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夫婦喧嘩で最強モード  作者: 長谷川凸蔵
第1章・帝都編
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犯人

 街中で騒ぎがあった翌日、召し使いが告げてきた皇女の突然の訪問に、カルミックは慌てた。イーロン家が名家だとはいえ、皇族が自宅に訪問する事など通常無いからだ。


 訪問はお忍びらしく、馬車ではなく徒歩で、2人の従者らしき人物を伴ってとの事だ。とはいえ訪問を断る訳にもいかないと召し使いも判断し、すでに客間で待っているとの事だ。


「お待たせしました」


 そう言って入室すると、ミルアージャ、リック、そしてカスガが部屋にいた。カルミックは召し使いに自分用のお茶を頼み、ミルアージャの向かいに着席する。


 お茶が用意され、一口飲んだあと話を始める。


「用件があれば、本日学校でおっしゃっていただいてもよろしかったのに」


「あまり人目が無い方が、そちらにとってもよろしいかと思いまして」


 そう言ってミルアージャはチラリと召し使いを見る。人払いをしろということだとカルミックは理解して、退出させる。


「それで……ご用件は」


 カルミックが話を促す。


 するとフッフッフッと笑いながらカスガが突然立ち上がる。


「神学術者連続失踪事件犯人カルミック! あなたを捕まえに来たのよ!」


 そう言ってビシッと指をさす。


「え……」


 カルミックが言葉を失っていると


「なーんかあなた怪しいと思ってたの! 私に変なこと色々聞いてくるし! しかも犯人はかなりの魔術師! さあ動機含め一切合切シャキッと話しまくって!」


 カスガが言葉を続ける。


「いや、何か勘違いしてるのでは……君に色々聞いてたのは……」


「とぼけないで! 昨日の現場に私たちもいたんです!」


 とカスガが話していると


「チャウチャウ……」


 とミルアージャが回りにはほとんど聞こえないくらいの声で呟く。


 何か言ったのだけはわかり3人が見ると、ミルアージャは下唇を思いきり噛みしめながら目を瞑ってプルプルと震えていたが、おもむろに頬をパン!と叩き表情を戻し


「彼ではないわ」


 とカスガの話を否定する。


「ええっ! ミルアージャ私にイーロンが犯人だって言ったよぉ!」


 カルミックが居ることも忘れ、カスガがタメ口でミルアージャに詰め寄る。


「言ったわ。でも家名で言うときは通常当主を指すわ」


 カスガにミルアージャが話したあと、カルミックを見て聞く。


「あなたのお父上が、神学術者連続失踪に関わっている可能性が高いです。もし何か心当たりがあるなら教えて頂けますか?」


「その前に……なぜ父が事件に関わっていると思ったのですか?」


「……昨夜、私たちは騒動の現場に居ました。その時騒動の犯人は覆面をしていましたが、私は相手の目を見ました。私は人の顔の特徴は見間違えません、あれは貴方のお父上です」


「なるほど……わかりました。全ては遅かったのですね。間に合わせる事が出来なかった……」


 そう言いながらカルミックはお茶が入ったカップをしばらく揺らしていたが、一気に飲み干したあと、語り始めた。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 四年前、ネリア王国との戦争から帰還したカルミックの父キャレイブは、それまでよりも書斎に籠る事が多くなった。


 カルミックへの指導も減り、何か考え事をすることが多くなった。


 それまでの熱心な指導が減り、不思議に思っていたカルミックは、父の書斎で不思議な物を見つける。


 人体の一部のような、不思議な肉片、たが不思議なのは、いつまでもその肉片が動いていることだ。


 あまりにも不気味なのでカルミックは魔術で密かに処分することも考えたが、肉片は解析を受け付けない。かといって破棄するのも躊躇われた。何か起こってしまう気がして。


 そのうち父の書斎から、話声が聞こえてくるようになった。


「その時、部屋の外でこっそり聞き耳を立てていたので全ては聞こえなかったんですが、『力』や『移植』という言葉が聞き取れました」


 そう言って、カルミックはカスガに向く。


「だから……君に父への説得をお願いしようと思ったんだ。そんなもの移植できないと。他の神学術者だと、話が広まり、イーロン家に不都合が起きるんじゃないかと。だから地方から来た君に接触した」


 ただ、リックの存在が障害に思えた。ネイトとの関わりが深いらしく、ネイトに伝われば、イーロン家は何かしらの罰が与えられるだろう。


 だからカスガにどうにか上手く事情を伝え、協力をお願いしようか考えていたところだった。


「父は……確かに優れた魔術師です。でもネイト様がいる限り、自分が帝国筆頭になれないことくらいわかっていた。でもその父が『極める』などの言葉を多く使うようになりました。違和感がありました。我々にそんなの無理なのは、一番わかっていたはずなのに」


 何とかできないか、その思いから大学も卒業を延期し、魔術師としての腕を磨いた。せめて自分がネイトを越えれば、父も目が覚めるのではないかと。でも全ては無駄に終わった。


 そこまでの話を聞いて、ミルアージャが質問する。


「予想で構いません、その肉片とは何なのですか?」


 ミルアージャの問いに、答えると我が身に何か降りかかるような、そんな予感すら覚えて……震えながら……躊躇うようにカルミックは答えた。


「恐らく……『闘神』の一部……」




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