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第5話:プランE

 翌日、午前10時。

 窓咲駅前に集合。時間ちょうどに着くと、みんな揃っていた。


「あ、厳木3秒遅刻~」


「黒田くんの時計が進んでるだけよ」


 黒田くんが白鳥さんに耳打ち。「厳木って自分の失敗認めないタイプだよな」だそうだ。聞こえてんぞ黒田。


 さっそく映画館へ移動。


「あ、嘘! 席、2人ずつに分かれるみたい」


「あ、マジ?」


「鏡子はあたしと来なさい。何しでかすか分からないから」


「もっと親友を信じて欲しいものね」


「あなたがマッドサイエンティストだと信じてるからこそ、何しでかすか分からないのよ」


「それは光栄ね」


「んじゃ後は、俺と雪実の2人、か」


 こうでもしないとあんたら2人になんないでしょ?


「あ、うん。よろしく、お願いします・・・」


 白鳥さん、頑張れ☆



 上映時間も近かったので、すぐに二手に分かれた。もちろん、2人の様子が見えるように私たちが後ろの席になるようにしていた。


「なんかもうあの2人ほっといても大丈夫そうだけどね」


「何言ってんのよ。お互いを意識してからが大変なのよ」


「はんっ」


「いま鼻で笑う要素あった?」


 映画はもちろん、ラブストーリーだ。何が悲しくて鈴乃と2人で見なければならないのか。


(何が悲しくて鏡子と2人で見なきゃいけないのよ) by大曲鈴乃16歳


【やっぱさあ、雪実は、こういう映画、好きなのか?】


 白鳥さんに仕込んだ盗聴器から、そんな音声が聞こえてくる。おいおい、随分とブッ込んだこと聞くねえ黒田くん。


【あ、うん。やっぱり、ちょっと、憧れちゃうかな、って】


 おぉ~~。それ、“純ちゃんに期待してる”って言ってるのかな?


【へ、へぇ~。なるほどな】


 で、黒田くんは、このラブストーリーを参考にしてしまう訳だ。なんか面白いことになりそうで腕が鳴りますねえ。



 で、映画の方は超ベタなラブストーリーだった。謎の組織に追われていたヒロインを通りすがりの主人公が助け、しばらく匿うも居場所がバレて騒動に発展、最終的には組織の連中をやっつけてハッピーエンドだ。

 いやーしかしあの主人公、周りにたくさん人がいる前で堂々とプロポーズ、男だねえ。


 白鳥・黒田の(未来の)カップルの様子はと言うと、いい感じのシーンでは白鳥さんが画面に釘付けで黒田くんがチラチラと白鳥さんに目を向ける、そのシーンを通り過ぎた後は黒田くんから緊張感が抜けて白鳥さんがチラチラと目を向けると言った具合だ。映画以上に見てらんねえ。

 それとポップコーン取ろうとして手がぶつかった時の2人の反応が・・・お前らそれでも高校生かよ。



 白鳥・黒田カップルと合流し、昼食へ。はっきり言って、このメンツでラブストーリーの感想を言い合う気分にはなれない。


「これからどうしよっか?」


 事前に鈴乃と打ち合わせていた通り、これからどうするかを振った。


「せっかくだから適当に遊んで帰りましょうよ」


 台本通りのセリフを返す鈴乃。


「そうだな。せっかく集まったのに映画だけなんてもったいないよな」


 アドリブで乗っかる黒田。


「私も、時間は大丈夫」


 黒田と一緒にいたいから乗っかる白鳥さん。よし決まりだ。



 ハンバーガー屋を後にし、駅ビルから出た。ここで、


 タンタラタンタラタタララララララ♪


 私のスマホの着信音が鳴り響く。


「もしもし?」


【あ、鏡子? ちょっと今から手伝って欲しいことあるんだけど来れる? でも1人だと足りないかもだから、そうねえ、鈴乃ちゃんも呼べるかしら?】


 母親の声で、娘と、その友人さえもパシるというクズみたいな内容の電話だが、これは私が作った音声で、周りにも聞こえるようにしてある。”偶然”を必然的に作り出すのがマッドサイエンティストさ。


「そ、分かった。じゃあ今から鈴乃連れて行くわね」


 そこで通話を切った。


「ごめん、ちょっとお母さんに呼ばれちゃって、鈴乃と私は、これで買えるわね。2人で遊んでったら?」


「ごめんね、雪実、黒田君。また今度ね」


「あ、うん」


「あ、ああ。またな」


 2人ともポカーンとしている。突然2人っきりになることを想定してなかったんだろう。でも頑張れ?



 私と鈴乃は駅の方に消えた後、さっきのハンバーガー屋にまた入った。


「よし、ここからが正念場ね」


 私はテーブルの上にトン、とタブレットタイプのPCを置いた。


「あんた堂々と盗聴とかウォッチングとかするわよね」


「マッドサイエンティストだから仕方ないでしょ」


「理屈になってないんだけど」


「マッドサイエンティストに理屈なんてないわ」


「サイエンスに理屈はあるでしょ」


「細かいことはいいじゃないの。別に街中での1コマを見るだけで、機密情報見る訳じゃないし。ここで2人がどうなるかで次のアプローチが決まるんだから、ちゃんと見とかなきゃね」


「まあ、それはそうだけど・・・」


 PC画面に、2人の様子が映し出される。


「お馴染みのコバエ型ドローンね」


 鈴乃は何度もお目に掛かってるコバエ型ドローン。運転は私の脳内で自由にできる。


「いつも思うけどあんたそれ、普通に企業で製品だせるんじゃないの?」


「大人どものビジネスに使われるなんてゴメンよ。私は自分さえ良ければそれでいいの」



 さて2人のご様子だが。


【えっと、どうしよっか・・・】

(やっべ雪実と2人とかどうすりゃいいだ・・・。でもこいつ、改めて見ると可愛いよな・・・アリなんじゃないのか・・・?)


【えと、・・・私はまだ、帰りたく、ない、かな・・・】

(どうしよう・・・。チャンスなんだけど、どうすればいいか分からない・・・)


「おっとぉ~、白鳥さん攻めるねぇ~」


「あの子、いつの間にあんな積極的に・・・」


【と、とりあえずどっかでお茶でもすっか】

(やべぇ~~~! いま雪実なんつった!? 殺す気かよ!?)


【う、うん】


「さっき飯食ったばっかなのにもうお茶ですか、お2人さん」


「2人とも動揺してて、全然気付いてないわね」



 で、喫茶店に入った2人。さて、何を話すのかな?


【さっきの映画、面白かったよな?】

(と、とにかく、何か話さねぇと)


 ここで映画の話を振ったーー! 黒田、あんたも中々に強者だな。


【あ、う、うん・・・】

(え、あの映画の話!?)


 映画の内容を思い出したのか、顔を赤くして俯く白鳥さん。


【そ、その、雪実は、ああいうのに、憧れてるのか・・・?】

(げっ、何聞いてんだ俺!? こんなんドン引きされるに決まってんじゃん)


 黒田お前~~~! 鈴乃も、「ちょっ!」とか言ってPCにつかみかかった。ちょっと、私のPCは悪くないでしょ。


 プシューーー・・・。もう白鳥さん、壊れそうだよ。いやぁ、ラブストーリーなだけあってキスシーンは濃厚だったからねぇ。


【う、うん・・・。私も、ああいう恋愛は、してみたい、かも・・・】

(そんなこと聞かないで~~! でも・・・)


 白鳥さーーん! この人も負けじと相手を落としにかかっている。これ、歯止めかかるのか?


【そ、そうか・・・】

(やべぇ、やべぇ! 超可愛い! これはアリなのか!? アリなんじゃないのか!?)


 そこへ、飲み物が運ばれてきた。


【あ、飲み物きたよ。飲もう!】


【あ、ああ、そうだな!】


 喫茶店でこんな勢いよく飲み物に手を付ける人、初めてみたよ。


 しばらくは無言の2人だったが、


【な、なぁ、この後だけど、】


【う、うん】


 2人の間に緊張感が走る。いいぞ、黒田。


【もうちょっとブラブラしないか? その、買い物とか、あればだけど】

(と、とにかく脈あんのかないのかハッキリしねぇと。このままじゃ心臓に悪い!)


【・・・! う、うん・・・。純ちゃんが、時間大丈夫なら・・・】

(純ちゃんから誘ってくれるなんて・・・)


【じゃ、じゃあ、決まりだな】

(マジ!? マジなのか、これ!?)


 2人は喫茶店を出た後、商業施設“ニャルイ”に入っていった。私のコバエ型ドローンもその後を追う。


「あー、何だろこの感じ。ラブストーリーよりもよっぽど濃いもの見せられてる気がするんだけど」


「いい勉強になったんじゃないの。あんたも人の心を学んだ方がいいわ」


「それは私の研究対象外なのよ」


 さてウォッチングに戻ろう。ニャルイの1階には、宝飾品売り場。


【わぁ・・・】


 白鳥さんが目を輝かせて見る。


【な、なあ、やっぱ女子って、そういうのが好きなのか・・・?】


 何聞いてんだ黒田。


【えぇ!? ・・・う、うん、その、こういうのプレゼントされるのは、女の子の憧れ、かな・・・?】


 何答えてんの白鳥さん。


 そんな感じで、終始2人はお互いを意識する感じで、ニャルイの中をウロついていった。1番の名シーンはあれだな、かんざし屋さんで店員に促されて試着した白鳥さんを見た黒田が「マジ可愛い・・・」と呟いたところだな。白鳥さん顔を手で覆っちゃったよ。店員さんの微笑ましいものを見る目も、中々に面白かった。



 そんなこんなで、夕方の4時半を迎えた。


【きょ、今日は、これぐらいにすっか】

(もうマジこれ以上俺の身がもたん・・・)


【う、うん。今日は楽しかった。ありがとう】

(ああダメ、このままじゃ終わっちゃう・・・。次、ちゃんと誘わないと・・・)


「さあどうするんでしょうかねぇ、お2人さん。昨日と今日は私と鈴乃が会う口実作ったけど」


「何あんた楽しんでんのよ。ちゃんとやりなさいよ?」


「分かってるわよ。でもこのまま解散になったところで、私が適当に巻き込んで会わせりゃいいんだから問題ないわ」


 私の学校での立ち位置を考えれば、“気に入った”とか何とか言って執拗に黒田くんを誘い続けることもできる。使えるものは自分自身だって使う、それが私だ。


「それはそうかも知れないけど・・・」

(それが鏡子の嫌なところよね) by大曲鈴乃16歳。


【あ、あの!】


 お、白鳥さんが大きな声を出したぞ?


【ん? どした?】

(まさか、ひょっとして、ひょっとするのか!?)


【その、純ちゃんさえ良かったら、また今度…】


【ザーーーーーーーーーー】


 あ?


「ちょっと、どうしたのよ、いいトコだったのに」


「あちゃー、カラスに食われちゃったかー」


「はあ?」


「しょうがないでしょ。見た目完全にコバエなんだから」


「にしても、タイミングってもんがあるでしょ」


「文句はカラスに言いなさい。すぐに第2陣を送るわよ。ニャルイ前の歩道橋広場ね」


 私はポケットの中からコバエ型ドローンを取りだし、発進させた。


【そんじゃーなー!】


【うん、またね】


 もう別れのシーンになっていた。


「間に合わなかったかー」


「さっきの映画で言えば、プロポーズのシーンをカットされた感じね」


 白鳥さんは黒田くんを見送った後、すぐにスマホを操作し出した。もしかした相手は黒田か?


 ポロロン、ポロロン、ポーーン♪


 チャット風のSNSアプリ、”SHINE(シャイン)”のメッセージが届いた。


<昨日も今日もありがとう。実は、来週も、純ちゃんとデートすることになって・・・。最後まで、よろしくお願いします!>


 ううぇえ~~~い。


「やっぱ最後のあれ、黒田くんをデートに誘ってたのね。やるじゃない白鳥さん」


 マジ白鳥さんの台詞ヤバかったからね。あんなん、どんな男でも脈感じちゃうでしょ。


「ここまで来ればあと一歩ね。2人が無事に付き合えるように頑張りましょ」


 てかこれ以上、私たちの干渉、いる?


次回:黒田あああぁぁぁぁ

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