第二章 後悔しないように (6)
「そんなんじゃないです!」
「どうして?好きじゃなきゃ、家族のために働くなんてできないと思うけど?」
「僕は、僕のせいで誰かの人生を狂わせたくないだけです」
もし、僕が高校に行って、バイトするとしても、両親が苦しんでる姿見て、後悔するのが怖い。
高校行かずに、働いてたら、もっと元気だったのかもなんて思ったら、苦しすぎて生きていけそうにない。
「そっか、優しいね」
「優しくないです」
「宇治くん、成績は?」
「五段階評価九科目で38」
「でも、五段階評価九科目で、38あるなら、どっか推薦とかで行けない?低レベルの高校なら、特待生とか、取れるんじゃない?」
急に成績の話になったからなんのことかと思えば、特待の話か・・・
「無・・・無理ですよ!通知表は良くても、模試とかになると点が取れないんです!」
「別にテストって言ってないよ。面接とか小論文とか」
「なおさら無理です!僕は行きません!」
「じゃあさ、高校いかないことにしてさ、後で両親のせいにしないって誓える?」
「・・・」
「まだ、こたえなくていいよ。帰るときに、教えてほしいな」
「はい」
今、高校にいかないっていう判断をして、自分は後悔しないと思う。でも、後悔しそうになったときに、他人のせいにするかもしれない。
「ね、お腹空いてない?おやつ、食べよ?」
「あの・・・もう夜ですけど?」
「でも、食べようよ〜。美味しいよ、これ」
話していたらあっという間に夜になっていて、何故かお菓子を食べることになった。
お菓子は、普通にスーパーに売ってるもので、特別変わったものではなかったけど、とても美味しかった。
「それにしても、エレナさんって、何者なんですか?」
僕は気になっていたことを聞いた。
「うーん。高校に行くのやめた人?」
「・・・大丈夫だったんですか?」
「何が?」
「親とか友達とか」
「うん。友達はいなかったし、私が親から逃げてきたから、大丈夫」
エレナさんは、また困ったような、苦しいような、顔をして言った。
「そう、なんですか」
「うん。だから、私は宇治くん、かっこいいと思うな。自分で両親に話もできたし、助けてって、私のところに来た。それだけでも、すごいことなんだよ!」
「すごくないですよ」
「だから、ここに来たからには、なにか来る前と変わっててほしいんだ。今日は、なんの心配もなく、ゆっくりぐっすり寝て、明日からの生きるエネルギー、ためてね」
「はい!」
僕はそう言われて、すぐに布団に入った。
疲れていたのか、すぐ寝てしまった。
いつもは、全然寝れなくて、平均3時間睡眠なのに。
安心するとこんなに寝れるんだ。
そんなことを思った。




