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プロローグ

 




 魔術大国メガロの王太子エルピス殿下は呪われている。



 これは、大国メガロの繁栄を妬んだ何処かの国が流した根拠の無い噂…………ではなく、メガロ王室公認の事実だった。



 メガロは、エルピスが生まれた当時から、呪いを解いた者に莫大な褒賞を授けると、遍く国々に触れを出し、数多の魔術師を招いていたが、未だ解呪に至る者はいなかった。






 エルピスの呪いは、まだ母親の(はら)にいた頃にかけられたものだった。


 エルピスの父は現メガロ王アネシスの兄で、呪いを受けた18歳のその当時、王太子として貴族学院に在籍しており、膨大な魔力を持つ伯爵家の令嬢ステラを婚約者としていた。


 幼少の頃から何の問題もなく過ごして来た二人は、このまま学院卒業と共にご成婚となるだろうと誰もが思っていた。


 ところが、学院の卒業パーティーで王太子はステラに対し、婚約破棄を宣言したのだ。


 その腕に平民の転入生の女をまとわりつかせて…。


『真実の愛』を声高に主張し、乱心したとしか思えない王太子は、公衆の面前で婚約者であるステラに恥をかかせるどころか、事実無根の罪を負わせ、国外追放にまでしようとした。


 ステラは、あまりにも不誠実かつ悪質な行いに激怒し、その膨大な魔力でもって二人に呪いをかけた。



 ひとつ、その容貌は異性の想像しうる最も醜悪な姿に映る。

 ひとつ、その体は異性が息を止めるほど悪臭を放つ。

 ひとつ、その声は猛獣の咆哮となり異性を恐怖に竦ませる。


 …などなど、異性との接触が一切出来なくなる類の、不貞に対する恨みつらみがこれでもかと込められた呪いが、婚約で無駄にした年数分として実に10個もかけられた。


 そして、怒りに震える指先で略奪女の腹を指し示し言った。


「人としての良心の欠片もない者から産まれる子供がまともに育つ筈がない。私のような哀れな人間を作らないためにも、間もなく産まれるその子供にも同じ呪いを芽吹かせよう。」


 そのままステラはその場から忽然と姿を消した。


 呆気にとられた『真実の愛』で結ばれた二人は、お互いの顔を見るや、突然悲鳴をあげ、鼻を押さえて、ものすごい勢いでお互いを突き飛ばした…。



『真実の愛』の、なんともお粗末で滑稽な、終焉だった。




 その後、王太子は継承権剥奪の上、離宮に幽閉。


 代わりに弟のアネシスが王太子となり、その9年後、病がちであった父王の崩御を機に、若くして現メガロ王となる。


 略奪女は修道院に送られる予定だったが、ステラの予言の通りその腹に既に子を宿していた為、やむなく婚姻を成立させ、離宮にて出産をさせる事になった。



 そうして産まれたエルピスは、産声をあげた瞬間から全ての異性に拒絶された。



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