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Sun     ~不思議な相談窓口~  作者: 一ノ瀬桔梗
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第ニ章  後悔しないように (4)



「ここがお店。ぐっすり寝てたから、起こすのもかわいそうでさ。寝かしといたんだよ?」


ああ、家出して、この人に救いたいって言われて、車に乗って、寝ちゃったんだ・・・


「・・・すみません。」

「いいんだよ。あ、自己紹介がまだだったね」

そういえば僕は名乗ったけど、この女の人の名前は知らなかったことに今更気がついた。

「私はエレナ。よろしくね」

「エレナさん、よろしくお願いします」

僕は頭を下げる。


「宇治くん、家出してきたんだよね?」

「はい」

「今日帰るの?」

「・・・帰りません」

「今日泊る所は?」

「・・・」

「ないのね」

「・・・はい」

寝るところかがないからって、ここに泊めてほしいなんて言えなかった。

「なら、今日はここに泊っていくといいわ。このベッド使っていいからね」

「いいんですか?」

「いいよ。だけど、ご両親、心配しない?」

「大丈夫です。親には友達とお泊り会って言っときましたから」

「で、友達は?」

「嘘です。友達はいません。」

「そっか」 


この人は、友達のことについては何も触れなかった。

この人、これ以上聞いてほしくないってわかってるんだ。


「で、今日は何があって家出したの?」


どこから話そう?

話していいのか、こんな愚痴。

言わなくても、寝る場所はできた。

でも、このままじゃ帰っても何も変わらない。

だからここに来たんだ。


「僕、高校に行かないって親に言いました。そしたら、行けって言われて、少し喧嘩して」

「そっか。質問、していっていいかな?」

「もちろんです」


これだけしか言ってないから、聞きたいことだってあるよだろう。

僕はそう思った。


「どうして高校に行かないことに決めたの?」


この言葉がまさか僕に涙を流させるなんて思ってなかった。


「・・・お父さん、仕事、クビにされて。生活が、苦しくなって。でも、親は僕に気づかれたくなかったみたいで、朝はお父さん仕事に行くし、お母さんも仕事頑張ってって言うし、お弁当もいつも通りだったんです。でも。ある日の夜、聞いちゃったんです。お母さんがお父さんに『仕事見つかった?』って聞いてるとこ」

「・・・」

「お父さんの後つけてみたら、お父さんはいろんなところに紙、渡しに行ってて、お母さんは仕事を始めた。僕は少しでも力になれたらって、自分のもの売ったり、安いスーパーで買い物したりして、みんなのご飯作ってみんなが、食べれるようにしたのに・・・」


言葉が続かない。

呼吸を整える。


「なのに、誰も食べてくれなかった。全部、次の日の僕のお弁当になってた・・・・・」


涙が止まらない。

泣いちゃダメ、泣いちゃ、怒られてちゃう。

そう思うのに、なのに、なんで、止まんないのかな・・・


「そっか。今まで、よく頑張ったね」

エレナさんは僕の背中をさすってくれた。


「・・・僕、高校の学費にお金使うなら、みんなで普通のご飯が食べたい。お母さんもお父さんもすごく痩せたんです。だから、高校行かないって言ったのに、それでも行きなさいって・・・」

「今まで、ほんとによく考えたね。泣くのも我慢してたでしょ?ここには人があまりいないから、たくさん、泣いていいんだよ」


その言葉が少し止まっいた涙を止まらなくした。

僕は涙が枯れるまで泣いた。


「もう、大丈夫?」

「はい」


僕は結局30分泣いてた。


「宇治くん、成績はいくつあるの?」

「五段階評価九科目で40はあります」

「すごいね」

「すごくないです」

「高校、お金があったら、行きたい?」


行きたいのかな?今まで行くのが普通だと思ってたけど、確かに義務教育ではないから、行かなくてもいいんだよな。


「・・・わかりません。行くのが当たり前だと思ってましたから」

「行きたくない?」

「楽しくなさそうなんですよ・・・高校の楽しいとこ、教えてください」


そういうと、エレナさんは困った顔をして、言った。


「ごめんなさい。私にもわからない」

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