6.雇用
家の中はおそらく入る前は古びていただろうが魔術によって真新しくなっている。
ぱぱっとエウィルダが靴のまま入る。
ふと、その足元に何かが当たるとなぜかタツヤが履いていた靴がそこにおいてあった。
「タツヤさん?靴はどうして脱がれるんですか?」
「え?や、家の中に入ったわけですし」
靴下の状態で床にたっていた。
「えーと、別に靴は脱がれなくても、確かに床はとても綺麗ですし気持ちはわかりますが」
「・・・あ、そうか、このままでもいいんですね」
慌ててタツヤは脱いだ靴をはいた。
エウィルダはきょとんとした顔をしたがくすっと笑った。
「ふふ、面白い人ですね」
なんとなく気負っていた部分が抜けて接しやすく感じた。
「とりあえず、今日以降からどうしましょうってところですね」
ふと、そういうやタツヤがくるりとエウィルダに向き直る。
「?どうしました?」
「ひとつすみません。改めてこんなことを言うのもなんですけども・・・・是非、私を雇ってはもらえないでしょうか?」
「え?」
いきなりのことに戸惑う。
「私自身いきなりというのはわかっているのですが、どうにもここにきてまだ日が浅いというのもありますし、多分、というかこの子こそ、私の探していた子かもしれないんです。お願いします。私の、夢のためにも」
そういいながら深々と頭を下げた。
「え、いえ、あ、その・・・・」
こうまで言われて戸惑うが、しかし、今後のことも考えてみて、この人が一緒であるのは確かに心強いのはある。
何よりも、そもそもここを指定してきた公爵家のこと。
もしかしたら噂にきく撒き餌のためにこうしてよこされた可能性が濃厚であるとエウィルダは脳裏にはっきりと思い描いた。
そうなれば、彼のような護衛は必須である。
それに、ここに来る途中、執事としてつけられた男はさきのトカゲに食われていないこともあるし、そもそもあの男は走る馬車の中、自分に暴行を働こうとした執事としてもいや、従僕として雇われていたとしても人として嫌な人間であったことには違いない。
それに比べたら、彼は最良かもしれない。
どのみち、こんなところにエウィルダは15になる少女であり、かつ抱えている赤子は生後三ヶ月ほどの赤子なのである。
今現在であるならば、必要だ。
そう判断したエウィルダは反対に頭を下げる。
「その、こちらこそ、よろしくお願いします」
「ありがとうございます。では、ほんと、下働きでもなんでもしますし、一緒にその子をしっかり育てていきましょう」
にこやかないタツヤはいった。
晴れっバレとした笑顔に思わず頬をそめるがエウィルダもまけじと笑顔で
「こちらこそ」
と言い返した。
そうして、二人はそろって己の自己紹介と今後についてを話し合った。
ちなみに、あがってきた現在はレイはまだ眠っていた。