初めての配達っつ!Re:345円と、中華と、俺。
私:48歳。バツイチ。中年ビギナーライダー
装備:ウバッグ緑(新色)、原付(納車済)、骨伝導イヤホン(カッコだけ)
ステータス:アプリDL済み/心拍数MAX
ついにこの日が来た。
アプリを立ち上げると、地図上ににじむオレンジのシミ。
「あれが……ホットスポットってやつか。」
緊張で指が震える中、画面の「出発」ボタンをタップ──
……
自撮りミッション、発動。
カメラが起動し、
画面に映る自分の顔(+ヘルメット)
「うわ…俺、こんな顔してんの…?」
アングルを何度も調整し、
顔の上にオレンジの丸が合うように必死。
もはやRPGのボス戦より難しい。
なんとか認証を通過し、出発。
そして、ついに。
「チロロン♪」
アプリから通知音が鳴る。
キタ!初オーダー!
場所は──中華料理屋「福龍閣」。
……あそこ、駅の近くのあの店だ。
てことは、配達先もワンチャン近いかも?
バイクを走らせ、到着。
お店のおばちゃんが出てくる。
「番号は?」
固まる俺。
「……えっと、えっと……初めてなんです」
おばちゃん、優しい。
天使。
画面を見せると「あ〜これね!」と笑ってくれる。
袋を手渡され、「がんばってね〜」と送り出される。
ちょっと泣きそうになる。
中華屋のおばちゃん、推し決定。
目的地は軽量鉄骨アパート。
表札に貼られた名前、ピンポンを押すと、
出てきたのは若い男。
「あっす」
これだけ。
アプリで「配達完了」をタップ。
──表示された金額。
345円。
「……っしゃあ!!」
初報酬。涙の345円。
時給換算すればゴミかもしれんが、
この汗と感動にはプライスレス。
アプリのカウントが「1/10」になった。
なんか、RPGのサブクエスト感あってワクワクする。
今日はこの1回で終わりにしよう。
疲れた。でも、めっちゃ楽しかった。
家に帰って缶ビールを開ける。
味が違う。これは勝利の味。
「俺……社会に、復帰してるかもしれん……」
ウバッグの中でチャーハンが踊る!?
銀色の救世主登場!
『銀色の解決策っつ!Re:スープを守るために』