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夫婦喧嘩で最強モード  作者: 長谷川凸蔵
第1章・帝都編
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演じた役割

 ノスト大学の敷地内にある屋内訓練場。レンガ造りの建物の床は木の板が敷き詰められており、今集まっている100人ほどがお互いに武術の訓練しても、隣を気にしなくてもいいほどには広い。


 各自が武器を持ち、向かい合って構えている。


(参ったな……初めてだよ、これは……)


 ノスト大学の基礎武術クラスの講師を勤めるカーマは、自分の役割を完全に把握していた。


 新入生の、鼻っ柱を折ること。


 在学中にカーマを越えていくものは、勿論、多数いる。それだけの素質を持つものが、この大学には集まってくる。


 自信が、ともすれば慢心に変わることは、この学校でも、戦場でも見てきた。そして慢心は油断を招く。学校なら良い。戦場なら単純に死だ。


 自分が死ぬならまだいい。たが己の油断が、仲間や、同僚や、友を死なせた時に心に残る傷は取り返しがつかない。


 自分に残った消えない傷を、せめて、教え子にはつけさせたくない。


 その為には、ここで叩き伏せておく。少なくともここで叩き伏せてられ、挫折を感じても、それは治療できる傷だ。


 だから相手に打ち込ませ、そこをカウンターを取る。自分の攻撃が通用しないと知った多くの新入生は、恐慌をきたし、自滅する。


 それが何時も、カーマが行ってきた事だ。


 ただ、目の前にいる新入生は、講師を始めて10年でも、別格だ。


 模擬戦で使う剣は、魔力の伝達を「抑える」働きを持っている。


 通常魔力を武器に通す時、魔力の増幅力が高い「魔鉱」の純度が高いほど良いとされる。


 魔石から不純物を取り除いて精製する白金色の金属「魔鉱」は、武器は勿論、一部のアクセサリーにも使用される。


 魔鉱は魔力増幅効果の高い有用な金属ではあるが、武器としての使用には欠陥もある。


 まず魔鉱自体は固い金属では無いので、魔鉱の純度が高すぎると武器が壊れやすくなる。銅よりも柔らかいので、加工はしやすいがその分耐久力に問題が出てくる。


 そして、非常に重い。魔鉱のみで作られた武器は重すぎて、通常の筋力での使用は困難だ。


 鉄自体は魔鉱程ではないが魔力の伝達能力があるので、混ぜて作るのが普通だ。


 魔鉱のみで武器を作成した場合、増幅率はおよそ150%、鉄のみで武器を作成した場合、伝達率はおよそ20%程度だ。合金化しても増幅率は各々の比率でほぼ計算できる。


 噂によると隕鉄で作られた一部の武器は、固さと伝達率を兼ね備えていると言われているが、カーマは見たことがない。


 魔力で武器を強化すれば、勿論魔鉱の比率が高くても簡単には壊れはしないが、ずっと魔力を通し続けるのは疲労が激しいので現実的ではない。


 攻撃のインパクトの瞬間に魔力を込めるのがセオリーだ。


 模擬戦用の剣には、魔鉱が8%ほど混ぜてある。つまり魔力は約30%ほどしか伝達しない。


 だが、目の前の新入生が持つ武器から感じる魔力は、自分が普段万全の状態、武器で戦う時以上のものだ。


 まず、セオリーを無視している。インパクトの瞬間では無いのに、魔力を込め続けているからだ。


 構えも、見たことがない。足を前後に大きく広げ、体を沈み込ませるようにしている。両手で剣を持ち、顔の横から自分の背後に隠すようにしている。


 攻撃に特化した技なのだろう。


「では……行きます!」


 新入生が言う。


 うん、やめて。確かに打ち込んで来いって言ったけども。


 カーマの思いは無視して、新入生が打ち込んで来る。その瞬間、カーマが過去に感じたことがないほどに、新入生の魔力が膨れ上がる。


 あ、そうなんだ、さっきのは特別魔力込めてたってわけじゃないんだねこんちくしょー。カーマが頑張って障壁を張ろうとした次の瞬間。


 パキィイン!


 剣が魔力増幅と武器を振るスピードの負荷に絶えられずに、根元から折れた。


 折れた剣がくるくると回りながら斜め上に飛び、練習場の屋根を凄まじい爆音と共に一部破壊し、外に飛び出していく。


 後で聞いたところ、怪我人もなく無事だったらしい。


 他の新入生が固まる中、事態を収束するためにカーマが発言する。


 新入生ーーリックの肩に手を置いて言った。


「……替えの剣が無いから、君、見学で良い?」


「あ、はい」


「なかなかの打ち込みだった。武器が恐らく傷んでたんだろう、気にすることはないよ」


「はい、ありがとうございます」


 ウンウンと頷いて、カーマは他の生徒の所に向かう。


 その背にリックは


「すみませんでした、ちゃんとした剣を使うのは初めてで……いつも見てた人の真似をしてみたんですが……」


 と、声をかけた。


 カーマは振り向き


「誰にでも、最初はある。戦場なら失敗は許されないが、ここはそれがまだ許される場だ……反省は必要だが気にしなくていい」


「は、はい!ありがとうございます!」


 ウンウン、とカーマが頷く。


 今までほぼ独学で修行していたリックは、素晴らしい師との出逢いに感激した。


 その後。


 剣を折りつつ、弾き飛ばした威力で屋根を破壊するほどの、強力な障壁を張る実力者だとカーマの事が新入生の間で噂になった。


 色々な人に直接尋ねられたが、彼は謙遜してるのか、微笑むだけだった。


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