第99話:爆発前のパン屋さん
「なんだ、もう戻って来たのか。そんなに授業が受けたかったとは驚きだ」
「センセーこそ、私の顔を早く見たかったクセに」
間宮璃子の事件は大々的に取り上げられた。高校生にはしっくりこなかっただけで結構な知名度があったらしく、あれから4日経った今も駅売店の新聞やネット上では間宮璃子の文字をよく見る。
私は2週間の停学の最中だったのだが、間宮の件の功績ということで1週間短縮された。ヤツをとっちめたが木曜日で、金曜日に感謝状をもらい、月曜日の今日で復帰。
「全く、停学中に何をしていたかと思えば。警察の手伝いをしてたなら学校に連絡を入れろ」
「連絡したら心配性なセンセは授業に身が入らなくなるでしょう?」
「プロをナメるな」
「演技のプロも、ボロボロと化けの皮が剥がれちゃいましたから」
「お前な・・・」
犯罪計画が雑だったのもそうだが、最後は本当に見苦しかった。さっさと観念して潔く自分の足でお縄につくぐらいして欲しかったぜ。
「まあいい。1週間遅れで全員揃ったが、また誰かが欠けることがないよう気を引き締めて過ごすように。以上だ」
こうして、復帰初日の朝のホームルームが終了。
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そして、とある授業中でのこと。教室に備え付けの電話が鳴ったのを教師が取り、通話が終わって受話器を戻すと、その教師はこう言った。
「君津先生から厳木さんに伝言です。警察が迎えに来ているので、すぐに出るようにと」
「はい?」
あろうことか警察からの呼び出しだった。なんだ? 間宮璃子の件でまだ何かあるのか?
教室も少しザワつき、「また停学か?」「いや手配犯捜査の要請かもよ」といった声も聞こえてくる。教師は生徒たちに静かにするよう注意したのち、
「詳しい話は移動しながら、とのことなのでとにかく行ってください」
と私に告げた。
「へーーい」
クラスメイトからの好奇な視線を浴びながら私は教室を出て、下駄箱に向かった。
「来たか。行くぞ」
君津がいた。
「センセーも行くんですか?」
「当然だ。わざわざ警察が学校に直接連絡してきたんだ、責任者が引率するさ。すぐに来るらしいから急げ」
と君津が言った矢先に、校門からパトカーが入ってくるのが見えた。サイレンは鳴らしていないがパトライトをグルグル回しており、校庭を突っ切って玄関に向かって来る。運転しているのは窓咲署で“厳木鏡子担当”をしている、婦警の古川だ。
「なんだろ」
君津は概要ぐらい聞いてるだろうけど何も言わない。古川の説明を待つしかないようだ。届出をせずに裏ルートで強酸類の薬品を仕入れてることがバレたにしても、授業中の連行まではしないはずだ。
スリッパから靴に履き替えている間にパトカーが玄関前まで来たので、乗り込む。1階にある3年の教室からは、これでもかというほどの視線が集まった。
「突然すみません。少々、緊急事態に見舞われまして」
発進させるなり古川はそう言った。“少々”なのに緊急事態か。
「何なんですか?」
「悪い話ではありません。我々では手遅れになりそうなものを手伝って欲しいだけで」
それは私にとっては“悪い話”なんだ。警察の手でも間に合わなさそうだなんて、相当な面倒ごとに決まってる。今から厳木家の家宅捜索をすると言われた方がまだマシだった。古川の口から、いま起きている事態が告げられる。
「火町にあるパン屋で中規模火災が起きています。既に消火器での消火は困難で、コロッケを揚げていた油火災だそうで水も使えず、といった状況です。狭い路地にあるお店で消防車も入れず、なんとかホースを引き回そうとしてますが手こずっており、爆発が起こるのが先だろうと、現地のボランティア消防団員は言っています」
「マジか」
とは言ったものの、内心では“そんなことか”と思った。ただひとつ“マジか”と言いたいのは、そんな火災現場に警察が女子高生を連れて行こうとしていることだ。
「でも私、火消しの道具なんて持ってないですよ? 火種はたくさんありますけど」
「何とかしてください。でないと家宅捜索をしますよ?」
なんて脅しだ。だがまぁ、警察に協力することで色々と目を瞑ってもらってる部分もあるからな。
「とりあえず厳木、今の手持ちには何があるんだ」
「それこそ火薬とチャッカマンぐらいしか持ってませんよ」
「ふざけてるのか?」
ふざけてるのはどっちだ。授業料を払って高校に通っている人間を連れ出しておいて。授業はつまんないから個人的には構わないのだが、2人は公務員なのだからもう少し体裁を気にして欲しい。
「とにかく行ってみますよ。ガス管を切り離すぐらいはできますから」
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15分ほどで到着した。マジで狭い道で、パトカーぐらいのサイズでも通るのがやっとの幅、そして何度もある直角カーブののちに辿り着いた。
パトカーに気付いた野次馬が道を開けたが、既に中々の炎上状態なので野次馬と並ぶ形で距離を取って停車。降りるなり、声が聞こえてくる。
「オイあれ、厳木鏡子じゃないか?」
「この火はやっぱりあの子が・・・!?」
「でも今来たばっかりよね。警察も一緒だし消火しに来たんじゃないの?」
「上手くいく保証は?」
「ある訳ないだろ。むしろ火に油、いや火に火薬だ。何が起きるか分からん、みんな逃げろォーーーッ!」
「「「わぁぁぁぁぁぁぁ・・・!」」」
「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ・・・!!」」」
好き勝手に語り合ったのち、野次馬どもは叫びながら退散していった。それを見た古川が呟く。
「凄いですね。あれだけ警察が呼びかけても避難してくれなかった人たちが」
「・・・そのために呼んだんですか?」
「いえ、今のは嬉しい誤算です。もちろん厳木さんには、この状況を何とかしてもらえないかと思って来ていただきました」
古川のその言葉に返事をしたのは、君津だった。
「ご安心ください。ウチの厳木が責任を持って対処します」
「はい!?」
いや勝手に押し付けんな! これ私が点けた火じゃないからな!? 責任は教師が取れよ!? そのために来たんだろ!?
いずれにせよ消さなければならないのは変わらないので、ひとまず現場に近付いてみる。現地のボランティア消防団員が頑張ったのか、玄関付近には空の消火器が大量に転がっている。周辺から集められるだけ集めたのだろう。
店内は火の海だが外側は思いのほか無事で残っており、自動ドアの上の壁面にポップな字体で壁に書かれている店舗名は“Boulangerie SiH4”。上にカタカナもあって、“ブーランジェリー シホ”と読むらしい。
シホは店主の名前だろうか。それにしてもSiH4とは趣味が悪い。律儀にも4の字はHの右下に添えるように小さく書かれており、モノシランというガスの化学式と同じなのだが、これは空気に触れるだけでボンっとイっちゃう危険な代物だ。
そんな名前の店舗が爆発事故寸前に立たされているとは皮肉な話だ。これを機に表記を“Boulangerie ShiHo”に変えて頂きたい。
もっとも、手作りと思しき看板やポスターに“お口も心もハジけるパン!”だとか、“みんなでバクハツのブランチを!”だとか書いてあるので、店主の頭も中々にハジけているようだが。
「それで、どうするつもりだ厳木。中々の惨状だぞ」
さて、君津の言うように店内は火の海だ。油火災ということは火の元は厨房で、それが店舗部分にまで波及しているということは相当に危ない。
火を消す手段は2つで、温度を下げるか酸素を遮断するかだ。前者は水を掛けることが定石だが、油火災では火を広げるだけになる悪手だということも有名。私お手製の冷却スプレーは火気厳禁。こないだ痛い目に遭ったばかりだ。消防車は化学的に調合された泡を使うので大丈夫なのだが、確かにあの狭い道を縫っては来れない。
酸素遮断は消火器を使ったり布をかぶせたりするのが有効な手段だが、この規模の火になるとカバーできない。酸素濃度を下げるための不活性ガスの類も今は持ち合わせていない。
とりあえずガスマスクと耐火服を装備して中の様子でも見ようかと考えていると、聞き覚えのない声質が飛んで来た。
「あぁっ、厳木さん! 来てくれたんですね!」
やはり初めて見る顔だったが、コックコートを着ているので従業員だろう。初対面だが窓咲に住んでるなら私を知ってるのは普通だ。
「彼女がここの店主、真車詩穂さんです」
後ろから古川が教えてくれた。帽子から出ている栗色の髪は両肩それぞれの上でクルリンとカールしている。首筋に火傷の跡のようなものが見えるのと、飲食店のためかメイクはほぼナシ、そばかすもチラホラ見える。
ただ、頭がハジけてるのは間違いなさそうで、自分の店が大炎上中にもかかわらず何故か表情は明るい。
「わぁぁぁっ、ホンモノだぁ・・・お会いできて光栄です! ちょっと困ったことになっちゃってますけど」
“ちょっと”どころじゃないだろ? 苦笑いもなんだかニコやかで、緊張感というものを全く感じない。
「それで、何とかなりますかね?」
一応、店のことは心配らしい。妙にニコやかなのは変わってないが、困ったようにこめかみを指で搔いている。
「とにかく、中に入ってみますよ」
スマホを操作するとアラ不思議、私は一瞬にしてガスマスクと耐火服に身を包まれましたとさ。
「うおぉぉぉ・・・凄いです! さすが厳木さんですね! 私あなたと同じ街に住みたくて窓咲に来たんですよ!」
なんて迷惑な話だ。その事実も、そんな話を警察の前で出すことも。
「類は友を呼ぶ・・・」
古川が呟いた。反論せねば。
「いや初対面ですし友達になるつもりもないですからね?」
「そんなぁ! 工業製品と食品、モノは違えど発明に携わる者同士仲良くしましょうよぅ!」
「それは火事を起こさないようになってから言ってくれる?」
「自分も何度もボヤ騒ぎを起こした癖によく言ったもんだ」
「似たような人が集まって来るとなれば、署内での厳木さんの評価を見直さなければなりませんね」
ほらぁ! あんたが変なこと言うから! もう私帰っていい!? なんて訳にもいかず、突入を決意する。中に入って、ロボットアームを使って燃えてるやつを全部上空に切り離していこう。
と思った次の瞬間、
ゴォォォォォォッ!
「「「わぁぁぁぁっ・・・!」」」
強烈な火の手が上がった。一瞬の波だけですぐに引いたが、その波が来る前よりは強いまま残ってる気がする。
「鏡子ちゃん、急がないとマズいって!」
地域の消防団員だろうか、避難せずに残ってる人からそんな声が飛んで来た。確かに爆発してからじゃ遅い。どうせ店は助からん。ガスへの引火だけは防いで店は燃えるに任せよう。
「ガスの元は裏? こうなったらもう切り離すわよ」
恨むなよ、と心の中で付け足して店主に聞いた。
「裏ですけど、ダメです! 普通のガスとは違って・・・!」
プロパンか? だったら都市ガスより楽だ。ボンベをかっさらえばいいんだから。
動きにくい装備を解除して制服姿に戻り、ミニバルーンを使って炎を飛び越え裏手に回る。厨房のすぐ裏のはずだが耐火壁なのか外はまだ無事のようだ。ガスボンベは・・・あった! ボンベに向かって着地を急いだ。
「え・・・」
のだが、そのボンベを見て私は凍り付いた。1.5秒ぐらい気を失ってたんじゃないかと思う。
ボンベがデカいのはまだいい。中華料理屋とかにあるものより10倍はデカかったが、火災現場から引き離す作業をする上での問題はない。
私を凍り付かせたのは、そのボンベに書いてある文字だった。プロパンやLPではなく、”SiH4”と書かれていた。これが正しければ、モノシラン。空気に触れるだけでボンっとイっちゃうやつだ。
イタズラで書いてるだけだよな!!?
だって、マジでモノシランなら、可燃だと危険だのを知らせる記号があるはずで、これにはラベルすらなく細いスプレーの字で”SiH4”と書かれてるだけ。そもそもパン屋なんかに売ってくれる訳がない。
ラベルがないから圧力も分からないが・・・配管に付いてる圧力調整器のボンベ側の計測値を見ると、3メガパスカル。大気圧たる1013ヘクトパスカルは0.1013メガパスカルだから、およそ30倍だ。つまりこのボンベの中には、ボンベの30倍の体積のモノシランが凝縮されている。私、ここで死ぬんじゃないだろうか。
「ハァ、ハァ。待ってください、鏡子さん・・・!」
店主が来た。路地を回って走って来たのだろう。後ろの方に古川と君津も見える。
「ちょっとあんたこれ冗談よね!?」
“SiH4”の文字を指さしながら聞くと、店主は、ダッシュの疲れなんて忘れたかのように一瞬で呼吸を整えたあと、拳で自分の額を小突きながら、テヘッ☆ とでも言わんばかりに舌をペロッと出した。
「ちょぉぉい・・・!!」
マジか、マジか、マジなのか! マジで言ってんのか!! “警察には言わないでネ”って感じでテヘペロってんじゃねーよ! ヤバすぎて逆に言えないけど! てかこんなモンどうやって入手して・・・!
いやそれは後だ! この中がマジでモノシランなら、どんな規模の爆発になるか分かったもんじゃない!
それに、ガスボンベを切り離して爆発を防ぐという手段も使えない! なぜなら、配管に残ってる分は外に出てしまうからだ。プロパンなら多少の漏れは構わなかったがモノシランだとそうはいかない。空気に触れた瞬間アウトだ。工場とかでボンベ交換する時も細心の注意を払ってやるもので、大した道具もない上にすぐそばで火事が起きてる状況で出来る作業じゃない!!
私はスマホを使って街の防災無線にハッキングし、ピンポンパンポン音に続けて放送した。
「火町の住人、できるだけ遠くへ逃げなさい!! パン屋で起きてる火事はもう止められないわ! 爆発の音が聞こえるまでひたすら逃げ続けなさい! 今すぐによ!!」
私は放送を切らないまま、近くまで来ていた古川にスマホを投げ渡した。
「っ・・・。 火町の皆さん、いま聞いた通りです。速やかに非難を始めてください。こちらは窓咲警察署の者です。現在、火町1丁目のパン販売店、ブーランジェリー・シホで・・・」
続きの放送は彼女が受け付けた。残された大人は、店主を除けば君津だけ。
「お前はどうするつもりだ、厳木」
「この店を地面ごと上空に打ち上げます」
「えぇぇぇぇぇぇっっ!!?」
何を驚いてるんだこの店主は。モノシランを置いてるそばで火事が起きたんだからタダで済むはずがないだろう。ただのパン屋にモノシランが置いてあったことの方がよっぽど驚いたぞ。
ブチッ、ブチッと、ドローンを使って電線を切り落とした。異常検知の巻き添えで周囲の家も停電したかも知れないが、爆発に巻き込まれるよりマシだと思ってくれ。
「次は水道ね」
幸いにも、元栓と思われるバルブが近くにあった。それを閉めて、ロボットアームで配管を横から殴って壊した。配管内の水が、ちょろちょろと出てくる。完全に抜くことはできないが、油火災の中で噴水が続くようなことにはならないはずだ。
あとはこの、大炎上中のパン屋を持ち上げるのみ! 出せる限りのドローンとロボットアームを総動員し、ガリガリガリガリと地面を掘っていく。少しでも浮かせることができたらこっちのものだ。
急げ、急げ、急げ!
見たことのないほど顔が引きつってる君津、放送は既に止めていて顔面蒼白の古川、「あわわわわわ」とさすがにヤバさを理解した様子の店主が見守る中、ついに地面が周囲から切り離された。よし、ドローンは全員下に全員入り込め!
ドドドドドドドド・・・!
燃え盛るパン屋が、ガスボンベも連れて地面ごと浮き上がっていく。
「あぁ、わたっ、わたしっ、私のお店がぁぁぁぁぁ・・・!」
これに懲りたら、もうモノシランを置くなんてマネはやめるんだな。そもそもが、燃えやすいガス使えば美味いパン作れるって訳でもないだろう。
さて、爆発までにどこまで上空に上げることができるか。大気圏も抜けて酸素のない空間にまで行ってくれればいいのだが。
「「「・・・・・・」」」
「あぁぁぁぁぁぁぁ・・・!」
3人が神妙な面持ちで、1人が頭を抱えて見上げる中で、その時は訪れた。
ドォォォォォォォォォォンン!!!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
「うお・・・っ!」
「ぐ・・・っ!」
「っ・・・」
大気圏を抜けるよりも先に、バルブがやられたのかモノシランが漏れたようで、大爆発。破片の飛び散りが最大の懸念だったが、相当な爆発だったようでデカい破片は見当たらず、粉々に砕け散った。あの分なら、悪くとも数軒の家で窓が割れる程度で済むだろう。
「フーーーーーーッ」
なんとか、なったか・・・。まさか、たかだかパン屋の火事で死にかけるとは思わなかった。疲れて、その場にへたり込む。古川が来た。
「お疲れさまでした。お陰で、被害は最小限に抑えられたと思います・・・」
古川も、疲れというよりは、あの大爆発が地上で起きてたらと想像したのかゾッとしたような顔だ。
「高く、つきますからね・・・」
「署にはあなたの活躍を、しっかりと報告しておきます」
是非そうしてくれ。さすがにこれで報酬なしは、割に合わなさすぎる。その元凶となったパン屋は、いまだに横で頭を抱え続けていた。
「そんなぁ・・・まだ29年半もローンが残ってるのにぃ・・・」
30年ローンを組んだのだろうか。引っ越して来たばかりだと言ってたし。でも同情なんてしないからな? 私だってあの数のドローンを失ったんだ。損害賠償に毎朝パンを届けさせたいぐらいだが、そのパンを作るための店が爆発してしまったから無理だろう。
「はぁ・・・また建て直しかぁ・・・」
建て直す気かよ!! ローンを気にしちゃいるが、パンのためなら借金なんていくらでも負って然るべきとか思ってそうだな、こいつ。
それは勝手だがもう二度とモノシランなんて置くなよ。私が火町の住民ならどんな手を使ってでも追い出してやりたいぐらいだ。あんなモンがあるパン屋と共存するぐらいなら、隣に原発でも建てられた方がまだマシだ。
「建て直しの前に、あなたには署まで来て頂きますからね」
「はい・・・」
「この半年の間に、ボヤ騒ぎが4件と小規模火災が1件、そして今日のこれですからね。容赦はしませんよ」
「ひえぇぇぇぇ・・・」
月イチでやらかしてんじゃん・・・そりゃそうなるわって感じだが、ただのプロパンだと思ってる警察は店主の危機管理能力を問うだけになるだろう。
実際ゆゆしき存在だよこのパン屋。絶対懲りずにまた店は開くだろうけど、ガスだけは変えてくれることを祈ろう。マジでどっから仕入れてんだよ・・・って、私が薬品買ってるルートと一緒か。
古川が手を引くと店主は立ち上がり、肩を落としながらも大人しく付いて行った。それを君津と2人で見送る。
「よくやってくれた、厳木」
全くだよ。これで停学マイナス1週間、貯金ね。
「今日は授業はもういい。なんか食いたいのはあるか?」
正直まだ食欲がないのだが、30分もすれば腹が減るのは目に見えているので、ここは乗っておこう。私はスカートをはたきながら立ち上がって答えた。
「じゃあ、お寿司で」
冷たいものを、食べよう。
無期限活動休止に伴い、次回は未定です




