滅ぶべし!こんな世界!
とても不愉快だった。
本来ならこの程度どうでもいい筈なのに。
こういった事は知らないだけで、今回に限らず起きている事だ。
それに俺の作った世界の人間の一人二人どうなろうとどうでもいい、と・・・。
今までそう思っていた。
なら、この不快さはなんだ?
簡単だ。
情が移ったというやつだ。
フェーナの過去を見てしまったから。
だが、未だ冷静に考えられない神はその不快さに苛立つ。
「お前が誰だって?知るわけないだろっ。ばぁ~~~か」
「いや、俺コイツ知ってる知ってる。ただの馬鹿だってな」
そしてその苛立ちは周囲の男達とこんなやつらが存在する自分で作った世界に向けられた。
この世界はやっぱり作り直そう。
そう決めた。今決めた。そして閃いた。
「オイっ!なんとか言ったらどうなんだよぉ!」
「消え・・・クズが」
「聞こえないなぁ!なんだってぇ!」
「消え失せろこの世界のクズ共が!」
言うやいなや男共は拳を振り上げ・・・。
止まる。
まるで時間が止まったように拳を振り上げて止まっている。
時間を止めた訳ではない。
頭の中が真っ白になって何も考えられず、何をしようとしたのか分からなくなって動きを止めたのだ。
「いい事を教えてやる!俺は神様だ!」
まず、目の前の男を殴った。
俺をばか呼ばわりした男だ。
「ガっ!」
勢いよく吹っ飛んでいく。
ちなみに加減はしている。
でなければ相手は即死どころか体がちぎれてしまうから。
「体が動かないだろ?当然だ、神に対しての攻撃意識そのものを持つ事を禁止してる!」
次は右の男。俺を馬鹿呼ばわりしたヤツだ。
アゴめがけて殴り飛ばす、歯が何本か落ちた気がするが気にしない。
「お前らみたいなクズでも、この場では殺さないでおいてやるッ!」
あとの二人は回し蹴りでまとめて蹴り飛ばす。
勢い余ってコケた。
くるんッと1回転半してコケる。
超ダセェェェェェェェェェェ!
くっ!仕方ないじゃないか回し蹴り初めてやっだったんだし!
格好悪くも、しりもちつきながら「う、うせろ!」と声を上げる。
最初に通せんぼしたやつ含め5人の男どもは一目散に逃げ去っていく。
「あーくそっ!最後の蹴りでコケるとかダサすぎる!ぬあーーーーーー!」
行き場のない自分のダサさを叫んで忘れる事にしてフェーナに近寄る。
「生きてるか?」
「・・・ぃ・・・ヵ」
のどを潰されうまく声が出せない。
擦れるような小さな声でまったく聞き取れない。
服は破かれほぼ裸の状態で地面には血の跡・・・。
処女だったようだ。
「声は出さなくていい。俺は神だ。言いたい事は分かる」
(私、神様に何か悪いことをしました?どうしてこんな目に遭うんですか?天罰ですか?私は今まで何もいけない事はしてこなかったのに!!)
目の端から涙をあふれさせながらフェーナはそう答えた。
理解が早い。
神と言うことと、言いたい事が分かるという事をすぐに理解したようだ。
すでに痛覚事態がマヒしているから冷静になれたのかもしれない。
いや、悪夢か幻覚か何かを見てるつもりなのかもしれない。
が、
この「私神様に何か悪いことをしました?」聞いた時。
心臓を何かが締め付け痛んだ。
「これは、天罰でもなんでもない。ただ不運だっただけだ」
(不運・・・?それだけ?それだけの事でこんな酷い目に・・・)
「そうだ。奴らは、お前が目が見えない事を知り犯行に及んだ。知られなかったなら、今日外に出なければ何も起きなかった」
そう、あの男ども・・・。
あのクズ共は、目が見えない事を利用した。
目が見えていたら捕まる前に、逃げて声を上げて助けを呼ぶ事も出来ただろう。
フェーナは繰り返し歩き記憶した道を一人で行き来できるようになっていた。すれ違う人達の位置は音で聞き分た。が、ずーっと動かず音を発しない物は感知できなかった。お使いの道の途中で待ち構え、近づいた所を捕まえ口を塞ぎ喉を潰す。後は、フェーナが知らない人気のない場所で好き放題。もし逃げられても顔を覚えられる事もないし、知らない場所では目の見えないフェーナにとってどう逃げていいのかすら分からない。
それが、あのクズ共の狙いだった。
「やつらが憎いだろ?」
(はい)
「こんな世界滅べばいいと思った事もあるだろ?」
(そういう事を考えた事も確かにあります・・・)
そう、これがあのときこの神が閃いたシナリオだ。
フェーナに世界を滅ぼさせる。
「不運なお前に、世界とあのクズ共を滅ぼし復讐する機会を与えてやる」
(・・・え?)
むむむ、ここまで書いたのにあらすじの内容すら追い抜けないとは・・・。色々考え直す必要があるかもしれない。