第ニ章 後悔しないように (1)
「僕、高校にはいかない」
両親は驚きと怒りが混じったような顔をした。
「なぜだ?」
「だって、うちにそんなお金ないから。僕も働いて、少しでも稼げば生活も楽になるでしょ」
「お金なんて子供が心配するようなことじゃ・・・」
「・・・心配すんなって?」
その言葉は、今日の言葉の中で一番許しがたい言葉だった。
「無理だよ、そんなの!僕は一日三食食べてるけど、お母さんとお父さんがご飯一日三食食べてるの、僕、最近見てないよ」
「!」
「一日三食食べないといけません、って学校でも習ってる。お母さんとお父さんは最近元気もなくなってるよね?だんだん痩せていってるよね?」
「・・・」
「そんなに生活が苦しいのに、僕が高校に行ったら、どうなる?」
「・・・どうもこうもない。とりあえず、高校には行きなさい」
「どうして?!」
「・・・最近は大学まで行くのが普通だからだ」
『普通』
ああ、そっか。
お父さんもお母さんも、僕に『普通』の人生を歩んでほしいんだ。
だから、
僕に高校へ行けと。お金のことも、家族のことも、心配なんてしないで、学んで来いと、言うんだ。
・・・もう、疲れた
僕はリビングから自分の部屋に戻る。
家出、しよ。
部屋の中から一番多く入りそうな鞄を取り出して、服とスマホの充電コードを入れた。
スマホの充電を確認して、ズボンのポケットの入れる。
・・・よし。
荷物をもってリビングに行った。
「・・・どこか、行くのか?」
声をかけてきたのはお父さんだった。
その声で気が付いたのか、お母さんも僕を見る。
「うん。クラスメイトの男子でお泊り会」
「それなら、ちゃんと泊るお家の方に挨拶するのよ」
「・・・うん。行ってきます」
「いってらっしゃい」
僕は家を出ることに成功した。
・・・それはいいけど、僕、どこ行く?
僕には友達がいない。SNS上の友達もいない。SNSはやったことがない。
・・・でも、寝るところないと困るよな。
あ、いっそ、僕が死ねばいいとかある?
僕が死んだら保険金入るとか。
よくドラマとかで保険金目当ての殺人とか・・・って、自殺で保険金発生するのかな?
うーん。
とりあえず、何をするにもスマホが使えないと困るよな。よし、Wi-FIの使えるところに行こう!
僕は家から徒歩二十分の住宅街に来た。
・・・よし、Wi-FI使えた!
早速ネットに接続する。
・・・何検索しようか?
考えて、一旦電話帳を開いてみることにした。
・・・うわ、友達、誰もいない。
小学校の時の人とかここに登録されてるかもって思ったのに。
ネットに戻る
やっぱり『自殺・保険金』とかかな。
・・・いや、こういうの、スマホ自体が壊れても、携帯会社の方にもデータが残ってたら、警察にすぐ調べられちゃうんだよね。
僕は悩んだ結果『一人・悩んでる・話したい・死にたい』と検索する。
何してんだろうな。こんなの、何も引っかからないって・・・!
引っかかった