第一章 私にも・・・ (3)
私達は車に乗った。
「エレナ様、準備はできましたか?」
その声を聞いて、私は手に持っていたアイマスクをつける。
「準備、できたよ」
「はい。では、海へ行きます。着いたら声をかけますので、それまではご自由になさってください」
「わかってるわ」
私はふと、過去を振り返ることにした。
初めて仕事を受けた時、メリーが運転できることを知った。私はまだ15歳だから運転はもちろんできなくて、困ってたところに、メリーが『私が運転しましょうか?』と言ってきたのだ。始めは、驚いたし、ロボットが運転できると知られたらどうしょう?という感情もあったけど、任せることにした。
それには、理由があった。
始めて、ここに来たとき、メリーに私を助けた人からの伝言を伝えられた。
『ここがどこなのか、君が知ることを禁止する。よって、買い物はロボットに任せろ。外出すること自体は止めない。すぐそこの海は自由に行ってもらって構わない。が、その他の場所に行くときは、ロボットに頼りなさい。連れて行ってくれるでしょう。ただし、必ず移動中はアイマスクをすること』
それから私は海以外のどこに行くにもアイマスクをしている。
そんなことを振り返っていると、すぐに
「着きました」と声がした。
「わかった。あれの準備、して」
アイマスクを取る。
「はい。エレナ様は国山くんを探してください」
「わかってる」
車から降りると目の前が海だった。
見渡すと、一人の少年がいた。
「こんにちは、国山くん?」
「はい!」
「ここから、車に乗ってもらうけど、大丈夫?」
「怖いけど・・・嘘は、ついてないんですよね?」
車というのはやはり怖い。
決してそう思っていない訳では無い。
でも、
「ええ」
そう私が答えると、
「大丈夫です」
と相手は言うのだった。
少年を車に乗せる。
私はまだ、アイマスクはつけられない。
「あの、この車、とても座り心地がいいです!」
「そう。ありがとう」
「あと、この音、電話でも流れてましたよね~。なんか、眠くなってきました」
「疲れてるのよ。寝て大丈夫」
「はい、すみません」
国山くんは、すぐに寝てしまった。
疲れと効果のダブルパンチには勝てなかったらしい。
国山くんがしっかり寝ていることを確認して、私はアイマスクをつけた。
「メリー」
「はい」
車が動き出した。
「着きました」
「メリー、国山くん、頼んだ。」
「はい」
メリーの返事を聞いて、私はアイマスクを取って、家に入る。
ベッドを整えていると、メリーが国山くんを連れてきたので、ベッドに寝かせた。
ムクッ
「ここは・・・」
「あ、起きたね。ずっと寝てたんだよ。ストレス、溜まってたんだね」
「えっと・・・ごめんなさい。」
「自己紹介がまだだったね。私はエレナ。よろしくね」
「よろしくお願いします。あ、僕、寝すぎちゃった・・・。あと、時間、どれだけありますか?」
「あと、2時間半くらいかな?」
「良かった、です」
そこまで話して、本題に入る。
「今日は学校、サボったの?」
まず、今日は平日だったことを考えて、質問してみる。
「・・・はい。もともと、今日は午前授業だったので、あと2時間半後からは塾に行くんです」
「いつもは行ってるの?」
学校に行けない子も多いから、先に聞いておいたほうがいいと思って、聞いてみた。
「はい。でも、今日はだめでした。今日は進路の紙の提出日で、何も書かないで提出したら親に連絡がいっちゃうので・・・」
あれ・・・か。
何ヶ月前に私の鞄の中にもあったな。
「たしかに、行きたくないよね」
「はい。て、店長さんもあれ、出したことあるんですか?」
「あるよ。私、まだ十代だからね」
「そうなんですか!」
「うん。私もあの紙、好きじゃなかったよ」
「僕、あの紙、親に出せなくて、真っ白なんです」
「わかるよ。出すに出せないよね」
「僕は、普通に生きていけたらいいんです。普通に学生して、社会人してればいいんです。肩書は何もいりません。だから、どこに行きたいとか何もなくて、とりあえず、高校に行ければそれでいいんです」
そうだよね。
私も、そうだった。
今でも、それは変わらない。
でも、少しだけ変わったこともある。
それに気づかせるためには・・・
「そっか。なら、親が言う高校行ったら、高校生になれるじゃん」
国山くんは凄くショックを受けたようだった。