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うばっつ!〜ある中年ウーバー配達員の物語〜  作者: カトーSOS


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19/22

娘の恋人と飯を食ったっつ!

娘の恋人と食事をすることになった。

 外食だと気を遣うので、近所のファミレスにした。


 向こうは少し早く来ていて、

 立ち上がって、きちんと頭を下げた。


 ああ、これはもう、

 第一印象でだいたい決まったな、と思った。


 悪くない。

 いや、かなりいい。


 注文を終えてから、

 三人でドリンクバーに行った。

 こういう間が、妙に現代的だ。


 話してみると、

 よく喋るわけでもなく、

 無口すぎるわけでもない。


 変な自慢もしないし、

 娘の話をちゃんと聞いている。


 ――むぐぐっ。


 心の中で、

 確実にそう唸っていた。


 本当は一度、

 言ってみたかったんだ。


 「娘はやらん」


 ドラマみたいに。

 一回くらい。


 でも現実は違う。


 この青年を前にして、

 その台詞は、どう考えても出てこない。


 むしろ、

 こちらが言わないといけない。


 「どうぞ、お願いします」


 いや、

 「もらってやってください」


 いやいや、

 「娘をよろしくお願いします」


 全部、

 負けた気がする。


 食事が終わる頃には、

 負けを認めていた。


 娘は楽しそうで、

 青年は終始、姿勢が崩れなかった。


 店を出て、

 別れるときも、

 きちんと頭を下げた。


 その背中を見ながら、

 俺は思った。


 ――ああ、これはもう、

 俺の出番じゃないな。


 帰り道、

 一人で歩きながら、

 少しだけ寂しくて、

 でも、不思議と悪くなかった。


 言えなかった台詞が、

 胸の中に残っている。


 「娘はやらん」


 まあいい。

 一度も言えなかった父親人生も、

 それはそれで、俺らしい。


 家に帰って、

 冷蔵庫のビールを開けた。


 今日は、

 よくやったと思う。


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