第三章 選択肢は一つじゃない (2)
あれから何時間経っただろう。
私は独り部屋を出て、鍵を閉めてリビングに行く。
時間は午前10時だった。
母は、もういなかった。
仕事に行っているだろう。
親はいつも家にいない。
朝6時から9時までは父も母も家にいる。
でも、私達は幸せだった。
仕事のない日は、
母は私と料理をしたり、買い物に行ったりしてくれた。
父は一緒にテレビを見てくれたりボードゲームで遊んでくれた。
なのに、
学校にいけなくなってから、休みの日も遊んでくれない。
私の家族の幸せを、私が壊した気がする。
私のせいで、壊れた気がする。
ああ、もう、消えたいな。
そう思ってリビングからお菓子を一袋持って部屋に戻り、ベットの上にお菓子を置いて、かわりに私は床に落ちている鏡の破片を持つ。
強く、強く、握りしめる。
すると皮膚が切れて、血が流れる。
こんなことじゃ、私の存在は消えない。
でも、心の痛みは少しだけ消える。
今日は何故かいつもより飽きるのが早くて、傷はとても浅く、すぐに血は止まった。
私はスマホを開いた。
ネット検索をかける
『消えたい・一人・助けて』
そう検索をかけてから、あー、何やってるんだろうって思った。
ラインじゃない。
誰かに届くわけでもない。
検索結果なんて、何もない。
なのに、
そう思ったのに、
検索結果は、一件だけあった。
開いてみると、『Sun』と一番上に書いてあって、下には電話番号しか書かれていなかった。
電話してってことかな。
電話相談なら、よく学校でチラシとかもらうやつと同じなのだろうか。
『こんなのに電話するなんて、どんなやつなんだろうね~』
『そうだね~』
『メンタル大豆?』
『あははは!!!』
過去の友達との会話が蘇る。
過去にバカにしていた人間に、私はなってしまった。
私は電話をかけた。
すぐに繋がったと想ったけれど、
聞こえてきたのは『こちら、留守番電話サービスです』というアナウンスだった。
留守番電話ってことは、人、いないんだなー。
メッセージ残すほどのものでもない。
だから、電話を切ろうとした。
『名前、学年、用件をお話ください』
あれ、こういう時って『発信音のあとに・・・』って言うはずなのに、そのアナウンスがなかった。
もしかしたら、
聞いてくれるつもりなんじゃないだろうか。
現在人がいなくても、戻ってきたときに私に折返しの電話をしてくれるんじゃないか。
こういう話は、対面では話しにくい。
だから、
私は話すことにした。




