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エピローグ

 


 離宮訪問の翌日の昼休み、いつもの東屋で早速アステルは最後の呪いの内容を見ていた。


 対象外の条件は変わらずだったが、両親が悔い改めた時全ての呪いが解けるという設定が少し変わっていた。


 その内容を見てアステルは赤面した。


 昨日ステラの言わんとしていた事がようやく分かった。


 ステラはメガロ王にも謝罪をしたあと言ったのだ。


「18年前のあの日に人間を辞めてしまったので、時の流れに疎くなっていました。彼らも充分苦しんだ事でしょうし、私はもうこれ以上関与しません。

 解呪の条件をエルピス様のものと同じに変更しますから、いつか、親である事を放棄した彼らを、許してもいいと思った時に解いてあげてください。」


 人間辞めたって…。


 人間から何になったのか恐る恐る聞いてみたら、ステラは意味深な微笑みを浮かべた。


「世の中知らない方がいい事も沢山ありますよ?」


 そ、そうですね…。

 なんだか聞いたら夜眠れなくなりそうなのでやめておいた。


 ちなみに、その話を聞いたシャメアも遠い目をして、


「人外とかそーいう設定は間に合ってます…。」


 と呟いていた。




「……アステル、どうした?」


 心配そうなエルピスの声に、我に返る。そうだった。

 この呪いの新しい解呪条件は…



『エルピスとアステルの子の笑顔を見た時、全ての呪いは解ける』



 もし万が一、私がフルコン解呪出来なくても子供が出来ればエルピスの呪いは自然と解呪される設定…。

 そしてそれは、解呪条件を同じくするエルピスの両親にも言える。

 物心つかない子供は、無差別に周囲に笑顔を振りまくものだからだ。たとえ相手が誰であっても。


 でもそれは、エルピスが我が子をあの離宮に連れていかなければ実現しない。


 ステラはエルピスに委ねたのだ。自分を苦しめた元凶を許してもいいと思った時でいいと…。



 でもでもその前に!私がエルピスとの子供を産まないといけないわけで…!二人の子供とか!!恥ずかしい!


 今すぐには無理な内容だ!

 だから、しばらく黙っておこう…!

 当初の予定通り、魔素を潰して強制解呪にしよう!そうしよう!


 そう決意して、火照る頬を手で扇ぎながら、魔素回路を可視化して画面に映し出した。


 難易度は変わらずHell。

 ノーツ配列が変わったのだろうか?


 シャメアに記録魔術をお願いして、開始ボタンを押す。



「こ、これは…!!」



 今までの呪いにはなかった、音楽が流れ出した。

 しかもこのイントロは…!



「音ゲー界のあの超有名曲!」



 鳥肌がたった。


 前世の記憶が脳裏を駆け巡る。


 いくつもの音ゲーで難関曲として君臨した有名曲。

 どうしてもフルコンしたくて、それこそ指紋すり減らして必死で練習した曲だった。


 体は異なっても魂が覚えているようで、ミスはあるもののそれなりについていける。


「あんたの指おかしくない?!」


 シャメアの絶叫に反応する余裕もなく、最高難易度だからいいよね?と言わんばかりの、譜面製作者様やりたい放題の無法地帯を必死で突き進む。


 なんとか一通り終わり、深いため息をつく。


 ノーツが恐ろしく多いから魔力もごっそり持っていかれる…。あと、瞬き出来ないから目がすごく乾く!


 でも楽しい…!!


 ステラは私の魂の記憶を借りたと言っていた。おそらく何らかの力で前世の記憶の中のこの曲と譜面を引っ張ってきて、そっくりそのまま移植したという事だろう。


「え…それ、同じ事を私の魔力で出来ないかな?そうすれば、どんな解呪もバッチコイなんだけど…。それは今後の研究課題にするとして…。今回の解呪はいける!ミスった所をまた死ぬほど練習すれば、やり遂げられるわアステル…!恋する元ゲーマーの底力を見せてやるのよ…!」


「ひとりでブツブツ言ってて怖いんだけど?!」


 シャメアのツッコミが聞こえたと思ったら、ふわりと浮遊感を感じ、エルピスの腕の中に居た。

 流れ込んでくるエルピスの温かい魔力にホッとする。


「アステル、無理はしないでくれ…。目もこんなに赤くなって…。」


 硬い指の腹で目元を撫でられ、恥ずかしくなる。


「だって瞬きしてなかったよそのヒト!そりゃ充血もするよね!人間辞めてるでしょ!」


 シャメアのツッコミも聞こえていないように、ひたすら甘やかされて、それに慣れつつある自分がちょっと怖い。



 婚約者になってから、エルピスは以前にもまして言葉も態度も直接的になった。


 堂々とイチャイチャしていいんだと思うと嬉しくもあり、ロンヒを始めとする周りからの生温かい視線が恥ずかしくもあり…。


 シャメアがやれやれといった風に溜め息を吐く。


「…こんだけ見せつけられて、ロンヒもいい加減砂吐くんじゃないの?」

「砂でも砂糖でも18年分吐きたいのでドンと来いです!」

「聞いた僕がバカだったよ…。」



 エルピスの腕の中でぬくぬくしながら、二人の会話を聞いて、エルピスと密やかに笑い合う。



 魔力も幸せパワーも充電バッチリ!!


 難易度Hellだろうが、愛のチカラで絶対フルコンもぎ取ってやる!


 その為には1に練習に2に練習!



 呪われ王子を救うため、今日も指紋を捧げます!!





  おしまい

降って湧いた誰得ネタでしたが、お読みいただきありがとうございました!

ステラが何になったのか…番外に記載予定しております。

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