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楽をしたい僕と楽しみたい君

作者: 日真 陣

青い空、雲一つない空よりは僕は少し雲がある方が好きだ。

ああ、今日はいい風が吹く。

こんなにも世界はすがすがしくて人間の心はちっともさわやかにはならない。

人の心は常によどみ、一瞬だけ見える希望に惑わされる。

「ああ、もう死んで楽になりたい。」

僕の心情を表すのにこれほど適した言葉はないだろう。

頑張っても楽しいのは一瞬、苦しさはいつでも僕の友達だ。

いつでもそばにいて、いつも僕と遊んでくれる。

寂しくはないけど楽しくもない。

「僕はまだ生きていたい。」

ゴールは死、早く楽になりたくて早く楽になりたくなる。

君はそう言う。

でも僕は生きていたい。

苦しさはいつでもそばにいるけど楽しさがそばにいないわけではない。

たぶん。

「僕は辛いのは嫌いだ。」

「僕も辛いのは嫌いだ。」

「僕は楽しいことは嫌いじゃない。」

「僕は楽しいことが大好きだ。」

僕たちの意見はここで食い違うことはない。

でも根本的に食い違う。

「僕はもう疲れた、楽しさを目指して頑張れる気力がもうない。」

僕は社会にもまれて疲れ切っている。

頑張っても頑張っても頑張らなくちゃいけない。

ゴールはない。

でもゴールからは逃げないといけない。

だって僕自身がゴールから逃げたいと思っているから。

「つまり君は生きていたいんだろう?」

僕からしてみればそれはは生きていたいという意思表示に他ならないと思う。

だってゴールをしてしまえば楽しくはないのだから。

ゴールをした後がもしあるのであれば僕の人生を振り返って少しは楽しめるかもしれない。

だけど僕はまだ楽しんでいたい。

「でも僕はもう頑張りたくない。」

「君の気持ちも分からなくはない。」

だって頑張っても頑張っても頑張らなきゃいけないし、頑張っても頑張っても楽しくなれるとは限らない。

頑張った果てに頑張らなきゃいけないという結果ばかりが残るのなら僕はもう頑張ろうという思いが生まれない。

「君はどうして僕を否定するの?」

僕は僕のことを否定する君のことが理解できない。

僕のことをよく知っていて、僕がどんな思いをしているのかを知っているのに君は僕の意見を否定する。

僕と君はそんなに意見が違うようにも感じられないのに、何で結論だけは変わってしまうんだろうか?

「僕は君に生きていてほしい。」

僕は君が生きていないと楽しくない。

僕は君がいるからこそこの世界を楽しむことが出来る。

君が辛いのは知っている。

でもそんなことはどうでもよくはないけどどうでもいい。

僕が君に生きてほしいという考えには君の辛さなんて関係がないからね。

「君は我が儘だ。」

僕の気持ちを知りながら、それでも自分が楽しくなくなってしまうという理由だけで僕がゴールをするのをやめさせようとしてくる。

君は我が儘で傲慢で僕の気持ちを無視してくるけど、たぶん優しい。

「僕は君が嫌いだ。」

君は頑張りすぎで楽しいことを感じにくくなってしまっている。

楽しさが全くないなんてことはないけど楽しさが辛さに紛れて、その楽しさを辛さに交えてしまっている。

君は鈍感になってしまった。

だから僕は君が嫌いだ。

「僕も君が嫌いだ。」

君はいつも楽しんでいてがんばっていたとしてもそこまで辛そうには見えない。

辛い思いを楽しいと自己催眠をかけているかのようで少し悲しい。

君は辛さに気が付けない。

君は鈍感になってしまった。

だから僕も君が嫌いだ。

「君は人生の楽しさを忘れてしまっている。」

「君こそ社会の辛さを忘れてしまっている。」

僕にとって社会は生きるための命綱。

社会がないと僕はたぶん死んでしまうし、社会は僕に安心をくれる。

社会は僕にとって楔。

社会は僕の楽しさを制限し、僕に我慢を覚えさせようとしてくる。

僕は僕が楽しい人生を送るために君の死を許さない。

僕は僕が辛い思いをしないように楽をいま求める。

「「僕は君のためを想っている。」」

僕は僕が生きるために僕の想いを否定し、僕は僕が辛くならないように僕を楽な方へ導きたい。

僕は君で君は僕だ。

きっとこの話し合いは僕しか知らないから君以外誰も僕がこんな思いでいることを知らない。

僕は生きていたい!

君の言う通りだ!

知っているよ、僕ももう楽になりたい。

君の言う通りだ。

君の想いが僕にとって間違った想いではないのは僕が僕であるが故に知っている。

君の想いが僕の本心であるのも僕が僕であるが故に知っている。

僕は死にたくないし、僕は死にたい。

そんなギリギリの綱引きのような思いで今日も僕の心は摩耗する。

誰かに助けを求めたい。

でも僕はまだ頑張れる。

世界は好きだが社会は嫌いだ。

僕はこの世界に生きていたくて、社会を滅ぼしたい。

たぶんそんなところだろう。

僕は僕に対して厳しくあらねばならない。

僕が僕を甘やかすのは簡単だ。

ただ思うがままに楽を求めればいい。

だからこそ誰かに僕を甘やかしてほしいし、僕を厳しい社会へと送り出して欲しい。

そうしたらもう一人じゃない。

僕と君とあなたで僕を生きさせるのだ。

それなら僕はもうたぶん楽を選ばないだろう。


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