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第64話:池の底の大掃除

 大量のホースを投げ込んで水抜きしてる間は、休憩も兼ねて流しそうめん大会。池の外周に沿って緩やかな傾斜で、半分に切られた竹を連結する形で水路が作られている。継ぎ手は特になく、ただの段差だ。そこを水とそうめんが流れていく。


 竹は市内のナントカ協会から提供されたもので、水も別のナントカ協会の提供。池に水を戻す訳にはいかないから、受け皿は魚たちが退避中の水槽だ。なんか、この昼食だけは意地でも私には頼らないという意思を感じた。


「これもヤバいねーちゃんが作ったのか?」


「違うわよ。街のおじちゃんたちがやったらしいわ」


「へぇ~っ。ヤバくなくてもこんなの作れるだ~。やっべぇ~~」


 ヤバいのかヤバくないのかどっちなんだ。


「あ、“もっとヤバいねーちゃん”チーーッス!」


「だからヤバくなんかないわよ」


「やめとけってタカシこのねーちゃんキレたらヤバいの見ただろ? クスリのダシどころか粉々にされちまうぜ俺ら」


「誰が粉々するもんですか!」


「あ、キレた! やべー! 逃げろーーっ!」


「うわあぁぁ! 消し炭にされるぅぅぅ!!」


 叫びながらガキ共は走り去った。忙しいやつらだな。


「なんか鈴乃、魔女どころじゃなくて魔王か何かだと思われてない?」


「誰のせいだと思ってるのよ」


「自分自身でしょ」


 何でそんな典型的な怒り方するんだよ。ガキ共に楽しんでくださいと言ってるようなモンだぞ。


 さて、市内の麺職人が作ったそうめんを、市内のつゆ職人が作っためんつゆで食していて実際ウマいのだが、池の水が引いていくにつれてゴミが見えてくるという景色を拝むことになる。

 魚獲り作業の段階で既に冷蔵庫が見えてたりもしたが、新たに出るわ出るわゴミが出るわ。自転車、ギター、電子レンジ。半分以上泥に埋まった状態で色んなものが無残な姿を見せた。一般参加者からも驚きや嘆きの声が広がる。タカシなんかは「すげー! やべーー!」とか言ってたが。


「よくもまあ、こんなになるまで放置したものよね」


「あたしたち、この前こんな池に落ちたのよね」


「でも3ヶ月前は綺麗だったかも知れないでしょ?」


「そんな訳ないでしょ・・・」


 知ってて言ったに決まってるだろ?


「あっはは・・・私がここを任されるようになってからは一度も掃除してないからね」


 と、おじちゃん。


「おじちゃんいつからやってんだっけ」


 私が物心ついた頃にはこのおじちゃんだった気がするぞここのボートレンタル?


「もう15年以上にはなるかな、はは」


 最低でも15年は掃除されてないのか、この池。昔は平気でゴミ投げ入れるような奴もいただろうしな。


「あたしたちよりも年上じゃなくて良かったわ」


 15年“以上”だぞ、鈴乃ちゃん。まあ? 17歳たる私を前には足元にも及ばないだろうけど?



 昼食休憩も終わり、ドロとゴミにまみれた池の掃除スタート。よりにもよって、というよりは、捨てるのが面倒だからこそ粗大ゴミが多い。ここに持って来る手間の方が面倒だと思うんだが、池ならタダで引き取ってくれるからな。


 これはお金なんて要求しちゃう市の方が悪いね。市民が清潔に生活できる環境を整えるのは市の役目のはずだが、税金とは別にゴミ捨て代を要求するとは、二重税金のようなものだ。たくさんゴミを出す奴から多くの金を徴収するってのは妥当だが、高い。普通の可燃ゴミ袋でさえ1枚数十円とかボッタクリの領域だ。


【それでは皆さん、近くにあるものから池の外に出していきましょう。重い物は決して1人で持ち上げないようにしてください】


 アナウンスがかかり、参加者たちが梯子で池の底に下りていく。私らは引き上げられたゴミの整理のため上で待機だ。

 ゴミは市民の手によって池の外壁まで運ばれ、それを私お手製のリフターや、意地でも私に頼りたくない参加者自前の道具などで引き上げられていく。


「よう。珍しく市民に貢献する活動をしてるんだな」


 君津だ。なぜ夏休みにまで担任と会わねばならんのか。


「私は日頃から市民の皆さんに貢献してますよ? 金を取るだけで」


「金を取るのをやめろと言ってるんだが?」


「公務員だって市民のために働きつつも金もらってるじゃないですかあ。先生も公僕なら手伝ってくださいよお」


「公僕とかいう言い方はやめろ。悲しくなる」


 その理由の方をやめろよ・・・。


 とはいえ公務員としての義務感が働いたのか、君津も作業に加わった。


「なんだか先生がこういう泥臭い作業してるって気持ちいいですね」


 しかも文字通り、泥まみれのチャリとかを運ぶ作業だ。ゴム手袋に作業着とは言え、君津の服とか頬に泥が付いてるのは見てて爽快だ。


「意地でもお前をこっち側に引きずり込みたくなってきたな」


「そうならないように、こういう場でプレゼンス向上に努めてるんじゃないですかあ」


「お前のことを嫌ってる市民も多いようだが?」


「1割でも私を頼る人がいれば生活には困りませんから」


 あとの連中など知らん。せいぜいつまらん対抗心を引きずって泥臭く生きるといいさ。


「あたしもたまに、鏡子が過酷な強制労働をされてる姿を見たくなってくるわ」


 あんた親友に対して何てこと言うんだ。


「そんなこと言ってると自分に降りかかって来るわよ。鈴乃ももうすぐ17歳なんだから、将来の生き方ってやつを考えないと」


「そんなこと言われてもねえ」


「こんな泥まみれのゴミ拾いを毎日やる生活は嫌でしょ?」


「絶対嫌!!」


「ま、その辺はセンセが一緒に考えてくれるでしょ。なんてったって教師兼公務員なんだから。ねー? セン、セ♪」


「自分の将来を決めるのは自分だぞ」


「うわ突き放しにきたよ教師失格。税金返せー」


「“自分の将来を決めるのは自分”。これを教えるのが教師だ」


「そんな1500円の本にも書いてあるようなことで威張らないでくれますかね・・・」


「あはは・・・まあ、自分で決めなきゃいけないことは確かだし」


「相談には乗るぞ。相手が厳木じゃない限りな」


「なんですかそれ! 特定の生徒を邪険にするなんて教師がやっていいと思ってるんですか!」


「お前はどうせ金づるを紹介しろとかだろう。悪いが裏で金を回すような奴の片棒は担げない」


 けっ、よく言うぜ。我が校だって改修工事は市議の親戚がやってる業者に頼んでるクセに。



 そうこうしているうちに、多くのゴミが引き上げられて上での作業が増えてきた。まあ? 私のロボたちに掛かれば造作もないけど?


「厳木を見ていると、真面目に働くのが馬鹿馬鹿しく思えてくるな」


「同感です」


「何言ってんのよ2人とも。今日は仕事じゃなくて楽しい楽しい町内イベントよ」


「俺にとっては仕事なんだが?」


「でもどうせ無給ですよね?」


「それを言うな・・・」


 見ろよ、泥まみれになっても笑顔を絶やさない市民の姿を。仕事なんて考えに至った方が負けなのさ。ま、私は報酬もらえるから仕事だけど。


 動員されたトラックに全てのゴミが積み終わり、後のことは業者に任せて池の方だ。水と魚を戻せば終わりだが、その前に、


【では、しばらくの間“どろんこタイム”とします。今日しか入れない池の底で皆さん楽しんじゃいましょう!】


 と、いうワケで泥遊びタイムという名目でスタッフたちの休憩時間。やんちゃな子供たちや一部の大人が泥にスライディングしたり友達にぶつけて遊んだりしている。肌の色が見えなくなるほど全身泥まみれになる者、それをいいことにパンツまで脱いで連行される者などもいたが、大したトラブルもなく憩いの時間は経過していった。


 そんな風景を上界から眺める身分でありたかったのだが、


「さて、と」


 ここでも1つ、私には仕事が入っている。


「ホントにやるの?」


「やるもやらないも、お役所がやれって言ってんだから」


 さしもの私も、スポンサーのご意向に背くことはしないさ。


「怪我人だけは出すなよ」


「分かってますって、それ以前に“勝つな”って言われてるんですから」


「それは安心だな」


 ったく。私ぐらいになれば相手に怪我させずに勝つこともできるっての。気乗りしないながらも私は一旦池を離れて森へ入り、ボワワ~~ンっと煙玉からあるものを呼び出した。


「ま、気晴らしにはなるでしょ」


 私に任されているのは、子供たちが遊んでいる場へのロボでの強襲だ。ある程度いい感じのバトルを演じきってから負けるまでがセット。


 ガシャコン、ガシャコン、ガシャコン。


 高さ3メートルもない程度の二足歩行ロボで池へと向かう。じれったいな、飛ぶか。


 シュコーーーッ。


 早くも池に到着。


「なんだありゃ!?」


 タカシと思しき少年が気付いて声を上げた。


【ああーっと! 何やら変なロボットがやってきました! 見るからに悪そうです!】


 あからさまなアナウンスが入る。もうちょっと自然にできんのか。


「てかヤベェねーちゃんじゃん! いいトシして泥遊びかー? だっさ~~」


 あァ!? ぶん殴られたいのかこのガキぁ!?


【どう見ても悪者です! 皆で力を合わせてあのヤベェねーちゃんをやっつけましょう!!】


 おいスタッフてめーは後でぶん殴る。


「やー!」

「とりゃー!」

「えーーい!」


 早速泥を投げつけてくる子供たち。あっさりやられる訳にもいかないので、シュコー、シュコー、と空中で移動して避ける。


「そいやっ!」

「日頃の恨み、受けてみろ!」

「特に恨みは無いけど何かを全力で投げるってスッキリしそうだねぇ!」


 なんか大人まで混ざってたんだが。フザけやがって・・・まぁいい。子供にさえ負けりゃあ大人たちはボコしてもいいんだ。市民軍のピンチを演出するためにも大人たちには沈んでもらおう。


「はりゃ~~~~っ・・・!」


 ビヨーンっとロボの腕を伸ばして泥を片手ずつで掴み、一旦手中に収めて指先から発射! 光線銃を連射するがごとく四方八方に乱れ撃ちし、かつ大人だけを狙って仕留めた。


「うがっ!」

「あいたっ!」

「のぉぉわぁぁぁぁっ!!」


 ふん、他愛もない。


【ああ~~っとっ! 大人たちがヤベェねーちゃんにやられていく~~っ! ヤベェねーちゃん、ヤバい! ヤベェねーちゃん、許せない! ヤベェねーちゃん、ロクでなし!】


 てめー絶対私情入ってんだろコラ。

 とは言えど、勝ってこの場を制圧してもいけないのでそろそろシナリオに従おう。一旦着地し、


「がーーっはっはっはっは! この公園は今日から私のものよ!」


 両手を軽く肘を曲げて開いて肩も上下に揺らしながら高笑いを繰り広げた。


「がーーっはっはっはっは! あぁ~~っはっはっはっは!」


 尚も高笑いを続ける私。この隙をついて誰かが攻撃してくるのを待ってるのだが、誰も動かない。さっさとしろよ負けてやるんだから。


「隙ありっ!」


 べちょ。やっと来たか。背後から泥をぶつけられた。どう聞いても大人の男の声だったが、サクラか? と思って振り返ると、


「君津・・・!?」


 君津だった。あいつ、傍観してりゃ良いものを。どういう了見だ。


「市民を守るのが、公務員の務めだ」


 あんにゃろ・・・くだらん名分を付けて私に泥を投げる機会に乗じやがった。サクラ代わりも兼ねたのかも知れないが。

 君津にやられるのは癪だったが、ここはシナリオを守り、ロボの腕を君津に向かって伸ばしたところでスリップし、どてーんと背中から倒れた。


【ああーっと! ヤベェねーちゃん、転倒! ヤベェねーちゃん、意外とドジ! ヤベェねーちゃん、バカ!】


 よしあいつ後で事故に見せかけて泥に落とす。


【みなさん、ここで畳みかけましょう!!】


「よっしゃチャンスだー!」

「やっちまえー!」

「ヤベェねーちゃん、死ねーー!」

「えいやーーー!」


 子供たちと、普通に大人たちからも泥をぶつけられまくりハチの巣状態に。


「わあああぁぁぁぁぁ~~! やられるぅぅぅぅ~~~~!」


 と、情けない感じの声を出しながら私は抵抗せずに泥を受け続けた。操縦席からの窓は完全に塞がり、おそらく全身がもう泥に埋まった頃だろう。全く、とんだ茶番だぜ。


 しばらくすると攻撃の手は収まった。キュイィィィン・・・と虚しく動力が停止するように音を止めた。


【やりました~~~! ついに、みんなの力で恐怖のロボットを倒しました~~~!!】


 いかにもわざとらしくスタッフが言う。マジでもうちょっとセリフ何とかならなかったのか。

 でもいいや、せっかくだからこのノリに合わせて尻尾巻いて逃げるか。いかにもボロボロといった様子のカクついた動きで立ち上がり、


「今日はこれくらいで勘弁してやる! 覚えてろよ~~!」


 捨て台詞を吐いて背を向けた。すると飛び立つ前に、子供の声。


「あーいう、いかにもわざと負けましたみたいなの、冷めるよなー」


「なー」


 あ? 今なんっつったコラ?


「言ってやるなって。やべぇねーちゃんだって行政の犬なんだからさ。言われた通りにやってるだけだろ」


 あ? 誰が行政の犬だって? ナメてんのか? そんなにガチでやって欲しいんならやるぞ? あ?? どうせここでお前らボコボコにしても後でドヤされる程度だからな? あ???


 くるり、とまた回れ右してガキ共の方を見下ろした。


「お? まだやるってえのかー? や~~い、行政の犬~~」


「ワン、ワン! 言うとおりにするからもっと税金くださいワン!」


 テメェらマジ私をナメてんのか?? そんなに死にたいのか??


「お、おい、厳木!」


 本物の行政の犬たる君津が何か吠えてるな。知ったこっちゃないが。


 ガチャコン、ガチャコン、ガチャコン。


「バカ厳木! やめろ!!」


「ちょっと鏡子何する気!?」


 外野は黙ってろ。これは、私とこのガキ共の戦いなんだ。おいガキ共、この程度で終わったと思うなよ。ボスにはなぁ、第2形態があるんだよぉぉ!!


 ガチャコンガチャコンガチャコン、シュコーーーーー。


「「わぁ・・・っ!」」

「「うおぉぉ・・・っ!」」


 ロボから突然出た蒸気にザワめく周囲。どうせならイベントは楽しい方がいいでしょう? フッフッフ・・・どのみち今日は大した報酬じゃないし、この場でやらかしたって市が私に頼らざるを得ない状況はいくらでもある。


【ああ~~~っと! 何ということでしょう! ヤベェねーちゃんはまだ倒れていませんでした! 約束が違う! ただの犬ならどんなに良かったことでしょう! もうこれは犬以下と呼ぶしかありません!】


 よしまずはあいつからだ。散々言ってくれやがって。しかも堂々とマッチポンプだったこと明かしやがったぞ。ギュィィ~~~ンとロボの手を伸ばし、司会者の胴体をガシッと掴んだ。


【うわぁぁぁ~~~~!! 誰か、誰かぁぁ~~~~!!】


 中々いい叫びっぷりじゃないか。ヒーローショーのバイトもできるかもな?


【こ、こら、冗談でも悪ふざけが過ぎますよ! いいんですか! 報酬減額しますよ!!】


 それはもっと私が尻尾フリフリしたくなるような報酬を用意してから言いな。あとあんた、やっぱヒーローショーのバイト向いてない。


「まずはこいつから泥祭りに上げてやろうか~~~!」


 ザ・悪役な口調でそれを言って、司会者を掴んだままの手を泥に向けて振り下ろした。


【ぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ~~~~!!】


 司会者の断末魔の叫びが響き、そのままロボの拳ごと泥の中へ。全身泥まみれにしてやったところで外に出し、その辺にポイッと投げた。


「あ゛、あ゛ぁ゛・・・」


 他愛もない。ナメた態度を取るからだ。さて、次は、


「次はお前たちだガキ共~~~!」


 間髪入れずガキ共に向かってロボの腕を伸ばした。


「「「わぁぁぁぁぁ~~~~~!!」」」

「「「逃ぃげろ~~~~~!!」」」


 逃げ惑うガキ共。というか大人たちもパニック状態だ。


「ちょっと鏡子、もういいでしょ!」


「あのバカ・・・!」


 知らないねぇ。少なくとも私を“行政の犬”とか言ったあのガキだけは泥で3回はじゃぶじゃぶしてあげないと、せっかく泥遊びに来てくれたんだから物足りないだろうよ?


 もちろん生身の人間が走っても逃げられるはずもなく、ロボの腕はすぐにガキのもとに迫った。しかし、


「そうはさせないよ!」


 おじさんが1人立ち塞がった。確か、たまにICチップを仕入れる電子部品屋のおっちゃん。そのガキはおっちゃんの知り合いかい? いずれにせよ邪魔するんならおっちゃんにも司会者と同じ目に遭ってもらわないとねえ。


「これが何だか分かるかい!?」


「ん?」


 手に、何か持ってるな。スイッチか?


「僕は、君が街の人が困ってる時に助けているのを嬉しく思っている! たとえお金を取るんだとしても!」


 そりゃどうも。で?


「だけど、こんな風に迷惑を掛けるのは見過ごせない! それも、僕が売っている部品を使って!」


 なるほど、その気持ちは分かる。で? そのスイッチは?


「こんなこともあろうかと、君に売る商品には自爆装置を付けさせてもらっている!!」


「は・・・!?」


「もう、君は僕とは取引してくれないかも知れない・・・だけど! そうしてでも街のみんなを守る義務が僕にはある! 市からお金をもらって君への商品に自爆装置を付けてるから!!」


「あぁ~~~~ん!!?」


「悪く思わないでくれ!! こっちも行政の犬なんだ!!!」


 クソっったれがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


「一生に一度の切り札、今ここで使わせてもらう!!」


 ポチッ。


 ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!


「ぎゃああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」


 強烈な轟音と衝撃と共に、私は外に投げ出された。


「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛・・・・・・」


 そして、縦に鋭い放物線を描いて重力に引かれ降下を始める。


「くっ、そ・・・!」


 このまま泥に落ちてたまるかよ。早くバルーンを出して・・・


「キョウコーーーーーーッ!」


「え・・・!?」


 この声は、クーロン君・・・!?


 がしっ。


「うあっ!」


 気が付いた時には、後ろから羽交い絞めにされていた。


「ちょっと、何! 今忙しいから離して!」


「そうもいかなイ! キミツ先生から美味しいモノもらえる約束だかラ!」


「はぁァ!!?」


 あいつ、クーロン君準備してたのか! しかもまた買収しやがって。


「待って待って! 私がもっと美味しいものご馳走してあげるから!」


「先生とコームインには逆らわない方がいいって管理人のおじちゃんが言ってたゾ!」


 あんにゃろ、余計なことを・・・!


「覚悟はいいナ、キョウコ!」


 どいつもこいつも、行政の犬になりやがってぇぇぇぇ!!


「ヒトセン流、武術!」


「ちょ、待っ・・・!」


「地獄旋堕 (ジゴクセンダ)!!」


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」


 そのまま、後ろ方向にぐるぐると、バック宙返り何十回転分も回りながら高速回転で地面へと向かっていった。目は開けられないし方向感覚は狂ってるけど、向かうなら真下だろう。その証拠に、後で私は泥まみれで横たわることになるのだから・・・。

新生! コバルトブルー池!

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