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30歳の童貞魔法少女  作者: 青依 瑞雨
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30歳の誕生日がようやく終わった

「いやー、危うく大笑いするところだったぜ。危ない危ない」

 寮へ移動した僕達は、クリアとポイミンの157号室へ集まっていた。

「んで、お嬢様は、まだ出てこないのか?」

「うん、まだ部屋に閉じこもってるみたい……」

 クリアの質問に、僕は引きつった笑いで答えた。

 サルビアは、よっぽど恥ずかしかったのか、割り当てられた部屋の番号を聞くなり、一人きりで閉じこもってしまったのだ。

「まぁ、あの馬鹿はほっとけ。そんなことより、自己紹介だな」

 クリアがちらりと僕の隣にいる少女を見る。

「俺は、クリア=ジュルンベルン。で、そっちの猫が……」

「ポイミン=ラレラルンにゃん♪宜しくにゃん♪」

「僕は、カノウ=ナツキです。宜しく」

「あっ、あたしは、サツキ=ミウラです。宜しくお願いします」

 小動物のような少女が、頭を下げる。可愛らしい妹系の女の子だ。

「まぁ、チームメイトになったからには、仲良くやろうぜ!」

 クリアは、にかっと豪快に笑うと、ガサガサと封筒からしおりを取り出した。

 そのしおりには、こう書いてあった。【学園案内】

「まず、明日は入学式だな。制服で出席しなくてはいけないらしい」

「さっき、取りにいったやつにゃね」

 机の上に目をやると、そこにはクリアとポイミンとサルビアの制服があった。

「というか、なんなんだよ、あの購買は?本当に何でもあって、しかも無料って……」

「でも、下着は、縞のデザインのものしかなかったにゃん。寝巻きもパジャマのみ。誰かの趣味を疑うにゃん」

「えーっと、なんでも学園の規則みたいだよ。下着は、縞のみ着用可ってしおりに書いてある」

 みんなで顔を見合わせて、苦虫を噛み潰したような顔をする。

「魔法少女限定学園だし、何か変な陰謀を感じるぜ……」

「まぁ、今日はもう休むにゃん。普段、着ない衣装着たからわっち肩凝っちゃったにゃん」

「そだな、風呂も各部屋についてるみたいだし。今日はもうお開きにするかー」

「そっか、じゃあ僕達も部屋に戻るよ。サルビアの制服はどうしようか?」

「ああ、俺が後で渡しに行くよ。おやすみな、二人とも」

「おやすみにゃ~ん」

 僕とサツキは、二人に別れを告げると自分の制服を持って部屋に戻った。

 158号室。ここが、僕とサツキの部屋だ。

 ドアを開けて、部屋に入る。今日一日、色んなことがあった気がする。

 僕は、疲れから2段ベッドの上に行き、ベッドに倒れこんだ。

「うぃ~……、疲れたぁ……」

「ぁ、あの……お風呂沸きましたけど、良かったら先にどうですか?」

 ベッドの上でくつろいでいると、サツキちゃんから素敵な申し出があった。

 非常に疲れていたものの、ちょいと彼女に聞きたいことがあったので、僕はその申し出を断ることにした。

「ああ、いいよ。先に入っちゃって」

「あの、でも……あたし長湯が好きで……1回入ると1時間は出てきませんよ?」

「あぁ~、別にいいよ。ゆっくり入っといで」

「……では、お言葉に甘えさせていただきます。失礼します」

 サツキちゃんは、そう言って頭を下げて、バスタオルと着替えを持ってバスルームへ入っていった。

「ふぅ」

 僕は、一息つくと帽子を脱いだ。

 頭の上では、白い毛玉の塊が静かな寝息を立てていた。

「ちょっとぉ!ヴェル!起きてよ!」

 バスルームには、聞こえない声でヴェルを揺すって起こす。

 僕の声に目を覚ました毛玉の化け物は、ボンッという白い煙と共にヴェルの姿になる。

「入学おめでとう、ナツキ。ようやくスタートラインに立ったってところね」

「そりゃどうも!で、僕はこれからどうすればいいんだい?」

「どうって……普通に授業を受けて魔法を覚えて、放課後になったら図書室で調べ物をして、機会があったら学園長と話すってところじゃない?」

「……つまり、しばらくはこの学園生活を謳歌しなくてはいけないってことか?」

「そうね、それがいいわ」

「ヴェルはどうするの?」

「私は、ナツキの使い魔として、ここで一緒に暮らすわ。魔法少女は、使い魔を3体までなら部屋で買うことを許されるから。ケサランパサラン1匹で届け出を出しといてね」

「でも、3年間もここで暮らせないよ。仕事や向こうの世界での生活はどうするのさ」

「大丈夫、元に戻れたら、私が責任を持ってあの出発した場所、時間に送り届けるわ」

 しばらく無言でヴェルを見つめる。

 こちらの世界についてから疑問に思っていた。

「ヴェル、君は、この世界について詳しすぎないか?それに、君のフルネームは、ヴェル=ヴァーサルンだったよね?君もルン家の人間じゃないのかい?なんで悪魔に」

 僕の質問は、ヴェルの人差し指によって止められた。

 ヴェルが泣きそうな顔で、僕の唇に当てていた人差し指をゆっくり離す。

「ごめんね、今はまだ答えられない」

「ヴェル……」

「いつか、必ず私の用事と一緒に話すから、今は勘弁して……」

 二人の間に沈黙が流れる。

「……ふぅ、分かったよ。今は聞かない。でも、いつか絶対教えてよね」

 30歳童貞。女性には、どうも弱いみたいだ。

「うん、でも私はね、いつかナツキがアルカイダ=サンジェルンを超える魔法使いになれると信じてるんだ」

「はぁ~、なんでよ。僕は、しがないサラリーマンだった男だよ?」

「……空間を繋ぐ魔法、肉体を変化させる魔法、これは、本当にかなりの魔力を消耗する魔法よ。その二つを唱えて有り余る魔力。これは、天賦の才能よ。上手く使いこなせればきっと、彼を超えられるわ」

「ははは……、上手くいけばいけど」

 ヴェルの笑顔に愛想笑いで答える。

 僕の魔力の源は、サルビアと同じ色だった。

 つまりは、【性欲】。限りなく恥ずかしかった。

 どんだけ、僕は性欲を持て余しているんだよ……。

「さて、私はそろそろ姿を変えるわ。彼女もそろそろお風呂から戻りそうだし……」

 ヴェルの身体が、光に包まれていく。

 そして、彼女は白い毛玉に姿を変える前にとんでもないことを言い放った。

「ああ、そうそう。ナツキの性欲の魔力だけど、性器が2つになったことで、更に強大なものになったと思うわ。貴方なら、絶対に元に戻る魔法を編み出せるようになる」

「知ってたんかい!!」

 ヴェルは、姿を毛玉に変えると、大きな欠伸をしてすぐに眠ってしまった。

「まったく……。いつも眠そうにしてるよなぁ。ヴェルの魔力、睡眠欲なんじゃないか?」

 そんなことを考えていると、バスルームのドアが開く音がした。

 どうやら、今後のことを考えるのはここまでのようだ。

「結局は、自業自得だ。元に戻ること、それを第一優先に考えるとしよう」

 僕は、そう呟くとこの学園で元に戻るまで生活することの覚悟を決めた。

とりあえず、しばらくはお休みです。

反響が良かったら、続きを書きます。

反響が悪かったら、ここで打ち切りということで……。

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