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SFC フォルミード

SFCのマイナーRPGをやってみた感想文です。

このソフトは、システム的には一世代前の平凡なRPGではありますが、なんといってもストーリーがSFCのRPGの中でもトップクラスの良作だと思いました。

王道な一本道のストーリーですが、ムービー演出などが無い分、容量的にドラクエのロトシリーズ3部作を一纏めにしたほどの長編ストーリーを一本のソフトに詰め込めたという点で、一本での完成度は非常に高い作品だと思います。

オープニング、エンディングでさえ一枚画の絵が無いという、これほど硬派な、まるで小説でもあるかのような演出は前出の『イース』シリーズ等とは対照的。ただ、作画が苦手という訳ではないのは明らかで、フィールド画面も戦闘画面の背景の書き込みもドラクエ6と遜色ないですし、敵キャラの書き込みもロマサガ3並み、SFCでは最高クラスのドット絵に仕上がっているように思えます。ただ、敵キャラの雰囲気がPCEのネクロマンサーの感じを踏襲しており、全体的に暗くて地味な印象なのがネックとなり、このソフトが一般に普及しなかったのではないかと思えます。

戦闘システムは漢字も使用した見やすいフォントであっても、選択コマンド自体は特殊攻撃も無いドラクエ2などとほぼ同じ選択項目のウインドウのため、単純で却って分かりやすく好感が持てる反面、戦闘の優位性などは完全にレベル依存で単調になる欠点というか旧世代的な古さを感じます。

また、全体攻撃などの有用な魔法も多くありますが、コマンド選択位置の記憶機能が無いため、その都度膨大な魔法の中から使う魔法を探して選択するという手間が生じ、Aボタン押しっぱなしで敵を一掃出来るというようなスムースな戦闘にはなりません。全体にエンカウント率は低いので、戦闘が苦になる事は無いのですが、一戦一戦じっくりと戦うような感じになるので、レベル上げなどしようと思うと結構な時間がかかると思います。ただ、それらの難点を一蹴出来るほど、やはりこのストーリーは優れているとは思います。

そのストーリーもオープニングの文字スクロールから伏線のオンパレードで全体の話もめちゃくちゃ長いので、伏線のネタバレも速攻でバラしながら端的にストーリーをまとめてみます。

まず、スタート地点の『現在』から、ちょうど200年前。この地方の各地に、どこからともなく魔物の群が押し寄せ、この地方は壊滅の危機を迎えていました。そんな中、『ピオニール』という一人の男と一人の剣士が魔物撃退の旅を始め、見事、魔王を打ち倒し、この国に平和を取り戻しました。やがてピオニールは人々から勇者と称えられ、その地方の王となりました。それから200年か経ち、ピオニール王国の建国200年記念祭を半年後に控えたこの年、再びどこからともなく魔物達が現れ始め、この国は危機に陥っています。

この時点がストーリーの始まりで、主人公はボスコという小さな村の少年です。

主人公の少年は、ピオニール王国の王子であるレザリオ・ピオニール(以下レザリオ)の幼なじみで、運動神経が抜群。城内の剣術道場で大人の兵士を打ち負かす程の剣術の素質を持っています。一方のレザリオ王子は勇者の家系であるにも関わらず、先祖代々勉強肌で剣術は全くダメな、主人公とは正反対のような少年です。

そんなある日、主人公は城に呼ばれ第14代ピオニール王 ハンデル・ピオニール(レザリオの父)に謁見します。王は最近現れた魔物によって退廃しつつある領内の地域を嘆いており、各地域が魔物によって荒らされてしまったために年貢も取り立てる事が出来ず城内も飢餓の危機にあると言います。

そんな中、息子であるレザリオが城の書庫を調べ200年前の資料を読み漁って、『魔物が湧き出す土地』がかつて存在した事を知り、「現在でもその土地を封印すれば魔物の出現を止められるかもしれない」との解決策を出したのだというのです。ただ現在、学者肌で非力なレザリオを護衛する兵団を賄うだけの食糧も用意できないような状況であるため、王子の親友であり剣の腕も立つ主人公一人が王子の旅に付き添って、これ以上無理だと思ったらすぐに城に引き返して王子の無謀な案を断念させてくれないかと頼まれます。

いくら王子と幼なじみとはいえ、国王から直接頼まれた事で主人公は喜んでその頼みを引き受け、レザリオのいる部屋に向かいます。主人公とレザリオは幼なじみのため、主人公は「お前、父ちゃんが心配してたぞ」 的なタメ語で話しかけますが、この時、レザリオは真剣に国民の安否を心配しており、その様子に主人公も真剣にレザリオ王子を護衛しようと心を入れ替えるというちょっとしたイベントが挟まれます。

ここからストーリーが始まりますが、城を出る前に城内の剣道場に立ち寄ると次の目的地について示唆するような会話が聞けます。「主人公やレザリオに剣の稽古をつけていたかつての師匠である女剣士グラナードは現在、魔物の脅威から故郷の村を守るため、生まれ故郷であるリベラという村に帰っている。彼女なら仲間になってくれるはずなので、まずはリベラ村に行ってグラナードを訪ねてみろ。」といった感じの情報が聞け、最初の目的地が分かります。とはいえ、この最初のリベラ村に向かう道中のごく最初の時点に於いても中盤以降に回収される幾つも伏線が存在します。まずは、初代ピオニールの墓石。なぜそこにあるのかは中盤以降に明らかになります。次に、城の南の海岸から見える小さな小島。かつてこの小島には修道院があって、陸地から橋も架かっていたという。最後に、主人公の実家に立ち寄った際に両親から受け取るペンダント。『200年前、主人公の祖先は、旅の途中だった勇者と剣士を一晩この家に泊めてあげた事があった。泊めてくれたお礼にと、剣士がその時身に着けていたこのペンダントを置いていった。』以来、先祖代々家宝として受け継がれてきたこのペンダントを主人公が受け取り、後にこのペンダントが物語の重要なアイテムとなったりします。

それらのイベントを通過しながら、最初の目的地であるリベラ村に着いても、いきなり分岐イベントがあり、村を出るまでに分岐は収束しますが、この村で起こるイベントは大きく二通りに分かれます。まず、リベラ村に入る手前で、イベントとして『どくサソリ』との戦闘があり、この戦闘後に必ず主人公が毒におかされた状態になります。そこに村の少女トゥリアが通りかかり、困り果てているレザリオに「早く隣のザントの村まで連れて行って治療したほうが良い。」と言い、「ここのリベラ村には入らない方が良い。」と告げます。そこにリベラの村人が通りかかると、トゥリアは走って逃げて行ってしまいました。

主人公がみるみるうちに重篤な状態になっていってしまっていたので、レザリオはトゥリアの忠告を無視して、通りかかったリベラ村の村人に助けを求めリベラ村に入ってしまいます。いずれにしても主人公達はリベラ村に入って女剣士グラナードに会う事が最初の目的でもあったので、リベラ村に入るのは必然の選択と云えます。

二日後、主人公が意識を取り戻したのはリベラ村の病院のベッドの上でした。病室には医者やレザリオがいます。主人公が意識を失っていたこの二日の間、レザリオはこのリベラ村でグラナードの元を訪ねましたが、彼女は不在で、その消息について聞き込みを行っていたとのことで、分かった事を主人公に話して聞かせます。まず、魔物が現れ始めて少し経った頃、この村の奥にある洞窟にダークエルフが住み着き、村の女達と子ども達を全員、洞窟の中にさらっていってしまったとのこと。そしてグラナードは、さらわれた者達を救出するためダークエルフの洞窟に入って行ったが、既に一ヶ月以上戻ってこないとのこと。

村の子どもや女たちは一人残らずダークエルフにさらわれてしまっているので、主人公達が村の入り口で会ったというトゥリアという少女は村の者ではないだろうし、幻か何かだったのではないかと医者が口を挟みます。さらに 「かつて王国一の剣の使い手と云われた女剣士グラナードでさえ戻ってこないダークエルフの洞窟に、私たち一般人は当然の事、君たちのような未熟な者も決して触れないほうがいい。命を粗末にしてはならない。」と忠告します。しかし、当然の事ながら主人公とレザリオは、村の子ども達とグラナードを救出すべく、その日のうちにこっそりと病院を抜け出しダークエルフの洞窟へ向かいます。

すると、ダークエルフの洞窟へと続く森の中に少女トゥリアが立っていて 「どうしてこの村に入ってしまったの?」 と悲しげな表情で言います。そして振り返ると主人公達の背後には武装した村人達が立っていて 、先ほどの医者が「やっと見つけたぞ。」と言います。

主人公達がトゥリアを見ると、トゥリアは 「そこの医者がダークエルフよ。そいつが村人達を操って村の子ども達や女たちをさらっているのよ」 と言います。一方の村人達は 「騙されてはいかん。そいつがダークエルフだ。そいつを退治すれば、さらわれた子ども達や女たちを解放出来る」 と言います。ここで、どちらを斬るか選択肢が出ます。ネタバレとなりますが、どちらを選んでも、トゥリアを斬れば村人達がダークエルフで、罪の無い少女を斬ってしまった事になり、村人達を斬ればトゥリアがダークエルフで、罪の無い村人達を惨殺してしまった事になり、どちらにしても後に正体を現したダークエルフを撃退して、最終的にどちらの選択をしてもその場にいる全員を殺してしまう結果に収束します。善も悪も全て殺した主人公とレザリオが洞窟に行くと、女剣士グラナードは鉄格子の牢に捕まっていたものの生きており、主人公達が救出します。しかし、故郷の村の惨状を知ったグラナードは嘆き苦しんで、主人公達の仲間にはなりません。グラナードは主人公達よりも圧倒的に強かったですが、やはりダークエルフの正体がトゥリアなのか村の医師なのか迷い、結局『誰も斬らない』事で皆を守ったためにダークエルフに捕まってしまったのです。それを主人公達は『全て斬って』解決した。

グラナードは村に残って死んでいった村人達(又はトゥリア)のために祈り続けると決意し、仲間にはなりませんが、主人公達の行動を恨む事は無く次の目的地への助言をしてくれます。グラナード曰く、「ピオニール城から遠くなる程、魔物が凶暴化している。今のあなた達の装備では強い魔物には太刀打ち出来ない。ここから西に行って大きな川を渡ると武器の生産で有名なバザルトという町があるから、そこに行って武器や防具を買い揃えなさい。」との事で、主人公達はリベラ村を後にし、バザルトに向かう。

しかし、バザルト地方の手前に流れる大きな川に架かる橋はバザルトの自警団が警備していて主人公達を通してくれない。そこでレザリオは自身が王子であると名乗るが 「それなら尚のこと通せません。お帰り下さい。」と言われてしまう。現在、川の向こう側は、こちら側とは比べ物にならないほど凶暴な魔物が現れ始めていて少人数で入るのは非常に危険だとの事。

どうしても橋を通してもらえないため、とりあえず主人公達は近くに宿を探して川沿いを歩く事になります。そして、しばらく川沿いに北上すると、二つ並んだ小さな村が見えてきます。まず、手前の村に入ると、そこは極貧の村。殆どの家は屋根や壁が崩れ落ちており、ボロボロの服を着た人達が道のあちこちに寝転がっており、「おなか空いたよぉ」という子どもの泣き声が響いています。そんな光景を見かねた主人公達は 「大丈夫ですか?」と声をかけるも、村人たちは皆、「ほっといてくれ」と言うばかり。奥に村長らしき老人がいたが、その老人も上の空で 「あと二日じゃ…」と、つぶやくばかり。

この村で宿は借りられそうになかったため主人公達はその村を出て、奥のもう一つの村へと向かう。すると奥の村は、もの凄い金持ちの村だった。村の家々は大理石の壁に金の窓枠がはめられ、ドアには宝石が散りばめられていた。通りを行き交う人々は金糸で編まれたコートを羽織い、金の腕輪を幾重にも着けている。広場には調理された肉や果物が山のように積まれていたが、もはや野良犬も飽きてそれらを食おうとしないような状態だった。

主人公達は、それらに驚きながらもとりあえず宿屋に行ってみると、宿屋の主人は 「あーあ、あと二日か。今のうちにタダで泊まって下さい。」 と言って浮かない表情を見せる。

その晩、主人公達はタダで豪華絢爛な宿屋に泊まり、翌朝、宿屋から出ると、町の人たちは皆一様に悲しい表情をしている。そこで昨日見た隣村の貧しい人たちの事を思い出した主人公は、村人の一人に 「これほど贅沢な暮らしをしているならば、隣村に施しはしないのか?」 と訪ねました。すると村人は「俺がそんな酷いことするわけないだろ!」 と怒ります。なぜ村人が怒ったのか、そのセリフの真意は後ほど分かります。

主人公達が、金持ちの村の中でも一層豪華な家に住む長老を尋ねると、やはり長老も哀しげな表情で 「この村の更に奥にある山に住む賢者様を訪ねてみるといい。」 と言われ、次の目的地が示されます。そこで主人公達は長老に言われた山を登り、その山の頂上にあった一軒の荒ら屋を訪ねてみると、そこにはこの世界で最も高名な大賢者 ウィップが住んでいました。

ウィップは10数年ほど前に修行の旅の末にこの山を訪れた際に、この山が気に入って家を建ててこの地に住み着きました。以来、大賢者ウィップがこの山に住んでいるとの噂を聞きつけた麓の村の住民達が悩み事や願い事の相談をしにウィップの元に参拝するようになりました。今、主人公達が通ってきた極貧の村と金持ちの村も、ウィップが山に来た当時はどちらも、ごく普通の隣り合った二つの村に過ぎませんでした。ただ、どちらの村もこれといった特産物も無い、どちらかというと貧しい村だったため、どちらの村人達の願いも 「世界一の金持ちになってみたい」 というような金欲ばかりでした。そこでウィップは双方の村人達と村長を呼び、ある説法を説きました。『一人が金持ちになる裏では、どこかの一人が貧しくならねばならない。それでも自分だけが幸せならそれで良いと思えるか? 幸せの裏で対となって苦しんでいる人々の気持ちを理解しようとする気があるならば、ここの全員に世界一の金持ちを経験させる事は出来るが、どうする?』

要は、隣り合った村同士で、世界一の金持ちと世界一の貧しさを一年毎に交互に入れ替えて、交互にその両方を経験するならば、賢者の力で世界一の金持ちになった体験をさせてやれないこともないという、一つの提案であった。ウィップの見立ててでは『どちらも一度づつ経験すれば懲りて元通り普通の暮らしに戻りたいと思うだろう』と考え、軽い気落ちで双方の村と契約を結んでしまった。しかし、ウィップの見立ては外れ、双方の村人達は『超金持ち』の暮らしに溺れてしまい、もう10年以上も極貧の一年に堪えて己の超金持ちの暮らしを満喫するサイクルを送るようになってしまった。更に、自分が金持ちの一年の内に隣村の住民を気にする事も減っていった。そこにはウィップの失敗もあり、ウィップは最初に『もし、元の生活に戻りたければ、金持ちの時点で隣村の貧しい住民に施しをすれば、自分も施しを受けた住民も魔法が解けて元の生活に戻れる』という脱出法を伝授してしまっていた。そのため、村人達は自分の愚かさよりも隣村の住民を気遣い、自分がこのサイクルから抜け出したら今は貧しい隣村の住民が翌年に金持ちになれないという事を気にして、誰もこのサイクルから抜け出せなくなってしまっていた。

大賢者ウィップは飄々としており 「これも村人達が自分で選択した道なので、このままで良い。私が彼らの生きる道を平凡な道に誘導する事はしない。」 と言います。しかし、ウィップにとっても、突然の魔物の襲来は予想外だったとして、二つの村のサイクルは放っておいて、魔物撲滅のために主人公達の旅に同行したいと言う。ここで大賢者ウィップが3人目の仲間になり、とりあえずウィップの家に一晩泊まって、翌朝、出発する。

二つの町まで戻ってみると、昨日まで大金持ちだった村は一夜にして極貧の村になっており、昨日まで貧乏だった村は宝石の敷石が敷かれた道に黄金のマスクを被った人が闊歩するほど一晩で大金持ちの村になっていた。

この大賢者ウィップ。最初から全ての魔法を習得しているFF4のテラみたいなキャラクターですが、仲間に加入した時点のLV7ではMPが18しかなく、MP不足で強力な魔法はほぼ使えない仕様になっています。ただ、魔法使用の画面で点灯していない影文字(MPが足りない)魔法を選んでも効果の説明は出るため、要は魔法の名称と効果を知るための一覧表を表示させるためのキャラなのかとも思います。

ウィップが同行すると川の橋を警備していた人達も 「大賢者ウィップが一緒なら心配ないだろう」と言って、あっさり橋を渡らせてくれます。この時点でのウィップは弱いですが。

この後は、しばらく王道なストーリーが続きます。武器の町バザルトでは武器の原料となる鋼の鉱山にヤマタノオロチが住み着いてしまい原料が採れず武器が作れない。そこで主人公達が鉱山に入りヤマタノオロチを倒して原料を調達し『鋼の剣』を作ってもらえる。次に黄金の鎧が眠るピラミッドを目指して南下するが、その途中に立ち寄った『塔の町 ビルヘン』には伏線がある。ビルヘンに入ると、いきなり初老の男が主人公達に近付いてきて 「あなた方は○○(主人公)さんとレザリオさんですか?」と聞かれ「そうだ。」と答えると、男は大喜びで町の奥に走って行ってしまう。主人公達が町の奥の大きな建物に入ると先ほどの男がいて 「いやぁ、先ほどは本当に失礼な事をしました。申し訳ない。」と謝られ、奥の部屋に案内されます。奥の部屋には沢山の人がいて、その場所は『始まりの塔』の歴史を研究する博物館だった。始まりの塔とはビルヘンの東にある塔の事で、200年前の魔王の根城。かつて勇者ピオニールがこの塔に登り、この塔で魔王を打ち倒した事で世界に平和が訪れピオニール王国の歴史が始まった、当に『始まりの塔』である。そして、その塔の歴史を守るビルヘン博物館の学者達は、塔の内部に勇者が刻んだとされる文字があるのを知っていた。その文字とは『王歴199年に来る ○○(主人公) 進め。レザリオ ウィップ 帰れ。』というものだった。学者達も半信半疑で賭けをしていたそうで、最初に喜んだのは主人公達が来る方に賭けた学者だった。しかし、なぜ200年前の勇者ピオニールが、この年にこの場所を訪れるのが分かったのかを調べるため、主人公達は学者の案内で塔に登ってみる。すると確かに塔の最上階、魔王の間の石壁に先述の文字が刻み込まれていた。そして、それを確認して表情を曇らせたレザリオとウィップ。200年も前の予言で、名指しで『帰れ』と言われ、ウィップは 「勇者は未来を知っていた。この予言には従うべきだ。」 と言って素直にここで離脱し来た道を引き返す。レザリオは悩んだが、「俺は○○(主人公)の足手纏いでしかないというのか!」と怒りだし、意地になって旅を続ける決断をする。

その後、主人公とレザリオは砂漠の町ヌエバに到達する。そして、ピラミッドに入って黄金の鎧を捜して使わせてもらう許可を得るため、ヌエバの神殿に住む砂漠の女王を訪ねる事となるが、ここにも重大な伏線がある。砂漠の過酷な環境には魔物も近寄らないため、砂漠地域の日常は普段と変わらない状況だったがヌエバという町は元来、荒くれ者や粗暴な男たちが集まって出来たようなすさんだ印象の町だった。しかし、神殿に住む『女王リトス』は気品があり、知性と理解力に長けた才女で、ピラミッドに入る事も黄金の鎧を使うことも承諾してくれた。その夜、神殿の客間に泊まらせてもらっていた主人公達の元に女王の妹サピロスが訪ねて来る。そして『女王が貴方に話しておきたい事があると言っています。女王の間まで行って下さい。』と言って、主人公一人を女王の間に向かわせます。

そこで、主人公は女王と初めての子作りを経験します。主人公は初体験のため動揺し、レザリオを気にして一度は拒否しますが、女王はレザリオには妹のサピロスとの子をもうけるためサピロスを客間に向かわせたと言い、レザリオも今サピロスと子作りの行為中だと聞かされ、主人公も女王リトスと子作りを始めます。

ヌエバの町には何故か昔から粗暴な男達しかおらず、砂漠の女王は代々、優れた素質を持った旅人との間に子をもうけて家系を繋いできたとのこと。旅人は女王が自ら見定めて素質を見極めるため、女王の見立てによって王子であるレザリオよりも主人公との子作りを選んだといった話が事の後に聞かされる。客間に戻った主人公はレザリオと顔を合わせるが、二人に会話は無く、各々のベッドに横になって画面が暗くなって翌朝になる。この辺りの演出は単純ながらSFCのゲームの中でも最高に大人向けな感じが漂っています。

その後、ピラミッドの内部で黄金の鎧をゲットして、いよいよレザリオが予測した『魔物が湧き出す穴』に向かいます。主人公達がその穴に辿り着くと、そこには小さな祠があって、入ってみると魔導師のような魔物が一人いました。思いのほかその魔導師は弱く、祠の外に逃げ出し、主人公達がその後を追います。すると魔導師は最後の力を振り絞り 謎の黒い球体を出現させます。すると画面が真っ黒になり、一瞬『全てが消えます』。

主人公が気が付くと、先ほどの魔導師の姿は無く、レザリオもいなくなっています。

主人公がレザリオの名を呼びながら周囲を捜し歩くと、いきなりとんでもなく強い敵に当たります。その敵に苦戦していると助けが入り、敵を倒した後に、助けてくれた謎の集団から避難するように言われ、その人達の船に乗り込みます。助けてくれた人達は海賊でした。しかし、海賊と言っても魔物が現れてからは、各地を回って魔物から逃げ遅れた人を捜して救済している正義感のある海賊達でした。海賊達に助けられた主人公は船の上で船長のサティールに会います。主人公はサティールに 「自分はピオニール城から王子の護衛で来た。ピオニール王国のレザリオ王子と、さっきの場所逸れてしまった。船を戻してくれないか?」と頼むも、サティールも他の海賊達も 「ピオニール王国など知らない」 と口を揃える。海賊達は嘘をついている感じでもなく、その様子に主人公は混乱し次の瞬間、激しい頭痛で意識を失って倒れてしまう。

主人公が目を覚ますと、そこは石造りの狭い部屋に置かれたベッドの上だった。そして、傍らには若い修道女がいた。主人公が飛び起きて 「ここはどこだ!」と言うと、修道女は 「いきなり大きな声を出さないで! 子ども達が恐がるでしょ!」 と主人公を叱る。そして、「サティール、なんでこんな奴を置いてったのよ、まったく。」と、つぶやく。そこは孤島に建つ孤児院だった。先に主人公を助けた海賊船の船長サティールは、魔物によって親を失った子ども達をこの孤児院に連れてきて保護していたのである。しかし、この孤児院に主人公ほど成長した青年を連れてきたのは今回が初めての事だという。この孤児院で子ども達の世話をしていたシスターのエルナは、既に成長している主人公をあまり良く思っていないようで、主人公には冷たくあたっていた。それを察した主人公は、すぐにこの孤児院を出てレザリオを捜しに行こうとする。主人公が出ていこうとすると、シスターエルナは少しだけ哀しそうな表情を見せたが、すぐに主人公を突き放すような事を言い、主人公は追い出されるように孤児院から出される。

孤児院がある孤島からは遠くに見える陸地へと長い橋が架けられており、主人公はその橋を渡って陸地へと渡った。すると、そこは見慣れたピオニール王国の景色が広がっていた。主人公は橋を渡りきって 「なんだ、やっぱりここはピオニール王国じゃないか」 と言うが、次の瞬間、愕然とする。ピオニール城が無い。 替わりにすぐ近くに見覚えの無い村がある。

途方に暮れた主人公は、とりあえず、一番近くに見えたその村まで行ってみたが、村の入口の門は固く閉ざされ、屈強そうな門番が立っていて、「魔物達が増えた今、不要なヨソ者のためにこの門を開くことは出来ない。」と言われ追い返されてしまう。そこで今度は自分の家のある村まで行ってみると、そこには主人公の見覚えのある場所に見覚えのある村がある。

その村には入れたが、村の家々の戸は先ほどの村と同じように全てが魔物に怯えて固く閉ざされている。主人公の家も戸は閉ざされていたが、家の中には人がいて 「頼む、魔物が寄ってくるから大きな音を立てないでくれ」という声が聞こえてきた。そこで主人公は、わざと大きな音を立てて戸を叩き 「すぐに俺を家に入れてくれ。さもないともっと大きな音を出すぞ。」 と言って、強引に戸を開けさせ家の中に入る。すると家の中は主人公が生まれ育った家とほぼ同じ。ただ、そこに住んでいたのは主人公の両親ではなく、エートスとルーエという見覚えのない夫婦でした。

まだ分からないことは多いですが、この辺りでプレイヤーもゲーム内の主人公も薄々気が付いている事でしょう。地形的に見て、先ほどの閉ざされた村は、ゲームスタート直後に訪れた『勇者の墓』があった付近。孤児院もスタート直後に沖に見えた小島。

主人公はエートスとルーエ夫妻に尋ねます。「南にある門で閉ざされた村に魔物を撃ち倒せるようなピオニールという勇敢な人が住んでいないか?」と。

すると、主人のエートスが 「ピオニールが勇敢だと?」と言って笑い出します。

エートス曰く、隣村のピオニールとは幼馴染みだが、ピオニールは勉強熱心な男だがひ弱でいつも同世代の者達に揶揄われており、それをいつも自分が助けてあげているとのこと。

エートスは主人公の祖先であり、その頃から腕っぷしは強かったようである。

主人公は一瞬『この世界はやはり、自分の知っている世界とは別の世界なのだろうか?』と考えるが、『違う世界ではなく、自分の知っている伝承通りにピオニールをこの世界で勇者にすれば過去は変わらない』と考え、ピオニールに会いに行く。

閉ざされた門を死守する門番も 「この村に住む友人のピオニールに会いに来た」 と告げると、渋々ながらも門を開けてくれて、この『イデアルの村』でピオニールに会い、ピオニールが仲間になる。ピオニールは噂通りの貧弱な青年で、イデアルの村でも笑い者になっている程だった。主人公とピオニールは自宅のあるボスコ村まで戻り、主人公の家に住むエートス夫妻は『幼馴染みの弱虫ピオニールが魔物を討伐する旅を始めたとは!』と言って大いに喜んで励ましてくれる。そして、その晩は家に泊めてくれて、もてなしを受けるのだが、その席でエートスが主人公の首に光るペンダントを見て 「あんた、リベラに行ったことあるのか?」と言われ、主人公は驚きます。『リベラ』は、かつて主人公とレザリオがダークエルフと村人達を殺してしまった『あの村』です。主人公が 「なぜそれを…、」 と言葉に詰まると、エートスは 「だって、そのペンダントの先に付いてるの、リベラの土産物で有名なリヴァイアサンの鱗だろ?リベラに行かなきゃ買えない物だから欲しがる人が結構多い人気の特産品だよ。しかもソレ、軽いくせに石より硬いから、それで盾とか作ったら最高だぞ。俺も欲しいって思ってんだよソレ。」 と陽気に話します。

翌朝、一晩の宿のお礼に主人公はそのペンダントをエートスに譲り、リベラの村に向かって歩き出した。そして、このペンダントが主人公の家で代々家宝として受け継がれていく事になる。

翌日、エートスの家を出て、リベラに向かって出発した主人公とピオニールは突然、道中でサティール海賊団の襲撃に遭います。なぜ一時は助けてくれた自分を襲うのかと主人公が尋ねると、船長サティールが涙ながらに 「シスターエルナが死んだ」 と言いました。

サティールが主人公を孤島の孤児院に預けた理由、それは、主人公が黄金の鎧や鋼の剣を身に着けており、万が一孤児院に魔物が来ても、大概の魔物くらいなら主人公が撃退出来るだろうと、守衛の意味で主人公を孤児院に運び込んだのだという。それを主人公はエルナや孤児達を見捨てて、あっさりと孤児院を出て行ってしまい、孤児院が魔物達に襲われ、子ども達を命懸けでかばってシスターエルナが死んでしまった。それに怒ってサティール率いる海賊団が主人公を追って報復しに来たのだった。しかし、サティールも魔物達が蔓延った今の状況において、人間同士で殺し合いをする事には躊躇いがあり、主人公を殺すには至らず。また、この事実を知って主人公の心にも大きな傷を負った事をも計らって、サティール海賊団は無言で去っていた。

やがて主人公達が辿り着いたリベラの町は、かつて主人公が訪れた小さな村と違って大変に発展した町でした。

リベラには城があって、その城には二人の王女がいました。その長女は容姿が醜く、王家の者達にも町の人々にも影で笑いものになっていました。しかし、その妹である次女は絶世の美女であり、町の人々も次女が次期の女王になることを望んでいました。

容姿の醜い長女はある日、城を抜け出し城下町に行きました。リベラの城下町に着いた主人公達もその時の姫とすれ違います。しかし、町の人々はその王女に誰も気が付かず、醜いその姫をせせら笑いました。姫がしばらく歩くと激しい雨が降り出し、足をとられた姫は道で転んで倒れてしまいました。しかし、町の人々は誰も助けてくれません。それどころか、転んだ醜い少女を町の人々は笑い、泥や石を投げ付けてからかう者さえありました。その様子を身に染みた姫は、岬にあった塔を目指して歩いて行きました。その古い塔に辿り着いた姫は、泣きながらその塔に登って行きました。何十階も細い階段を無心で登って行き、てっぺんの狭い部屋に辿り着いた姫は己の境遇を嘆いて祈りました 「みんな嫌い。消えて無くなれ。」と。すると、海の向こうに黒い壁のような物が押し寄せてきました。津波です。姫がその様子に怯えていると、やがて塔の最上階のすぐ下まで津波が押し寄せ、城も町も全てが津波に飲まれて消えて無くなりました。町が海の底に沈みしばらくすると、姫のいた塔の最上階のすぐ下まで迫った海面から大きな竜のような頭が顔を出しました。それは海神リヴァイアサンでした。そこに言葉はありませんでしたが、姫は何かを察して塔の窓からリヴァイアサンの頭の上に乗り移り、リヴァイアサンと共に海の彼方に消えていきました。

リベラの城で姫が行方不明となっている話を聞き、心当たりを元に姫の後を追って塔を登っていた主人公達は九死に一生で津波から逃れ、その後リヴァイアサンの住む洞窟に向かいますが、リヴァイアサンは年老いていて今にも死にそう。そんなリヴァイアサンを守ろうと容姿の醜い姫が立ちはだかりますが、あっさり勝利し、ちょうどその時、寿命で死んだリヴァイアサンの鱗を貰って、次の村で『鱗の鎧』を作ってもらう事になります。

その後、すぐに『魔王の塔』が見えてきますが、魔王の塔は断崖に囲まれた孤島にあり、この時点では島に渡れません。そこで、近くにあった村(現代では賭けをしていた学者の村)で『空を飛ぶグライダーを持っているという砂漠の村』の情報を聞き、砂漠に向かいます。

しかし同時に、砂漠の村は、この世界で最初に主人公達を助けてくれた、あの海賊達のアジトであると聞かされます。孤児院が襲われシスターエルナが殺されてしまった事で海賊達から恨まれてしまっている今、そのアジトに行って、どの面下げてグライダーを貸してくれと頼んだら良いか主人公は悩みますが、それでも砂漠の村に向かい、城壁の前で謝り続ける事になります。初めは当然襲われますが、やがて『魔物を撃ち倒そうという目的は双方変わらない』と認められ、村の中に通されサティールと和解します。そして、その村にはシスターエルナが命懸けで守り、後にサティール一味によって救出された孤児院の子ども達もいました。この子供たちの子孫が、現代で主人公達と子作りをする『砂漠の女王リトスとその妹のサピロス』となります。

主人公達は、この砂漠の村でグライダーを借りて魔王の塔に乗り込んで魔王を撃ち倒すのですが、そのシーンがこのゲームのオープニングにあるちょっとしたムービーの場面となります。ここまできてやっとオープニングの伏線回収です。

魔王を倒すと、既に気が付いている主人公は魔王の間の壁に、持っていた剣の先で『王歴199年に来る ○○(主人公) 進め。レザリオ ウィップ 帰れ。』と刻みます。そう、現代で見たこのメッセージは主人公自身が、その先で行方不明になってしまうレザリオと、ここに来て魔王を倒さなければならない運命の自分に向けて彫った文字だったのでした。

その後、主人公はピオニールに魔王を倒した勇者として故郷に凱旋してこの国の王になるよう指南して、自身はレザリオの行方を捜すとともに元の時代へ戻る手立てを捜す旅に出ます。魔物がいなくなった世界を旅して回るうちに、幾つかの村で村人から「あなたが○○(主人公)さん? この前、あなたを捜している爺さんが村に来てましたよ。」と言われるようになります。主人公に心当たりはないですが、とりあえずその爺さんを追って、旧魔王の塔の近くの村まで来ると、村の入口で一人の老人が主人公を見つけると涙を流しながら近寄ってきました。そして、主人公も気が付きます。その老人はレザリオでした。レザリオは現代でのあの決戦の日、主人公とは逆に200年後の未来に飛ばされていたのでした。

ピオニールの話によると、『あの日』自分達が現代から消されてしまった後、魔物達の侵略の勢いが一気に加速し、その後たった二年でピオニール王国は滅亡してしまったとのこと。

辛うじて生き残った国民達は近隣の大陸に逃げ延び「いつの日か魔物達から国土を取り戻す」と団結して魔物に対抗する『聖騎士団』を結成しました。後にその聖騎士団のリーダーとなったのは、かつての砂漠の女王の子である『アクシス』。つまり、アクシスは主人公の子です。そして、アクシスの側近『ガドー』はレザリオと砂漠の女王の妹サピロスの子。

魔物達と聖騎士団との戦いは、その後100年以上も続きましたが、どれだけ戦っても聖騎士団は魔物達を完全に追い払う事ができないままでした。やがて聖騎士団も代変わりを重ね、ピオニール王国が魔物に支配されてから150年が過ぎたある年、ガドーの子孫が『ある戦略』を発案します。それは『魔物よりも強い生物を作り出して、それを魔物の蔓延る地に放てば魔物は全滅するのではないか』という考えでした。それを許可したのはアクシスの子孫、強力な生物の創造を始めたのは天才科学者となっていたガドーの子孫でした。

それから10年の歳月をかけ、ガドー率いる軍事研究所で史上初の人造『魔物』が誕生しました。

この時に造られた魔物は、旧ピオニール王国に蔓延る魔物を一掃出来る力を必要とされていたため、体内で超電圧を発生させたり核分裂を引き起こせるバハムートや神竜などのとんでもない化け物ばかりでした。それらの人造魔物は、旧ピオニール王国に放たれると僅か一時間のうちにかつての王国の全土を完全に焼き尽くし、魔物を一匹残らず焼き殺してしまいました。そしてそれら人造魔物達は役目を果たすと脳内に埋め込まれていた爆弾を起爆され、全て死にました。

魔物を一掃し、かつてのピオニール王国の地を奪還するという先祖代々の悲願を達成出来た事で、聖騎士団の人達は狂気乱舞します。しかし、違った意味で喜びに震えていた人達もいました。ガドーの子孫と軍事研究所の学者達です。

激戦で焼け野原となった旧ピオニール王国の地に人々が戻り、その国の新たな王に就任したのはアクシスの子孫『イグニス』でした。

そして、イグニス国王は、ガドーの子孫である天才科学者『ゼルドナ』に国の早期復興のアイディアを求めます。その時、ゼルドナは「先の大戦で見た、あの人工魔物の力を使えば人々の文明は飛躍的に発展する」と提案し、イグニスもその案に賛成します。

その後、ゼルドナの研究所から火を発生させる魔物や怪力の魔物、人を乗せて空を飛ぶ魔物など様々な工業用の生き物が創り出され、イグニス王国は世界屈指の文明発展を遂げました。

レザリオがピオニール王国歴199年から飛ばされて来たのはちょうどこの頃でした。

レザリオも、この時代で主人公の行方や元の時代への戻り方を調べるため旅を続け、これらの歴史を知ることになりましたが、その後、60年以上経っても主人公の行方も時間を渡る手段も見つからないまま時が過ぎたとの事です。

この未来の時代になると『工業用の人工魔物』とは悲惨なもので、殆どの魔物は手足が無く、口から火や水を吐いているだけだったり、人々の移動のために羽だけあって建物の屋根に繋がれているものや、ペットとして飼われているものまでいる。

しかし、この頃、人々は大きな間違いをし始めていた。それは、5メートル四方もある脳だけの『ブレーン』という魔物を作り出し、人々の生活に必要な全ての『計算』をその魔物にやらせて『人間はもう悩む必要が無くなった』という宣伝を始めたのだった。

ブレーンは王国の人々に『何もしなくていい』生活を与えました。ブレーンが他の人工魔物を人間一人一人に手配して、人々の仕事や暮らしを完全にサポートするようになりました。しかし、ありきたりな話ですが、そのうちにブレーンは自我と仲間愛に目覚め、魔物達に自由を与えるため考え始めます。ただ、手足も無くされた今の殆どの魔物達は人間と戦っても勝ち目は無い。勝てそうな特徴の魔物でも、人工魔物は生殖機能が無い上、製造過程で必ず脳内に爆弾が埋め込まれており、リモートの起爆スイッチを押されたらバハムート級の強力な魔物でさえ瞬殺される。どうしたものか考えた末、ブレーンが出した答えは『起爆装置の無い世界に仲間を逃がそう。』というものだった。

ブレーンは密かに研究所のメインコンピュータに脳波を送り込んでプログラムを作り上げ、18個あった魔物の療養ポットのうち4つのポットを時空間への出入口に作り変えました。そして、時空間に無数の穴を開け、起爆装置の無い過去に魔物を送り込みました。

かつてのピオニール王国や、その200年前に現れた魔物というのは、この未来から時空の穴を通って逃げ出してきた未来の魔物達だったのです。

しばらく経って、ゼルドナや研究所の学者達がその『事故』に気が付き、慌ててブレーンを『処分』し、時空に空いた穴を塞ぐ修復作業に取り掛かりました。その際にレザリオがゼルドナの元を訪ねて自身の生い立ちについて説明し、これまで調べてきた史実を元に推測した主人公のいる時代に行くため時空間の通路を通らせてほしいと頼みます。事情を理解したゼルドナはレザリオの願いを聞き受けますが、今後、時空間に出来た穴の修復作業を行えば、それがいつ完了しようとも、他の時代に空いていた穴は、その時代ではまるで始めから無かったかのように消えてしまうため、もう他の時代にワープする事は不可能になると説明します。それでもレザリオは時空間の通路を通って主人公の元にやってきたのでした。

ここまでのレザリオの話により、時代の節々に現れ人々を苦しめてきた『魔物』を創り出した根源はレザリオであり、それを後押ししたのは主人公だったという事を知ることにになります。しかし、今それを知ったところで主人公達にはもうどうすることもできません。

ただ一つ、レザリオは未来から主人公のいる過去に来る際に『未来に戻るただ一つの手段』として、体を一瞬にしてクリスタルに結晶化してしまう飲み薬をゼルドナから預かってきていました。

ここからは敵との戦闘も無く、エンディングに向かってイベントをこなしていくだけとなります。

主人公はレザリオから結晶化の薬を受け取り、南方の岬にある『約束の洞窟』に向かい、その最深部で薬を飲んでクリスタルになり一旦物語が終了します。それから四百数十年が経過し、ゼルドナの研究所から派遣された研究員達がクリスタルとなった主人公を発掘して主人公の体を元の肉体に戻します。レザリオは時空間の穴に入る前に『過去に行って○○(主人公)をクリスタルに変え、約束の洞窟に封印するので今すぐに約束の洞窟に行って○○を掘り起こして再生させてくれ』とゼルドナに頼んでおいたのでした。主人公が研究所で目を覚ましたのはレザリオが時空間の通路に入ってから4日後の事でした。

主人公が目覚めた時点の未来でも未だ時空間に開けられた穴は修復出来ておらず塞がっていません。そこで主人公はすぐに時空間の通路に入り、ピオニール歴199年の穴を目指します。現代のピオニール王国に降り立って主人公は急いでピオニール城に向かい、城を出立したばかりのかつての自分とレザリオの姿を見つけると駆け寄って、一振りでかつての自分を斬って殺します。すると周囲の景色は白い光に包まれて消え、やがて美しい町や咲き誇る木々が周囲に現れます。そして、主人公の体も光りながら薄れて、最後には消えて無くなりエンディングです。

自分がいなければピオニール王国も存在せず、レザリオも魔物も存在しない平和な世界があったという、今で言う『バタフライエフェクト』の先駆けのようなストーリーが90年代に既にあったというだけでも結構な良作RPGだと思います。

ただ、流通量が非常に少ないソフトであるため攻略サイトもほぼ皆無であり、システム的にはFCドラクエ2程度の使い勝手が良くないコマンド欄でもあるため、RPGに慣れていない人にとってはクリアまでに相当な時間がかかるハードなゲームだと思いました。

私は好きです。

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