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掌編小説集6 (251話~300話)

出はれ

作者: 蹴沢缶九郎

「小僧、待てー!!」


「嫌だー!! 助けてくれー!!」


山中を小僧は山姥から逃げていた。




その日、小僧は山に栗拾いに来ていた。時が経つのも忘れ、栗拾いに夢中になり、気がつくと日は沈み、辺りは暗くなっている。

さてどうしたものかと途方に暮れていたところへ、声を掛けてきた一人の老婆。その老婆が山姥だったという次第。




「待て小僧!! 待たんかー!!」


「助けてー!!」


小僧を食おうと追いかける山姥、食われてはたまらんと必死に逃げる小僧。

和尚から渡されていた三枚のお札のうちの一枚は、山姥のあばら家から逃げ出す為に使っていた。小僧は懐から二枚目のお札を取り出すと、天へ掲げ叫んだ。


「山姥を容易く打ち倒す豪傑の侍よ、出はれー!!」


するとお札は見る間に侍へと姿を変えた。札から変化した侍は、腰に携えた刀を抜き、迫り来る山姥の首を一瞬のうちに斬り落としてみせた。


ゴロンと地面に転がる山姥の頭部。


「あ…あぐ…」


何が起きたか把握出来ない山姥は、頭のない自分の身体を認めると、そこで初めて自分が斬られた事を認識し、そのまま息絶えた…。


「いやあ、危ないところだった…。助かりました、ありがとうお侍さん」


小僧は侍にお礼を言い、山姥には使う事のなかった三枚目のお札を取り出し叫ぶ。


「僕を叱らない優しい和尚よ、出はれー!!」


こうして、三枚目のお札は優しい和尚となり、調子に乗った小僧は、


「さあ皆さん、お寺に住み着いた悪い和尚を追い出しに行きましょう」


と、二人を連れ立って寺への帰路に着いた。しかしこの時、本物の和尚が四枚目以降のお札を隠し持っているのを、小僧はまだ知らない…。

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