三眼の天使
天界と呼ばれる神の住む地で、神と三つ目の天使が話をしていた。
「君、ちょっくら下界に行って、神の教えを広めてきてよ。最近の人間、全然仲良くしないからさ。そろそろ、軌道修正しないとね。」
「はい! かしこまりました!」
「うん。いい返事だ。とりあえず、あと200年程度様子見して変わってなかったら洪水で全部押し流しちゃうから、頼んだよ」
「かしこまりました! 人間たちを改心させ、神様の手を煩わせることのないよう、粉骨砕身の覚悟で行ってまいります!」
天使は白い翼をばさりと広げ、下界へと降りて行った。
「やっぱり、三つ目君はまじめでいい子だな。彼なら、きっと人間たちを改心させることができるだろうな。じゃ、いっちょ観察するとしますか」
☆★
下界におりた天使は、空でビルの森となった街を遠くから眺めていた。以前下界に降りた時と比べると、まったく違う景色に天使はおどろいた。彼らは神の力を借りずにここまで発展したのか、と胸が熱くなった。天使はしばらく、空の上で地上を見ることにしたのだった。
「ん? なんだあれは?」
銀色に光る流線型の何かが音を置き去りにして天使の元へと迫る。
「な・・・?」
銀色に光る流線型の物体。つまりミサイルは、天使に見事命中し派手な爆発をした。天使はきりもみ回転をしながら、地上に真っ逆さまに落ちていった。
落下地点には迷彩服を着た兵士たちが天使を回収せんと待ち構えていて、落下後すぐに意識を失った天使に手錠と足かせをつけ、研究所へと運んでいった。
「・・・ここは?」
天使が目をさますと、ベッドの上で体はうつぶせに固定されていた。服は剥かれ、その美しい羽根を研究者らしき男が興味深げに触っていた。
「何をする! 私は、三眼の天使だぞ! 今すぐこんな無礼をやめろ!」
「君は言葉を話せるのか。不思議だ。実に不思議だ。そして、興味深い・・・」
科学者は天使の羽を一本一本むしり、筋肉の動きを観察した。
「やめろ! やめてくれ!」
天使は泣き叫んで、解放を懇願するが科学者がやめようとする気配は全くない。科学者は、とうとうすべての羽をむしり取り、天使はその美しい羽根を失ってしまった。
「面白い骨格に面白い筋肉。まさに天啓だ! 君の存在は人類を新たなステージへと押し上げるぞ!」
天使は生きたまま解剖された。その激痛たるや、生半可なものではない。天使は不死身なのだ。どのような攻め具を受けようと、死ぬことはできない。天使は、日々過激になる実験の中で自身の務めや誇り、更には意識を投げ出した。
彼らを救う者は、もう誰もいない。
リハビリ作です。