ケース2「バストダウン②」
「はっ?なんでだ?」
僕の返答が気に入らなかったのか、金子さんは殺意の波動を滲ませていた。いかん、確か金子さんは家が空手道場をやっていたはずだ。リアルファイトともなればキングオブインドアの僕は瞬殺されていまうだろう。
だが脅しには屈さない。僕は自分の信念を曲げるつもりはない。
「お、親から貰った体を弄るのは・・・良くないかと。」
「君は散々と薬を作って人体実験をしているそうじゃないか。今更何を言っている?」
おぉ、正論だ。正論は暴力に似ている。それを言われたら、もう何も言えない。が、何とか言わなければ。
「か、金子さんは何で胸を縮めたいんですか?」
とりあえず話を伸ばしてみよう。そしたら有耶無耶になるかもしれん。
「うむ、そうだな。理由ぐらいは話しておかなければなるまい。この胸には前々から不自由していた。サラシを巻いて胸を潰さないと思いっきり走れないし、胸の谷間には汗疹が出来るし、色々大変だったがそれでも何とか頑張っていた。けれど先刻、私の敬愛する風紀委員長からこう言われたのだ。『お前の乳が男子達の風紀を乱す』と。」
男子の風紀を乱すか、言い得て妙だな。そりゃ、こんな素晴らしいもの見せられて平静を装える男が何人居ようか?風紀も乱れて何の疑問もない。
「風紀委員長曰く、私は男共のオカズらしいのだ。私には意味が分からんが、お前にはどういう意味だか分かるか?」
「いえ、全く何のことだか分かりませんね。」
そりゃ夜の営みに使ってるに決まってる。ちなみに僕も・・・いや何も言うまい。
「理由は言った。それじゃ、薬をくれ。断ることは許さん。」
凄い圧力だ。これではチキンの僕は断ることは出来ない。二度目の「だが断る」は出来そうにない。
「そ、そんな薬は今は無いので、また後日来てもらえますか?それまでに作っておきますから。」
「えっ、そんな簡単に薬が出来るものなのか?」
「出来るかもしれないし、出来ないかもしれません。まぁ、期待しないで待っててください。」
「頼むぞ。」
それだけ言うと、やっと金子さんは帰ってくれた。ふぅ、これで科学部に平穏が戻った。
「本当に作るんですか?胸を縮める薬。」
御影君がそう聞いてきたので、僕はニッコリ笑顔でこう答えた。
「当たり前じゃないか。」
次回に続く