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四神守りの大罪人  作者: くまがこ
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偽善者の自分勝手な罪滅ぼし

第1話




第一章


「レオ爺、もう無理だよ」


紅色の瞳に白く透き通るような髪を肩まで伸ばし、前髪で右目の隠れたを少女、朱鳥(あすか)は自分を一人で助けに来た老人の従者レオール・クルジーンの背に身を隠しながらながら言った。


周りには百を越える程の多くの鎧を身に(まと)った兵士や黒いローブを被った人が地面に倒れていおり、2人の足元には赤い線で描かれた円状の陣が描かれていた。

しかし、まだ多くの兵士が二人を包囲されていた。


「お嬢様、諦めないで下さい。そんな事では『朱雀』の一族名が廃りますよ。それに、ここでお嬢様を渡したとこれでそのあとに殺されるだけですから」


「だけど、レオ爺………もうこんなに傷だらけじゃんか………」


「なーに、これくらい……、お嬢様を助けるためならかすり傷ですよ」


朱鳥の言うとおりレオールの体は多くの傷で覆われていた。

だが、男も自分の体がそう長く動けないことは解っていた。手に握った刀を今にも離してしまわないように強く握りしめてている。忠誠を誓った時からこの身は朱鳥のものと決めていた。


「さすがは『四神の剣聖』と呼ばれたレオール・クルジーン【黒玄武】の団長クラスも倒すとわ。しかし、を老いには勝てないか」


朱鳥が自分の従者の男を心配していると、二人を包囲していた中から、一人の男が現れた。


その男は真ん丸と太っており、白色の洋風の服を着て、指や首には青く輝く宝石が埋め込まれた指輪やキラキラと光る黄金の首飾りなど、見るからに貴族のお坊ちゃんといった雰囲気だった。


「これはこれは、四神の一柱の《玄武》の加護を授かった北の領土の次期領主様、ガバ様が自分のような老いぼれををご存知とはありがたい」


レオールは丁寧な言葉遣いとは裏腹に、眉間に皺を寄せ殺意のこもった瞳でその男を見ながら言った。



「それでガバ様、今回の件どういうおつもりか?いくら四神の加護を持つあなたでも、他の一族の姫、ましてや四神の《巫女》を誘拐するとはタダではすみませんぞ」



「フッ、タダではすまないだと?周りをよく見ろ、ボロボロの老いぼれが1人に足手まといな姫を対して、こちらはまだ多少の兵が残っている。勝てるわけなかろう」


ガバは自信満々に腰に手を当て、その膨らんだ腹で今にも服のボタンがちぎれそうな程に胸を張ったりながら言った。


確かにガバの言う通り、朱鳥とレオールの2人に勝ち目は薄く逃げるにしても朱鳥を守りながでは難しかった。


「そこでどうだ?貴様の腕を見込んで《巫女》を差し出せば俺の仲間に入れやろう」


「はぁ。いやはや……私も見くびられたものですな。自分の命欲しさに幼き少女を売るなんてするわけないでしょうに」


レオールはガバの言葉を聞き呆れて、俯き際にため息をひとつきしてから丁寧な言葉遣いをするのも面倒になりガバの提案を断ろうとした……


「待ってレオ爺……このままだと2人とも死んじゃうよ、だからレオ爺だけでも逃げて」




「お嬢様、先程も申し上げましたが、お嬢様を渡したところで、用済みになれば切り捨てられるだけです。そもそも彼らは約束を守るような善人ではありませんよ」


「……」


レオールは不安げな朱鳥に再び諦めないように語りかけた。


「なんだ貴様ら、俺に逆らうつもりか! 」


とうとう、ガバの堪忍袋の緒が切れた。


「お前達、この死に損ないを殺せ! 俺に逆らったことを後悔させてやれ! 」


ガバは残っていた手下にレオールに一斉に襲いかかるように言った。


「お嬢様、少しさがって目をとじていていてください」


レオールがそう朱鳥に伝えた直後、剣を手に数名の兵士が切りかかる。


「大いなる炎の加護を……」


レオールが呟くと同時に兵士達の刃がレオール目掛けて振り下ろされた。が、振り下ろされたはずの剣先は綺麗に切断され、その切断面は溶け赤くなっていた。


「な、何!?」


兵士達は自身の剣の有様を呆然と見つめている。レオールはその兵士達の首を一振で切った。


それを見た残りの兵士達は勢いを止め距離をとった。


「えーい、何をしている!近接戦闘がダメなら遠距離から魔法で攻撃すればいいだろう!」


イラついたガバの指示に黒いローブを着た人物達が、丸く輝く玉をレオールに向けて放った。


放たれた玉はレオール目掛けて向かってくる。レオールはこの玉を避けることは容易い。しかし、その場合、後ろで隠れている朱鳥にまで被害出てしまう。


レオールは自身に迫り来る玉に向かって走り出した。


「ふっ!」


そして、自分に衝突しそうな玉を片っ端から切りふせていった。


「化け物め……」


ガバは傷だらけになりながらも自分に立ち向かってくるレオールに恐怖心を抱いた。気が付けば残っていた手下達もレオールに立ち向かわせた者は軒並みやられていた。


「くっ、この役ただずどもが……」


ガバがやられた手下達を眺めていると……。


「これで終わりだ。玄武の一族の若き当主よ」


ふと、声のした方向に顔を向けるとそこには刃が血で赤く染った刀を振りかざしたレオールが立っていた。かき


「まっ、待て待ってくれ」


この状況になってなお、命乞いをするガバ


「さらば。」


そんなガバに情けをかけることなくレオールは刀を振り下ろした。


キッーン


終わった。そう思った瞬間、高い金属音が辺りに響き渡った。


朱鳥が響き渡る金属音と共に目を開けると、レオールがガバに振り下ろしたとどめの一撃を自分よりも背丈が少し大きめの少女が間一髪で受け止めていた。


その少女の腰までたりまで伸びた髪は黒く艶やかで、瞳は水色に煌めいていた。そして、何より特徴的のが常人よりも少し尖った耳、それはまるで舞い降りた妖精だった。


「ティレ姉………………。」


朱鳥はそう呟きながら舞い降りた彼女の姿を遠い目で見つめるのだった




























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