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夫婦喧嘩で最強モード  作者: 長谷川凸蔵
第1章・帝都編
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孤独な戦い

カスガの一人称視点となります。

 学校が終わり、寄宿舎に戻った夜の事、ルームメイトのフランが


「カスガさんのお知り合いの方で、今日から学校に来られた……あの……リックさん?素敵な男性ですわね……どのような方なんですか?」


 そう言って顔を赤らめながら質問してきた時、私は自分が最近ほんのり感じていた失策をはっきりと確信した。


 1年前、学校を卒業したら何をするのかリッくんに聞いた。


「今とあまり変わらず、狩りをしたり村の人に頼まれたら農作業を手伝いかな~そもそも週一しか通ってない学校を、卒業したところであまり変わらないし」と答えた。


 当初、片道5時間かけて通っていた学校だけど、成長につれて超人的な体力と魔力を身に付けたリッくんなら、歩いて1時間、走れば20分で学校まで通えることを私は知っていた。


 ただわざわざ、本人にもっと学校に来たら?とは指摘しなかったし、学校にリッくんたぶんもっと来れますよとも報告しなかった。


 ご両親からあまり目を離さない方がよろしいんじゃないですかね~という軽い誘導はリッくんにしたけど。


 つまり今、目の前にいるような女どもから隔離するだめだ。


 週に一回、リッくんが来る日の学校は、前日から「明日リック君来るね!」と多くの女生徒と、一部男子がそれはもう煩かった。リッくんが帰ると、ため息の嵐だった。一週間が長いと愚痴が凄かった。


 まず、エルフの血のせいか、リッくんは顔が整いまくっている。


 特にベルおばさま似の相手を見透かすような切れ長の目、妖しく輝くシルバーブラウンの瞳は、見るものをその目で捕らえ、強く惹き付ける。


 その上、破壊神の様な両親とは違い、性格もザ・温厚いやジ・温厚。私も長い付き合いの中でリッくんが激昂したのを見たのは一度しかない。


 そう、リッくんはきっとナチュランボーン女たらしなのだ(一部特殊な男性含む)。


 ……というのは、あくまでも勝手に私が思っているだけのことで、実際は、そうでも無いのかもしれない。親の欲目(よくめ)的なものなのかもしれない。親じゃないんだけど。


 もしかしたらクラスメイト達は、週一回が珍しいから噂してただけかも知れないし、単純にリッくんがいい人だから残念がってたのかも知れないし、単純にリッくんの目が私から見れば「ほんと綺麗な目してるなー、くりぬいて保存液の中に浸ければ、猟奇的な好事家が集まるオークションでもあれば、良い値段がついちゃいそう」と思ってしまうだけかも知れない。


 私にリッくんを独占したい、という気持ちは無い。いや自分以外の人間がリッくんを独占したり、利用してもいい、ということではない。


 私は、リッくんは何か大きな事を、この世界で成し遂げる人物だと思っている。


 リッくんはこの世界で、他の人とは違う特別な存在だと思っている。


 少なくともあの笛を渡された日、仲の良い友達から、特別になったことを私は確信している。


 だから私は、リッくんが田舎に引きこもるような生活をすると言ったのを良しとしなかった。


 一緒に大学に通おうと誘おうとも思ったが、出席日数が単純に足りなかったし、リッくんが自分の実力を表に出すのを恐れているのを知っていた。


 両親のように、周囲を怖がらせない為だ。


 私に言わせれば、その両親だって素敵な2人だ。確かに村に損害は出すが、それ以上に貢献している。……たぶん。

 

 いつだかも、山賊が村に襲撃してきた時も、ベルおばさまが撃退してくれた。村の一部が、津波に襲われたようになりはしたが。


 ザックおじさんには何だかんだ3年くらい会ってないが、記憶の中でベルおばさまと喧嘩してない時にベルおばさまを見る目は、優しさに満ち溢れていた。


 だから私は、どうにかして帝都に来たリッくんが、このままここに居てくれないかと思った。


 リッくんが何かを始める、何かの切っ掛けになればと思った。外の世界を見れば、何かが変わってくれるんじゃないかと期待した。


 隣村の親戚のおじさんが同行すると言ってくれたのを断る事にして、リッくんが来てくれると言ってくれて嬉しかった。


 ネイトさんの家に住むことになったのは、とても嬉しかった。村を出た時には考えられないほど事態は好転している。


 でも……そう、多くの人が彼に触れたら、多くの人がリッくんが特別だって事に気が付くかも知れない、彼が特別だと、みんなに知られてしまうかもしれない。

 

 それが頭に無かった。


 一緒に学校に通える、それが楽しみで浮かれていたのかも知れない。


 それが、失策だ。


 彼が特別だと知ったら……多くの人は、彼を独占したり、利用しようと思うだろう。


 特に女は、彼を独占したら、安定を求めるかも知れない。でも私は思う。彼の成すべき事は、安定とはきっと相容れない物だ。


 彼は独占したりするべきじゃない。


 でも、それでも。


 いつか彼が、誰かに独占されるなら。


 それは私だ。


 だって当然だ。私にはその権利がある。


 彼がこの世界で、特別だって、最初に気が付いたのは、私なんだもん。


 だから私が独占できないなら、誰にも独占させない。


 フランの問いに答える。


「少し前だけど、自分のひいおばあちゃんの裸見て、興奮して倒れてたよ?」


「ええっ……」


 私は世界のために、孤独に戦う。


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