わたしは此処にいる
"蜘蛛宇宙人" は、俯く
――笑いを押し留める。
そして――空咳。
手にする…
――スコップ
――ライト
――タブレット。
歩き出した。
"声" が追いかけてくる……
――"声" は
――面と向かって
――言わないのだ。
"ω":
「1!」
"ω":
「1!!」
"ω":
「1!!!」
"ω":
「1!!」
"ω":
「1!」
"ω":
「1!!」
"ω":
「1!!!」
"ω":
「1!!」
"ω":
「1!」
"ω":
「1!!」
"ω":
「1!!!」
"ω":
「1!!」
"ω" の発する事はすべて、
数字であり――数字ではない内容。
耳で聞けば、全て異なる物――
文字に起こせば、差異を見いだせる物。
そして
――"蜘蛛宇宙人" にとって
全てが同じ物。
――――――――――――――――――――――――
差は――
「今日の晩御飯なんだろう?」
と
「今日の朝御飯はトーストだったんだけど、
ホントはご飯が良かったんだよね………」
――その程度の差だ。
――――――――――――――――――――――――
"蜘蛛宇宙人" は
――トンネルを抜けても
立ち止まらなかった。
歩き出す。
13歩で――分かれ道。
そのまま
――まっすぐ……
二歩進むと――
"声" が始まる。
"蜘蛛宇宙人" は無視して歩き続けた。
そして――
"声" が始まってから――
<371歩>
――進んだ。
――――――――――――――――――――――――
"蜘蛛宇宙人" が歩いている間に、様々な事が語られた。
「"誰か" が "誰か" を好き」で…――
「"誰か" が "誰か" を嫌っている」。
それは――多くの<語り>の主成分。
それは……――荒野にただ漂う<塵>の様な物。
塵が、やって来ては――………去っていく。
壁にぶつかり――
隅に溜まり、古くなった物はチリトリで掃き捨てられる……
――掃除機を使うまでもないのだ。
そして
――また…
満ちる。
人は塵と共にいる。
そして塵がなくとも生きられるが――塵なしで生きないのだ。
<それ>は、常に空間に立っている……
――しかし
高潔な者は地平を見る。
塵を透かせて………――視界の中で最も遠い場所に起き上がりかけた陽の始まりを見る。
陽の外円と地平線が重複する様を見つめるのだ。
黒であったものに紫や青が挿し込む夜明けの空の膨大さを見たり
――カラーの変化に感嘆したり
陽の高まりと比例して増加するだろう晴朗の兆しを含んだ朝の空気を嗅いで、湿気った夜気の逃亡を祝したり――
など、しないのだ。
始まりの瞬間――
輝きだす前――
その<瞬間>の中に含まれた
<漸次的プロセス>を
――ただ
見つめるのだ。
その後、どれだけ強く日差しが見つめ返そうとも……
――怯む事なく
高邁なる者は過程を見つめ続けるのだ。
そして――動き出す。
――――――――――――――――――――――――
その場所は、<地点>に該当する場所ではなかった。
"蜘蛛宇宙人" は立ち止まらなかった。
通過点にて、"声" がする…
――"蜘蛛宇宙人" の背後から。
"蜘蛛宇宙人" は――
《またか……》
――と思った。
よって、そのまま、聞き流した。
しかし、歩いていると
《同じ事が繰り返されているのだろう………》
という予想が裏切られている事に、気がついた。
勿論、それは繰り返しだった
――それでも、"ω" の
――バリエーション豊かな……
――<テンプレ会話>
――ではなかった。
それは<呟き>の様に聞こえた
――しかし、その中に、言葉はなかった。
それは翻訳しても…――意味を持たない物。
トンネルを進む度に、"蜘蛛宇宙人" は知る。
"ω" は話していない訳ではない
――その "声" は
――より細かく
――より大きな
――"音"
――に隠されている。
"それ" は、途切れる事のない音。
"ω" の様に<考えない>物。
その音――
「シャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ……」
"蜘蛛宇宙人" は、二十一歩目で立ち止まった。
目の前で、雨が降っていた。
上から下ではない――横に。




