかった……
全てを賭けた結果が右腕だけだった……
ごめんなさい……師匠………守れなくて……
「ごめん……なさい……」
黒い羽が僕を優しく包んだ
「遅れてごめんね」
聞き覚えのある声だった
「あとは私に任せて、君はゆっくり休んで」
「師匠………」
僕は眠るように意識が途絶えた
「私の弟子をいじめたあなたにはここで死んでもらいます」
彼女は、シエル・ウィルド
黒い羽を持つ天使族の少女だ