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夫婦喧嘩で最強モード  作者: 長谷川凸蔵
第1章・帝都編
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友人として

 この世界での信仰は、実利的かつ実践的だ。


 祈れば、神は奇跡を起こしてくれる。では信仰とは、神の教えとは何か、カーリ神父は考える。


 彼が個人的に好ましいと思う人物も、極端に好ましくないと思うような人物も、同じ怪我をし、彼が祈れば、神は同じように治癒してくれる。


(つまり、人の在り方に頓着がないのだろう)


 教会の一室で蝋燭の火を灯りにし、手に持った本はただ手に持ち、思考に耽りながら次々と疑問を思い浮かべる。


 彼はこれまで人を癒す為に、何千回も、何万回も祈ってきた。奇跡を施し、人々に礼を言われるのは勿論嬉しい。たが神は奇跡は与えてくれるが、彼の質問には答えない。


 つまり我々は、どうするべきなのでしょうか、と。


 揺れる蝋燭の火を見ているせいだろうか、同じように彼の信仰も揺れる気がする。そんな馬鹿馬鹿しい妄想が現実のように感じられ、蝋燭の火を消そうか迷う。


 本を持っていない右手で、火消し道具を手のなかで遊ばせながら


(やはり、馬鹿馬鹿しい考えだな)


 そう思い、道具を机に置く。


(神よ本を読む集中力を与えてくれませんか、貸本の返却期限は明日なのです)


 大したことが無いことを、大袈裟に神に祈る。結局大したことではないので、奇跡は起きない。


(奇跡のみに頼らず、本人の努力が必要だと言うことだな、神は優しいが、甘やかさないと言うことか)


 それは理想の親のようなものだ。理想の親なら、信仰の対象とする価値はあるだろう。ならば今私ができることは、集中し直し、本を読むことだ……などとカーリ神父が考えていると……


 突然、彼は自分が誰かの認知範囲に入ったと感じた。


「誰だ、こんな街中で……」


 解析が進むのを感じる。だが彼は普段から魔術による戦いなどを訓練しているわけではない、一般人だ。


 勿論彼自信が神学術を使うために患者を解析することはあるが、とっさに反論しようとするためではない。


 相手は呪文を使ったようだ。ふっ……と蝋燭の火が消える。カーリが倒れた勢いで。




 翌日、貸本は返却されなかった。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


「護衛ですか? 僕が」


「ええ」


 リックの疑問に、皇女の執事が答える。


 ザックとベルルスコニのケンカも今は落ち着き、全員ネイトの屋敷へと戻って来た。


 応接室でテーブルを挟み、ミルアージャと背後に立つ執事、リックとカスガがそれぞれ向かい合っている。


 アルルマイカは応接室の入り口で、全体を見渡すようにやり取りを見ていた。


 先程の騒動の中心である二人は、屋敷の応接室の隅でネイトに怒られながらシュンとしているが、そのうち反省もなく復活することを知っているので、リックは特に感想はない。


「姫様は、護衛が必要とするお立場です」


「まぁ、それはそうですね」


「特に外出時。本日はアルルマイカ様に付いてきて頂きましたが、お忙しい方で、常にという訳にはまいりません」


 その理屈はわかる、だがリックは当然と思う疑問を口にする。


「城には、専任の護衛はいないのですか? 登校時は数名同行しているようですが」


「おります。ただ本日のように突然のお忍びでの外出の場合、専任の護衛はむしろ警備上の安全が担保できないなら外出を諌め、止める立場ですな」


「あなたは止めないんですか?」


「姫様の外出癖は、あなたのご両親の先程の戦いに似ております、つまり…」


「止めるのは不可能、ってことですね」


「はい、専任の護衛はむしろ姫様にとっては外出の障害でしかありません。本日はアルルマイカ様に依頼することによって、護衛も納得しておりますが。問題は護衛が納得しなくても、外出は強行されるということです」


「一人で飛び出そうとする、と」


「左様です、なので私としては最低限お一人はお連れくださいと常々諌めておるのですが、姫様は護衛なんて自分より強くなければ邪魔なだけだと」


「話は、大体わかりました、つまり」


 リックが一旦区切り、続ける


「ミルアージャ様より強くて暇そうだから、我が儘に付き合ってあげてくれないか? ってことですよね」


「言葉を選ばずに言えば、そうなりますな。勿論失礼の無いように言葉を選んだつもりでしたが」


 話題の中心であるミルアージャは、特に気にした様子もなく優雅にお茶を飲んでいる。


「あのー」


 黙ってやり取りを見ていたカスガが、口を挟む。


「それって、友人としてたまに外に遊びに連れていってあげて、じゃダメなんですか?」


 ミルアージャがピクッと反応し、呟く。


「友人として……」


「ネイトさんに聞いた話ですが、初代皇帝陛下は気さくなお方で、公の場で無ければ友人として、ネイトさんたちともお付き合いしてたみたいですけど」


 その話が聞こえたのだろう、アルルマイカが懐かしそうに、表情を変えたのをミルアージャは見逃さなかった。


「しかし友人としてとなると、責任感という観点からは多少不安ですな」


 執事の問いかけに


「リッくん……リックは、友人をないがしろにするような人じゃないです、それは私が保証します、私の保証なんて、大したことではないのは承知していますが」


 カスガが珍しく真剣な表情で答える。


 事態の推移を、一番の当事者にも関わらずどこか超然と見守っていたミルアージャが、口を開く。


「リックさん、カスガさん、もしよろしければ私と……友人になって頂けませんでしょうか。そしてたまに、外出などに付き合って頂ければ、嬉しいわ」


 リックが答える前に、カスガが答える。


「うん、でも友人ならできるだけ敬語は無しでいきません?。面倒だし。勿論他に人が居るときは別として」


 リックは友人としてという話を持ち出した理由がわかった。要するにカスガは敬語が面倒なのだ。護衛なら敬語は必要だろう。だがカスガがそれを望むならそれでいい、リックも続ける。


「僕も構いませんよ、暇なとき付き合うくらいなら」


 リックも続けて答える。


「ありがとう」


 ミルアージャが答える。


 ウンウンと頷いて、カスガが今日一日思っていた疑問を口にする。


「じゃあ早速友人として聞いちゃうけど、なんで朝肩をバシバシ叩いてきたの?」


「嬉しかったのです、修整されたので」


 笑顔でミルアージャが答えた。意味がさっぱりわからなかったので、カスガの疑問は解決されず、ただ深まった。


 話をこっそり聞いていたネイトとアルルマイカは、シュザインに振り回されながらも、充実した日々を思い出し、リックとカスガが同じような日々を送れることを、そして同じようにミルアージャが楽しい日々を送れることになれば良いなと思った。



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