第ニ章 後悔しないように (5)
「ごめんなさい。私にもわからない」
エレナさんの困った顔を見て、僕は焦った。
「いえ、僕も、余計なこと言ってすみません」
「私はね、高校、行ってないんだ」
「え!」
急な一言に驚く。
こんなにしっかりしてる人が、中卒?
確かに十代って言ってたけど・・・
でも、この人に、意見、聞かせてもらおう。
「エレナさんは、僕の意見、どう思いますか?」
「私は悪くないと思う。」
エレナさんは僕の意見を否定しなかった。
「私、今は、両親側の思いも少し理解できるようにはなったけど、昔は何も理解もしてなかったからね。自分のことしか考えてなかったから。自分で決めて自分が納得できたらいいと思う」
その意見を聞いて、僕は決めた。
「なら、僕は、高校にはいかないことにしてます」
「でもね、お母さんもお父さんも、高校に行ってほしいんだよ」
「何でだと思いますか?」
「中卒の人って、今、あんまりいないよね。大学まで、行って普通みたいになってるでしょ?」
「・・・そうですね」
「だから、お母さんとお父さんは、少し世間体、気にしてるんだと思うな」
「そんなの、気にしなくていいのに」
「でもね、ご両親は自分たちの今後のことも考えて言ってると思う。だって、子供が中卒の人、ていうレッテル貼られちゃうんだよ?」
「そんなの、あの人たちの事じゃん。僕には関係ない」
「確かにね。でも、宇治くんもそうだよ」
「え?」
どういう意味だろうか?
「宇治くんも中卒っていうくくりにまとめられる。そうなるとね、就職とか困るよ。」
そんなこと、わかってる。
「そんなの、自分で決めたなら、そうするしかないですよ。何とか生きれたらいいんです」
「そう思ってるなら、お母さんとお父さんに、君の本当の思い、伝えてきなよ。私に話したように。心配だって、大好きだって」
大好き・・・・




