4.廃屋と修復
「えーと、ここでいいんですよね?」
目的の場所へと到着して改めてタツヤが尋ねる。
「こ、ここが?!」
だが、それ以上にエウィルダは驚愕の表情を浮かべていた。
着いた場所には一件の家があった。
二階建てでその周りを頑丈な鉄の柵で囲われた、大きな庭のついた家だった。
だが、長年放置されていたのか柵は錆び付き、その門扉は半ば斜めになっていて崩れかけていた。
庭も雑草どころか身の丈以上の大きさの草が生え、鬱蒼としてる。
一応家まで続く道らしきところはあり、そこは石造りで草はあまりないもののところどころに草が生えていて石があまり見えないほどであった。
家もパッと見ただけでも窓ガラスが割れていたり、蔦が壁のいたるところにびっしりと生えていた。
十人中八九人がこの家を見たらこう答えるかもしれない。
お化け屋敷か
廃屋か
「そ、そんな・・・・こんなところに住めと言われるのですか」
「ここを指定したのって、もしかして」
「ええ、お察しの通りコウェルダ家からです。もう、隠すのもあれですし簡単にお話しますがこの子は忌子として家を放逐されたも同然なのです。ああ、これからどうしましょう」
乳飲み子を抱えて呆然とする。
「確かにそうでしょうね・・・・んー、でもようは住めるようにしたらいいんですよね」
「まぁ、そうですが・・・・ですが、この有様ではとても」
そういって呆然としていたがタツヤはやおら荷物を下ろして朽ちかけている門扉に近づきそれに触れた。
「ふむ、形が残っていればなんとかできるか」
そう言って何かを念じるようにして目を閉じうつむく。
すると、触れたところを中心に門扉がみるみるうちに綺麗になっていく。
錆や崩れかけていたところもどんどん治っていく。
そして、それは家の方にまで伝わり端からどんどんと綺麗になり、割れた部分も逆再生していくかのように治っていく。
「ええっ?!」
これにはエウィルダは驚きを通り越してぽかんとなってしまった。
それは修復の魔法。
聖霊師が使える魔法の一つだが、人か物かに大きく分かれる。
だが彼にはそれは意味をなさないみたい。
目を点にして見つめる中あっという間に家と柵は綺麗になった。
柵はピカピカになり、家も新築同然の様子となった。
庭はさすがに修復とは違い草は生い茂ったままだがそれでも家と塀は綺麗になり住めるほどになっているだろう。




