登録したっつ!Re:秒でヒーローになれるわけねぇ
私:48歳。バツイチ。無職(自由業って言ってるけど収入ゼロ)
職歴:社畜25年。趣味:アニメ、ゲーム、ざる蕎麦。
今、人生のログイン画面に立っている。
ざる蕎麦を片手に帰宅した俺は、
さっそくパソコンを起動した。
ウーバー配達員――
さっきのあの黒い箱の男に憧れて、
俺もあっち側の人間になろうと決めた。
パソコンの電源ボタンを押してから、すでに3分が経過。
画面にはまだ、ぐるぐる回る青い輪っか。
「おい、起きろ!てめぇは社畜時代の相棒だろうが!」
無言のWindowsに叫びながら、無意味にマウスをカチカチ。
ようやくブラウザが立ち上がり、
検索バーに打ち込む。
「ウーバーイーツ 配達 登録」
一番上のリンクをクリック。
サイトが開く。
「ウーバーイーツ配達パートナーになる」
──この瞬間、俺の中のBGMは完全にファンファーレだった。
だが、その後の展開は、
ファンファーレどころか、ビニール袋のこすれる音レベルの地味さ。
登録フォームに名前、住所、免許証、顔写真……
思ってたより、めっちゃ打たされる。
どこが「サクッと」だよ。サクサク詐欺か。
しかも、「承認までに数日かかることがあります」
の一文で現実に戻される。
「いや、今すぐ配達して、ヒーローになりたいんですけど?」
だがネットの海は冷たい。誰も応えてはくれない。
仕方なく、
あのざる蕎麦を再び電子レンジにかけ直し(本末転倒)、
ふて寝しようと思ったとき。
ピコーン。
ウーバーからのメール。
タイトル:「登録完了のお知らせ」
「えっ、もう!?」
人生、なぜかこういうところだけは展開が早い。
ということで、
俺は正式に、ウーバー配達員に“仮”ジョインした。
まだ何もしてないけど、
心の中ではバイクのエンジン音が鳴り響いている。
「さて、次は“ウバッグ”ってやつを装備しなきゃな…」
黒い箱を背負う俺の未来が、今、始まろうとしていた。
届いたぞ、ウバッグ!
緑だぞ、新色だぞ!
そして、俺は廊下で転んだ──
『ウバッグっつ!Re:箱に殺されかけた話』