序章ーある少女の悪夢
『ーーーーーーーーーー』
砂埃舞う荒野に私を抱き上げる男の、怒りと悲しみに満ちた咆哮が響き渡った。
(またこの夢……)
幾度となく見た夢。まるで上空の観覧席から見せられる演劇の上演。
腕の中にいる私は満身創痍で、その男を悲しげに見つめている。
白く光る鎧を身に着けるその男も、私を見つめ涙を流していた。
(一体あなたは誰なの?)
その青年を私は知らない。純白の鎧に映える漆黒の髪。これ程の黒髪は世界中探してもそうはいない。
全身傷だらけの私が何かを伝えようと口を動かしているが、そこから漏れるのは掠れた苦しそうな呻き声。それを見た青年は射殺さんばかりの視線を、少し離れた場所に立っている黒いフードを被った人物に向ける。
(どうして私はあんなになっているの?)
今にも死にそうな私。もう上級の治癒魔法でも助かりそうにない。
額に青筋を立て歯を剥き出しにしその人物に殺気を放つ青年と、顔色は伺えないものの夢の中の私と青年の方を向き静かに佇むフードの人物。
私の身体をゆっくりと地面へ下ろした青年は立ち上がると、取り出した剣をフードの人物へ構えて小さく呟いた。
「ーーーーーーーーーー」
その言葉は私の耳には届かない。
その瞬間、青年から黒い何かが溢れ視界が闇に包まれた。
…………
………
……
…
「また同じ夢………」
ベッドの上で目覚めた少女は小さくそう呟いた。
ROM専でしたが、始めて小説を書きました。
創作って大変ですね。
一部細かい描写を修正しました。
次回更新日は6/6 0:00予定です